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解錠師
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katu/ミステリーだと思って敬遠している人がいるとしたらもったいない
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この本は当たりだ。個人的には今年のベスト10入りは間違いないな。ベスト5と言ってもいいかもしれない。見かけはミステリーだが、実際には少年の成長物語であり、恋愛物語でもある。現在刑務所にいる主人公が過去を振り返る体裁を取っている。それ自体はありふれているが、2つの地点から過去を振り返っているのが珍しい。まずはAという近い過去の話から始めて、次にBというAから更に10年くらい前の過去の話がそれに続き、AとBが交互に語られ、段々お互いが近接してくるにしたがって話が盛り上がってくる。なかなか凝った構成だ。主人公のマイクは8歳の時のある事件をきっかけに言葉を失った。その事件が何だったのかはなかなか明らか…
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幻影の書
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katu/物語を紡ぐ力
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飛行機事故で家族を失ったデイヴィッド・ジンマー。彼を失意の底から救ったのは一編の無声映画だった。その映画の監督であり、脚本家であり、主演であるヘクター・マンなる人物は謎の失踪を遂げ、既に死んだと思われていた。デイヴィッドはヘクターの足跡を追ううちに彼の数奇なる人生を知ることになる。そして、デイヴィッド自身がヘクターの運命に関わることになる。 とにかくヘクター・マンの人生があまりにも波乱に富んでいて実に読ませる。全ての物語は巧妙な入れ子構造になっており、デイヴィッドはヘクターの人生を生き、我々読者はヘクターのそしてデイヴィッドの人生を生きることになる。 ポール・オースターの物語を紡ぐ才能は本…
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赤めだか
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katu/文句なしに面白い。今年の出版界の収穫と言ってもいいだろう。
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目黒考二が帯にこう書いている。 「立川談春のエッセイというか自伝というか青春記というか、あのページが早く単行本にならないだろうか。あらゆる雑誌の中でいまいちばん面白い」 ずいぶん大袈裟だなと思うでしょ。ところがこれが大袈裟じゃないんだな。開口一番の「本当は競艇選手になりたかった」に続く一節を読んだだけで一気に引き込まれた。落語が上手いのは知っていたが、ここまで文才があるとは思わなかった。17歳で高校を中退して談志に弟子入りしてからの修行時代が実に色鮮やかに描かれている。先日の「談志特番」を見ていたのでネタが割れちゃってる話もあったが、あれを見ておいたおかげで随分と情景が頭に浮かぶ箇所もあっ…
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鼓笛隊の襲来
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katu/一皮剥けたかな
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なんか、一皮剥けたというか肩の力が抜けていて今回の短篇集はいいね。三崎亜記の良さは、デビュー作の『となり町戦争』で表現されていた「奇抜な設定」と「静謐さ」にあると思う。ところが、短篇集『バスジャック』や長編『失われた町』では、「奇抜な設定」と「静謐さ」ではなく「奇抜な設定」と「あざとさ」が目についてしまった。「あざとさ」を端的に表しているのがSFチックな造語だ。これが多用されればされるほど、私は物語に入り込めなくなっていた。 今回の短篇集では、SFチックな造語は減った。誰が読んでも分かりやすく、それでいて深みを増した文章になっている。得意の「奇抜な設定」も冴えている。表題作でもある「鼓笛隊の…
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ナイフ投げ師
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katu/ミルハウザーは癖になる
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出先で手持ちの本が読み終わりそうになってしまい、半ば衝動的に買った本。スティーヴン・ミルハウザーは初めてだったが、柴田元幸が何冊か訳しているのを知っているし、きっと外れないだろうと思った。それから、装丁が非常にお洒落なのも購入に至った理由だ。カバーの表面がザラッとしていて、中もちょっと藁半紙のような紙が使われている。そして、各短篇のタイトル部分のページは黒の塗りつぶしになっていて、タイトルが英語で白抜きになっている。読んでいて気付いたけど、短篇の最初が黒ページになっていると、本を横から見たときに、今読んでいる短篇があとどのくらいで終りなのかがよく分かるんだよな(まあ、分からないほうがいいという…
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仏果を得ず
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katu/一途な想い
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主人公の健(たける)は文楽の太夫だ。その健が師匠の銀大夫から三味線の兎一郎(といちろう)と組んでみろと言われるところから物語は始まる。文楽は、詞章を語る太夫、三味線、人形の三位一体で成り立っている。登場人物は他に、健の兄弟子である幸太夫、銀大夫の相三味線である亀治、健が文楽指導に行っている小学校のミラちゃん、そしてミラちゃんの母親の真智さん、など。 私はある程度文楽に関する知識があるのですんなり話に入って行けたが、そうでない人でも楽しめるようになっている。文楽に関するしきたりや、演目の解説などはさりげなく物語に組み込まれているのだ。そんな文楽のしきたりの中で私が一番好きなのがこれだ。 しっ…
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八つの小鍋
