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友情
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深爪/それはまるで魔物のように
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いわずとしれた文豪・武者小路実篤の代表作にして、日本文学史にその名を残す不朽の名作。大正9年の作品ながら、いま読んでも充分に共感できる内容。とくに若い人は読むべし。確かに「友情」についても書かれてはいるものの、この物語の本当のテーマは「恋愛」。もっというと「失恋」。人を好きになる(なってしまう)とはどういうことか。結ばれる恋愛と結ばれない恋愛はどこが違うのか。恋愛の本質が露わにされ、それはまるで魔物のように描かれていて、結構痛々しい読後感です。おそらくは著者自身の、辛く悲しい体験が描かれているのであろうことは、想像に難くありません。若いころによほど悲恋に苦しんだのでしょう。大いなる共感を禁じ得…
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日はまた昇る
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深爪/ロストジェネレーション、ロストラブ
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この小説と、スコット・フィッツジェラルドの「グレート・ギャツビー」は、学生時代から折にふれて何度か読み返しています。書店に新訳で並んでいるのを見て、また何年かぶりに読んでみました。読み易いですね。古くさい表現にいちいちひっかかったりすることもないし。巻末には訳者による丁寧な訳注と解説が付され、この小説の誕生した経緯が結構詳しく紹介されています。当時敬愛していたガートルード・スタインという女流作家に「あなたたちはロスト・ジェネレーションね」みたいなことを言われたのに反発したことが動機で編まれたらしいこの長編小説は、いわゆる「モデル小説」で、個性的な登場人物には全て身近なモデルがいて(主人公のジェ…
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阪神タイガース
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深爪/旅路の果て、9月
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阪神タイガースのリーグ優勝にタイミングを合わせて刊行された、元監督“ムッシュ”吉田さんの回顧録。タイトルは便乗商品っぽいんですけど、内容はそんなことなくて、彼が唯一在籍したチーム、阪神タイガースを通して創生期からの日本のプロ野球が俯瞰できる一代記です。こういう形でタイガース、あるいは日本のプロ野球までを総括できる人は、いま、この人をおいて他になしでしょう。私は江夏・田淵の黄金バッテリー全盛期のころからのファンなので、吉田さんについては現役時代を知らず、(計3期の)監督としてのイメージが強いんですけど、この人は言わずとしれた球史に残る名選手(背番号23は永久欠番(!))です。だから私が最も楽しめ…
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カンバセイション・ピース
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深爪/猫好きになろう
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保坂さんの小説は、他の小説とはちょっと違っていて、この人はいわゆる小説そのものをあまり信用していないのでは、と思わせるところがあって、でもだから小説を壊したいとかそういうこととはまた違っていて、たまたま小説という形を借りた別の何かというか、もはや小説ですらないっていうか、何というか、私にとっては「上手い言い方が見つからないもの」としてそこにあります。本書では、主人公の日常が主人公のぐるぐる巡って移り行く思考とその間に周囲の人々とランダムに交わされる会話によって描き出され、それは特にストーリーと呼べるものでもなくて、だから読む方としても次にどうなるんだろうとか最後はどうなるんだろうとか、あるいは…
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サリンジャー戦記
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深爪/深い「読み」の記録
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村上さんとしては渾身の「訳者解説」が、『<a href="/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi/?aid=&bibid=02273467&volno=0000" target="_blank">キャッチャー・イン・ザ・ライ』の巻末に掲載できなかったのがよほど残念だったのでしょう。それもあってか、その幻の解説を軸にして、早くも関連本が出ました。「<a href="/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi/?aid=&bibid=01939932&volno=0000" target="_blank">翻訳夜話」の体裁を借りてはいますが、優秀な「キャッチャー…
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朗読者
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深爪/なだらかな坂を下る
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実に巧妙な小説でした。決してネガティブな意味じゃなくてです。起伏の少ない静かなストーリーですが、しかし虚を衝くような展開もあり、なるほどと思わせる伏線と種明かしもあり、それでも全く無駄な部分がなく、長さも程良く…素材もさることながらその「練り方」にかなりの熟練を感じます。わりと大ベストセラーだったので、もっとドラマティックでキャッチーな話なのかと勝手に思ってました。こういう比較的地味な内容で売れてたなんて、なかなかどうして、ですね。特に、本書の三部構成のあり方は白眉です。若々しく躍動的な第1部、停滞し、霧のヴェールに包まれたような第2部、そして静かに海の底に沈み込んでいくような第3部。第2部か…