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katu/おばあさん奇譚集
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今までの私の「村田喜代子体験」は、朝日新聞の連載で読んだ『人が見たら蛙に化れ』しかない。古物に魅せられた3組の男女が幻のお宝を追って、九州の山里から萩、ロンドン、フィレンツェへとさすらいの旅に出る話なのだが、これが滅法面白かった。いつか別の作品も読んでみたいと思いつつ今日に至り、新聞広告で目にしたのがこの『八つの小鍋』だ。 「村田喜代子傑作短篇集」と銘打たれているとおり、様々な賞を受賞した短編がズラリと並んでいる。村田喜代子初心者にとっては、これ以上の本はないだろう。 内容は「奇譚」といった感じの話が多い。それと、やたらに「おばあさん」が出てくる。それも体が海老みたいに「つ」の字に曲がった…
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棋神
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katu/将棋界の至宝
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表紙に続いて冒頭は羽生だ。現在の羽生そして若かりし頃の羽生。様々な表情を見せている。特に印象深いのは、屏風を背にして一人で写っている一葉だ。相手は席を外しているみえ、写真の中には羽生しかいない。大きな窓の外には広い庭が広がっている。羽生は前傾姿勢になってこんこんと読みふけっている。問題が難しければ難しいほど、解くのが楽しいといった風情だ。羽生は全くカメラマンを意識していない。完全に盤上没我の境地に至っている。この写真を見ると、この部屋には羽生以外には誰もいないのではないかという錯覚に陥りそうになる(では誰が写真を撮ったのか?)。それくらいカメラマンの中野英伴は自らの気配を消し去っている。 佐…
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アイロンと朝の詩人
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katu/相変わらずの堀江節
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相変わらずの堀江節で、素直に面白いものもあるし、難解なものもある。その難解なものを我慢して読むのも醍醐味なのかもしれない。 結構自伝的なものも多く「高校時代の三年間を通して私はずっと国文科志望で、読書対象はほぼ平安期の古典文学に集中していた」なんてことは初耳だったし、大学受験の際に親戚の家に二週間ほど居候して、その時初めて早稲田の古書店街と接触した、なんて話はなかなかに興味深かった。 多分本当の書評ではなくて書評らしき文章なのだと思うが、そういった話も当然あって、『カフカ短篇集』、『日日雑記』(武田百合子)、『包む』(幸田文)なんかは読みたくなったね。 タイプライターや鉛筆削り用のナイフ…
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悪果
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katu/マル暴担当刑事の日常
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大阪今里署のマル暴担当刑事である堀内と相棒の伊達の日常が超リアルに描かれている。と言っても、マル暴担当刑事の日常なんて知らないから本当にリアルかどうかは知りようがないんだけど、描写が真に迫っているのは間違いない。 前半の山場は賭場のガサ入れだが、このガサ入れの段取りが微に入り細を穿って書かれていて臨場感たっぷりだ。小説というのは非日常を味わえる最も手軽な娯楽だ。小説の中でなら、空飛ぶヒーローになることもできるし、悲恋のヒロインになることもできる。それがこの本の場合はマル暴担当刑事になってヤクザと渡り合うことができるのだ。実生活ではマル暴担当刑事ともヤクザとも関わり合いを持ちたくないが、小説の…
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泥棒は深夜に徘徊する
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katu/とにかく洒落たミステリー
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ご存知泥棒探偵バーニイ・シリーズ。相変わらずの面白さだ。会話を中心としてとにかく色々な面で洒落てるんだよな。日本の小説にはなかなかこういうのがない。 いきなり話は逸れるが、これを読んでいる時にずいぶん久し振りにラフロイグを飲みたくなって飲んだ晩があった。すると翌日バーニイがバーでラフロイグを飲む場面に遭遇した。本を読んでいると時々こういう偶然があるから楽しくなる。 「最初の一口を舌にのせて私は思った。"そう、これこそラフロイグだ。まさしく。どんな味か忘れてたけど、これがそうだ。どこにいようと、ぼくにはわかる"。少し間を置いて二口目を口にふくむと、この味をどう感じていたか…
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死なないぞダイエット
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katu/とりあえず試してみよう
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毎年夏場はビールの摂取量が増えるので少しお腹が出る。でも今年は例年よりも出っ張り具合が大きかった。「お腹が張ってるだけだよな」と無理にごまかしていたが、空腹なのにお腹が出ていたらごまかしようがない。涼しくなってビールの摂取量が減り、腹筋でもすれば戻るだろうと思ったのだが、これがなかなか戻らない。何とかせなあかんなと思っていたが、ビリーはきつそうだし、岡田斗司夫の『いつまでもデブと思うなよ』で提唱されているレコーディング・ダイエットは、いちいち食事を記録するのも面倒だし、大体何が何カロリーあるのかなんて分からない。そんなときに朝日の朝刊の「ひと」の欄で北折一が紹介されているのを読んで、本書および…
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トロイメライ
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katu/『トロイメライ』は『バベル』を超えたか?