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いい人になる方法
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深爪/ドタバタやるしかないんです
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ニック・ホーンビー、待望の小説第3作。相変わらずハードカバーじゃなくて文庫で出てます。ま、その方がありがたいんですけど。あまたの書評によれば、どうやら女性を主人公にしている点で作風に変化が見られるような評判なので、ちょっと心配しながら読んだんですが、読了してみると、なんだ相変わらずのホーンビー節じゃん、って感じでした。確かにシリアスな話です。ストーリーは、離婚の危機を迎えた夫婦がどうにか持ちこたえようとしている最中、夫がひょんなことから善行に目覚め人が変わり、振り回されてドタバタしているうちに家庭崩壊寸前…ってところで、読んでいてぱあっと明るい気持ちになることはあまりないし、笑える部分もいつも…
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ポートレイト・イン・ジャズ
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深爪/ジャズを聴きましょう
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最近、ジャズ界に天才少年が出現して話題になっています。松永貴志くんっていう17歳の高校生ピアニストです。天才って呼びたくなるほどのたいした実力です。で、この間テレビで彼の自宅での練習風景が紹介されてたんですが、彼のピアノの上にはコルトレーンのLPが掲げてありました。ふーん。村上春樹の『<a href="/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi/?aid=&bibid=02209901&volno=0000" target="_blank">海辺のカフカ』で、主人公の17歳のカフカくんが聴いていたたくさんの音楽の中に、コルトレーンの「マイ・フェイバリット・シングス」もあって、1…
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疲れすぎて眠れぬ夜のために
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深爪/時代の人
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うーむ。なるほどねえ。ウチダ先生の本、初めて読みました。で、ホームページも見てみました。いやー、いろいろとたくさん書き込んであります。仕事量の多い人なんですねえ。まあとにかく語り口が自然体というかフレンドリーというかとても入っていきやすく、そこがまずウェルカム・サプライズですが、言ってることが結構すごい。フランス現代思想を確固たるベースに、合気道やら小津安二郎やらをミクスチャーした、骨太な内容です。核心的なロジックがぎっしり詰め込まれていて、それが次から次へとよどみなく流れ、だんだん整理しきれなくなってきます。毎日少しずつ噛んで読むのが良いでしょう。で、HPによると、読者は20代の女性が約半数…
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わたしたちが孤児だったころ
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深爪/世界に立ち向かえ
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かつて、「<a href="/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi/?aid=&bibid=02014254&volno=0000" target="_blank">日の名残り」には多大なる感銘を受けました。あの一作で、著者はわたしの中の最も信頼のおける現代作家のうちの一人となりました。本作も刊行後すぐにも読むつもりだったのがかなり遅延してしまいましたが、今回、一気に読み切り、なんだか「やり遂げた」って感じです。っていうのもへんですが、この人、やっぱり違います。読み終わってしばらくしても、何ともいいようのないぼうっとした感じがずっと続いています。村上春樹著「<a href=…
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愛のゆくえ
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深爪/懐古の意味
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「愛のゆくえ」というメロドラマのようなタイトルにはちょっと首をかしげたくなる、ある「堕胎」を題材にした物語。世界にひとつしかない特殊な「図書館」に勤める(ていうか引きこもっている)主人公が、そこで一人の美しい女性と出会い、ほどなく女性は妊娠し、いっしょに堕胎のためメキシコに行き、帰ってきたら図書館は…という、ロード・ムービーっぽい展開も感じさせるストーリーは、シンプルで、どことなくファンタジックです。ちょっと「歴史上の人物」って感じになってきたリチャード・ブローティガンが、いまのところ唯一、文庫で読める作品だそうです。 つかみどころのないふわふわした軽い文体で、文明社会に対する乾いたニヒリズム…
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バルザックと小さな中国のお針子
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深爪/青春の光と影
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舞台は文化大革命下の中国。「再教育」という名目の知識人狩りの憂き目に遭い、山奥の村で過酷な労働を強いられる主人公とその友人の、みずみずしくも切ない青春物語。著者はこの歴史的な悲劇というか損失というか、そういう「運命にもてあそばれた人々」の姿を描きたかったというよりは、絶望的な状況においても、逞しく迸る「青春」こそを活写したかったかと思えます。書物が禁じられ、映画(っていっても北朝鮮のプロパガンダもの)さえ遙か遠い隣の街まで許可を得て見に行かねばならない、そんな抑圧された生活の中にさえ、それはきっと絶対的に存在するのだと。ここまで悲惨な状況ではないにしろ、若いときって何かと障害にぶち当たります。…