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2作目よりも更に完成度が高くなっている。島田虎之介恐るべし。3作目でも類い希なるストーリーテラー振りは健在だ。主人公は前作『東京命日』にも登場した調律師の戸田ナツ子。あらすじは、解説の村上知彦氏の文章を引用させて頂く。 「語られるのは「ヴァルファールト」と名づけられた一台のピアノの運命である。20世紀初頭のカメルーン、1965年のジャカルタ、1980年代前半のイラン・イラク国境。それらの場所から時空を越えて、登場人物たちは2002年、サッカー・ワールドカップに沸く日本の東京・浜松・中津江村へと召喚される。前2作に比べれば、ストーリーラインは明確だ。ドイツ人によって蹂躙された精霊の木で造られた…
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走ることについて語るときに僕の語ること
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katu/生きることについて語るときに村上春樹の語ること
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村上春樹が「走ること」についての本を出すらしいという話はずいぶん前から色々なところで目にしてきた。折に触れては、そういえば例の本なかなか出ないなと思っていた。それがこうして無事に一冊の本として結実したことは、いちファンとして嬉しい限りである。 しかも、前書きや後書きにも書かれているように、これは単なる「走ること」にまつわるエッセイではない。「走ることについて書くことは、僕という人間について(ある程度)正直に書くことでもあった」というように村上春樹の一種の個人史(メモワール)にもなっているのだ。 2005年8月のハワイ州カウアイ島滞在から始まり、見かけ上は、2005年の11月に行われるニュー…
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千年の祈り
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katu/新たなる才能
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著者のイーユン・リーは1972年、北京生まれ。そのリーが英語で書いて2005年にアメリカで出版されたのが本書である。本書は第一回フランク・オコナー国際短篇賞受賞他数々の賞に輝いている(ちなみに第二回のフランク・オコナー賞受賞者が村上春樹である)。 英語で小説を書くアジア系の作家の活躍はもはや一つの大きな潮流になりつつある。インドのジュンパ・ラヒリしかり、タイのラッタウット・ラープチャルーンサップしかり。きっとこれからも続々と登場してくることだろう。 本書には表題作を含めて10の短編が収録されている。北京大学を卒業後渡米し、アイオワ大学で学んだ著者の体験を踏まえたと思われる作品が多いが、小学…
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宿澤広朗 運を支配した男
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katu/努力は運を支配する
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私には、人となりはよく知らないが、一方的に尊敬している人が二人いる。一人は若島正で、もう一人が宿澤広朗である。どちらも天がニ物を与えた人物だ。 私はラグビーファンだが、宿澤が現役の頃はもちろん知らない。しかも残念なことに宿澤が日本代表の監督を務めてスコットランドから大金星を奪った試合も観ていない。ただ、スコットランド戦は勝ちに行くと宣言し、その宣言通り勝利した宿澤が試合後のインタビューで「お約束通り勝ちました」という名言を吐いたのはあまりにも有名だ。 日本代表の監督をしたり、NHKでラグビーの解説をしたりしている宿澤が住友銀行でも要職に就いていると知った時は大層驚いた記憶がある。なぜそんな…
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ラグビー愛好日記
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katu/全てのラグビーファンに、そしてラグビーファン予備軍の人にオススメ!