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学力は家庭で伸びる
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深爪/とりあえずテレビは
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著者は「学力の根本は生命力」と主張する小学校の先生。本当の意味の学力をつけるには結局、規則正しく、けじめのある生活をするってことなんでしょうか。 「家族」、「家庭」とは、ということが問われているのは明らかです。いまの時代、父も母も働き、子も塾や習い事で、家族それぞれが忙しいっていうのが子どものいる家庭の標準モデルなのでしょう。当然コミュニケーションは充足せず、それぞれがすれ違い別々の方向へと向かい…というスパイラルを修正するために、いかに親が子どものために時間を割くか、なおかつ余計な干渉をしないでいられるか、ということになるのでしょう。結構難しいことですよね。著者が不本意ながら呈示しているよう…
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キャッチャー・イン・ザ・ライ
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深爪/回転木馬に乗る君を、ただ見ていたかった
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初訳は1964年だったのですか。実は私の生年です。で、これまで読む機会がなかったなんて。ていうか読まなかったなんて! ここに書評を寄せている方々の中では、どうやら稀有な例のようです。やはり不朽の名作なんですねえ。恥ずかしさを通り越してすがすがしく感心する次第です。ですから村上さんの訳について、既訳と比較してうんぬんという感想も書けないですが、単に新しい読者の獲得という意味のみにおいても、意義ある試みと感じました。この作品の言わんとするところが、現代においても充分に通用しうることが実証された、そんな類の堅実な仕事ではないでしょうか。私もですから40になろうかって歳の頃なんですけど、でもたとえば主…
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宮殿泥棒
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深爪/人生劇場
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なんとも渋い一冊です。短編でも長編でもない「中編」ならではの魅力、というものがあるとしたら、そのすべてがここにあるのでは、といいたい。4編それぞれが絶妙の味わい深さです。主人公がみな、いわゆる「グッド・グッド・ボーイ」っていうと聞こえは悪くないですが、要は決して頂点を極めることのない、何かひとつ突き抜けたところのない、圧倒的な魅力に欠けている「そこそこ」の男たちなのです。そして通底するテーマは、「人格は宿命である」。もう感情移入せずにはいられません。訳者のあとがきで気づいたんですが、著者の「慈悲の天使、怒りの天使」という短編が村上春樹編・訳の「<a href="/cgi-bin/srch/sr…
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停電の夜に
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深爪/ノスタルジック&マイルド
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どうしても、「どのあたりが『ピュリツァー賞』なんだろう?」って探りながら読んでしまいます。そしてこの本は、できればそういう先入観なしに読みたかったかな、でしょうか。佳作には違いないと思いますけど。読んでいて自然とノラ・ジョーンズの曲を思い浮かべました。だって共通点が多いのです。同じインド系。高い(高すぎる?)評価=かたや新人ながらピュリツァー賞、かたや新人にしてグラミー賞で8冠! そしてふたりともグッドルッキング(きっと高ポイント)。その作風にしても、どことなくノスタルジック。冬の陽だまりのような癒し系。 手法としては、特に目新しいものを感じません。いわゆる「ニューヨーカー」誌に掲載されるよう…
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からくり民主主義
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深爪/「なんじゃそら」という癒し
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村上春樹さんが解説を書いてるんだから、と読み始めて、なるほど評判どおりの読後感を得ました。おもしろく読めるのは保証できるし、考えさせられるテーマばかりであることも間違いないです。それに加えて、癒されます。著者は綿密な取材を行い、関連文献などを広範に当たり、いわゆる「しっかりした」仕事をしています。そして村上さんも書いているように「正当な弱りかた」をしたうえで文章化しています。感心し、納得しながら読み進められます。総じて結論のようなものがないからといって、だれも簡単に非難できる立場にありません。私たちの日常というのは、そんなことどっちでもいいんだけど立場上仕方なく片方についたり、「こうするべきで…
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アバウト・ア・ボーイ
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深爪/成長しよう
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前作「<a href="/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi/?aid=&bibid=01687299&volno=0000" target="_blank">ハイ・フィディリティ」でブレイクしたニック・ホーンビー。前作よりも格段に深みのある、傑作だと思います。主人公は二人。三十六歳の独身男性(キャラクター的には前作にも重なるモラトリアムな中年)と十二歳の少年。この二人がひょんなきっかけから知り合い、友だちになり、さまざまな騒動を通過してそれぞれが互いに成長していくというストーリーです。シングル・ペアレントとその子どもたち、低レベルの鬱状態にある少年の母親など、まさしく現…
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悪童日記
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深爪/剥き出し
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戦時下の、おそらくハンガリーの田舎町であろう場所を舞台に繰り広げられる、双子の少年の成長記。ずっしりとパワフルな、しかし軽快でユーモラスな物語。世界20カ国以上で翻訳され、かなりの反響を呼んだそうです。双子の「ぼくら」(年齢不詳)が、小さな町の<魔女>と呼ばれるおばあちゃんのもとへ疎開し、そこでの体験を秘密のノートブックに書きつけた—(原題は「大きなノートブック」の意らしい)という体裁のこの作品に記録されていることといったら! ひとことでいえば、戦争によって剥き出しにされた人間の生(性)と死ということだと思うのですが、そのあまりのむごたらしさ、哀しさに圧倒されます。この本に戦争そのものが描かれ…
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ナショナリズムの克服
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深爪/特別なんだ(笑)
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70年代の経済的成功以来、日本人になんとなく染み付いてしまっている「自分の国は特別なんだ」という思い。それはどういうわけだか、私のなかにも漠然としてあります。終盤、西欧近代の植民地主義・帝国主義が生んだ「民族」という概念の解体に至るに及んで、タイトルの意味、なぜ「克服」なのかが見えてきます。克服すべきは、多数者の側というか、全ての者なのです。この重厚な内容を一見カジュアルに、かくも読みやすくまとめてあるなんて。全部を理解できているとは思いませんが、とにかく読めてしまう。読後、整理されて残るものがある。なんと巧みな構成、なかなかの仕事だと思います。そんなに笑ってられない内容なんですけど、しかしま…
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コルシア書店の仲間たち
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深爪/癒しの原型
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コルシア・デイ・セルヴィ書店。ミラノの都心で修道院の軒を借りてひっそりとかまえられたこの小さな書店は、第二次大戦後に、共同体を理想とするカトリック左派の若者たちのグループが、その活動の拠り所としていました。この書店にかかわった著者が、若き日々を回想し綴ったエッセイです。珠玉の短篇小説集といってもいい、端正な美しさを湛えた散文集です。読点が(意識的に?)多く打たれた文章は、それゆえに堅さがほぐれ、懐の深さを感じさせます。さまざまな職業や階級の人々との交流そして別れが、淡々と、しかし慈愛に満ちた言葉で語られます。簡素な暮し。理想。その終焉。あるいは夫との死別。繰り返された出会いと別れのなかで、刻み…
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マーティン・ドレスラーの夢
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深爪/豪華絢爛、自分探しの旅
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書き出しがいい。これほどのめくるめく物語が展開されるんですから、普通もっともったいぶったプロローグらしきがあって然りと思うんですが、超シンプルです。逆に著者の秘めた自信を感じます。あのスティーヴン・ミルハウザーの、しかも長篇だからとしっかり気構えて読みにかかるや、意外にすいっと物語にはいり込んでいます。19世紀末のニューヨークを舞台に、次々に夢を実現させていく主人公。人物像としてはさして魅力的ともいいがたいこの若者が、しかし抜け目なくしなやかに、友好的な力も引き寄せて成功を続けるさまは、結構オーセンティックな物語としての痛快さもあり惹きつけられてしまいます。そして驚異的なホテル建設が始まる終盤…
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地域再生の経済学
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深爪/アメリカのようであってはいけない
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工業社会から情報・知識社会へと転換する「エポック」にうまく対応できぬまま、国家全体がじりじりと後退していくかのようなこの時代、地方分権の推進についての議論は静かに盛り上がってきています。なぜ地方分権なのでしょうか。財政学者である著者は、われわれの未来を、地域社会が人間の生活の「場」として再生することにこそ見出せるとし、その必要性を説き明かしていきます。グローバリゼーションによって脅かされる地域社会の、ひいては国家の存亡を救う道とは? それは市場主義に基づかないヨーロッパ型(「サステイナブル・シティ=持続可能な都市」)のシナリオであるべきだと繰り返し提唱されます。はっきりいってアメリカのようであ…
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お母さんは勉強を教えないで
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深爪/確固たる信念のすがすがしさ
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塾の先生による、教育についての実証的な提言です。とにかく熱意のかたまりみたいな本で、学習法にとどまらず、しつけ、子育て論、学校教育論へと発展していきます。あえて、「お母さん」は勉強を教えないでというタイトル。教育熱心な母親に反感を買いそうなことなど承知の上で、「言うべきことはきっちりと伝えなければ」という著者の使命感のようなものを感じますね。高度な計算問題が早く正確にできても(小2の女の子が5桁の足し算引き算の筆算を難なくこなし)、それが何を意味しているのかが全然分かっていない(「100より2小さい数はいくつ?」「10時から20分たったら何時何分?」に答えられない)例などから、「やり方」ばっか…
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ボディ・アーティスト
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深爪/ひょっとすると何が起こったのかこったのかさえ分かっていないのかもしれない
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ドン・デリーロ。現代アメリカ文学の巨人、というより世界文学のトップを走りつづける極めて重要な人物の一人。そういう人だとはよく知らぬまま、表紙カバーがかっこよかったので購入してしまいました。巻末の近影では、いかにも「孤高のカリスマ」といった雰囲気たっぷりです。読み始めて間もなく、じりじりと後悔しはじめました。どうもうまく入り込めない、というかつまりは難解な小説です。詩的でクールな文体ですが、常に霧がかかっているような違和感につきまとわれます。でも集中して最後まで読みました。違和感が引き起こすゆるい緊張からはついに解放されず、身を削るようにして読み終えたときには、全身で読んだ、って気になりました。…
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財政学から見た日本経済
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深爪/個人主義、自己責任の時代に適応すべし
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景気は未だ回復に遠く、構造改革は遅々として進まず、さらには国債の発行残高は増え続け…とこの国の今が憂うべき苦境にあることはもう火を見るよりも明らかなんですが、国家財政っていったいどのくらい危機的なのでしょうか? そして危機を回避するにはどうしたらいいのでしょう? 「財政」になじみのない庶民の不安に応えるべく、著者は財政の専門知識をベースに、熱い持論を展開しています。わりとわかりやすい著述で、なるほどなるほどと読み進められます。特にインフレになった場合、どう生活防衛するかというあたりの論議は興味深く理解できました。しかしつぎつぎと悲惨な状況が報告され、なんだか改めて呆れながら情けなくなってきます…
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バースデイ・ストーリーズ
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深爪/誕生日の出てくる話なんですけど
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村上春樹編・訳、さらに作をも、という短篇小説のアンソロジーです。タイトルのとおり誕生日をめぐるストーリーを集めてきて訳して、最後に自身の書き下ろしで締めくくっています。アメリカ短篇小説ファン向け、もしくは村上ファン向けの色合いの濃い作品集だと思います。どちらかというと日本ではあまりなじみのない(と思うんですけど)作家がほとんどで、作風もまちまちで、出来もまちまちで、といった感じで、最後に村上氏の新作が置かれていてまあ納得といったところでしょうか。誕生日の出てくる話なんですけど、あまりハッピーじゃない話が大半で、読んでいてつらくなってくる話もあります。村上氏自身の新作は二十歳の誕生日を迎える女の…
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インターネット的
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深爪/誰もが「正直」でいられるために
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「IT不況」ともいわれ、インターネットによって劇的な経済効果があったとはとてもいえない現状なんですが、それはそれとして、本書は「インターネット的」というタイトルからしても、著者の単なるインターネット論でない、一歩踏み込んだ深みのある考証を期待できるというものです。インターネットによって、社会の仕組みがどのように変わっていくのでしょう? 私は著者の期待するところは、自然淘汰を生み出すための秩序、というかまあその辺りにあるのではと感じました。著者は一例として、メディアの取材方法の強引さについて控えめに言及しています。日本経済の発展はこんな「有能な」人々の「並外れた」努力によって支えられてきたのでし…
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燃える家
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深爪/嵐の予感
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80年代アメリカを代表する短編作家のひとりであろう、アン・ビーティの出世作といえる初期の傑作短編集が文庫化されました。1979年から82年にかけて、『ニューヨーカー』誌に掲載された短編を集めたものです。この人の場合、作家というより断然「アーティスト」と呼ぶべきです。巧い、というレベルでなく「巧すぎ」です。それをもてあましているかのように思えなくもないです。どことなくユーミンの楽曲を彷彿とさせます。なかなか話の本質がつかめず、主人公の置かれている状況がようやく見えてきたかと思うと、なんだもう終わりか、といった展開がほとんどです。ドラマティックさに乏しく、行間を読み解かねばならず、なかなかすらすら…
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父親力
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深爪/いつの時代にも普遍的なもの
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筆者はNHK−BSで放映されていた「世界の子育て」という番組にコメンテーターとしてレギュラー的に出演していました。著者の語る子育て観には納得したり感心したりさせられていたので、幼な子を持つ父親としては迷わず本書を購入しました。どうして、時に子どもがまっすぐに育たないのでしょう? 不登校になったり、ひきこもったり、あるいはとんでもない事件を起こしたり…現代において、何の不安も抱かずに日々の子育てをしている親など、いるはずもありません。自分自身の将来像もよくみえないのに、ちゃんとした子育てなんてできるんでしょうか? 漠然とした不安は、この社会システムの閉塞感とともにあるようにも思えます。著者の指摘…
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