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ラグビー・ジャーナリストの村上晃一氏の人気ブログ「ラグビー愛好日記」から飛び出したトークライブ企画を一冊にまとめたものである。残念ながら私はトークライブに参加する機会はなかったが、この本からでも十分に熱気は伝わってくる。 それにしてもゲストがみんな熱いねえ。スポーツライターの藤島大氏、ラグビー博士の小林深緑郎氏、ラグビーマガジン編集者の森本優子氏、スポーツジャーナリストの生島淳氏、東芝ブレイブルーパスの冨岡鉄平氏、四日市農芸高校ラグビー部監督の下村大介氏、そしておまけの安田紘三郎氏。皆さんのラグビーに対する情熱がひしひと伝わってくる。 特に、四日市農芸高校のラグビー部をゼロから花園出場校ま…
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別離のとき
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katu/短編にはビター・エンドこそふさわしい
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短編特集を組んでいた『考える人』でフランス人作家ロジェ・グルニエのことを初めて知った。挫折や幻滅の物語が多く、「挫折の小説家」と呼ばれているらしい。本書を読んでなるほどと納得した。 戦時下のフランスで恋人に逢いに行くためにはるばる列車を乗り継いで行ったリュドヴィックも(「別離の時代」)、学生時代に同じ音楽学校にやってきたヴァイオリン弾きの女性に恋をしたトマも(「あずまや」)、自分の牧場にやってきたドイツ人の作男に恋した少女マリも(「菩提樹の下で」)、みんな最後には苦い汁を味わうことになる。 ただ全てがそういう話ではなく、オチのついたショート・ショートである「モンマルトルの北」や、最後の一行…
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あやつられ文楽鑑賞
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katu/「文楽・愛」に満ちた一冊。三浦しをんのツッコミにも注目!
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『舞台裏おもて』などを読むにつけ、「文楽」観に行きたいなあと思っていたところだったので、私にとっては「まさに」のタイミングでの刊行だった。 内容も、単に「文楽観てきましたよ〜」というレポートに留まらず、三味線さん、人形さん、太夫さんの楽屋を訪れてインタビューしたり、文楽と同じ演目の歌舞伎を観に行ったり、文楽を題材にしている落語を聴いたり、三味線さんの襲名披露公演に行ったりと実にバラエティに富んでいる。 一方で、演目をじっくり紹介して、登場人物の心情を考察している回もある。「女殺油地獄」では主人公が殺人を犯すに至るまでの心情を事細かに推理し、「仮名手本忠臣蔵」では現在の常識からは考えられない…
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観光
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katu/注目のタイ出身作家!
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少し前から英語で作品を書くアジア系の作家が注目されている。カズオ・イシグロしかり、ジュンパ・ラヒリしかり。そしてこのタイ出身のラッタウット・ラープチャルーンサップは若干25歳で本書にも収録されている「ガイジン(Farangs)」を発表した。小説の巧拙に年齢は関係ないのかもしれないが、「この若さで!」と思うほど抜群に巧い。 「ガイジン」から「闘鶏師」まで7つの短編が収められている(「闘鶏師」のみ少し長い)。どの作品もタイが舞台になっており、タイの風俗や生活が実に瑞々しく、そして生々しく描かれている。行ったことのない土地の自分たちとは違う生活の話というのは、それだけで実に興味深いものだ。例えば、…
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八日目の蟬
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katu/どうしようもなく角田光代的でありながら、遥かに進化した作品
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『対岸の彼女』を読んだ時に、もうしばらく角田光代の本を読むのはよそうと思った。どの本を読んでも内容が似たり寄ったりだからだ。直木賞受賞後、次から次へと新作が発表されたが、触手が動かされることなく2年が過ぎた。そして本作の「不倫相手の夫婦の赤ちゃんを誘拐して逃亡する話」というあらすじを知って、ようやく読む気が起きた。 あらすじを知った時に思い出したのは桐野夏生だ。ちょうど今『メタボラ』も刊行されているが、どちらも新聞小説で、どちらも名前を変えて逃げながら転々とする話である。海が近い土地が主舞台になっているのも似ている。もっとも『メタボラ』の方は主人公が記憶喪失であるという点が違っているけれども…
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ジョッキー
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katu/競馬ファンでなくても十分に楽しめるけれん味のない好著
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第14回小説すばる新人賞受賞作である。刊行当初から読みたいと思っていたのだが、読みそびれたまま月日は流れ、今更ながらようやく読んだ。 「競馬もの」にはディック・フランシスという大きな壁がある。それがミステリーであろうとなかろうとこの巨匠のおかげで読み手のハードルは非常に高くなっている。かくいう私もディック・フランシスの本はほぼすべて読んでいるので、「競馬もの」に対する目は肥えているつもりだ。それでも本作は面白かった。 主人公は中島八弥というジョッキーだ。千葉厩舎に所属していたのだが、ひょんなことから千葉厩舎を辞め、現在はフリーで騎乗している。なかなか騎乗依頼がないにもかかわらず、自分から営…
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家日和
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katu/やっぱり家族っていいよね
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「家」を舞台にした短篇集。ネットオークションにハマっちゃう奥さんや、会社が倒産して妻が働きに出たので専業主夫になった旦那さん等々が登場する。中でも私が一番面白かったのは「家(うち)においでよ」という作品だ。 主人公が妻と別居することになり、妻が自分の家財道具一切を持って出て行ってしまったところから話は始まる。カーテンもソファも持って行かれてしまったので、とりあえずカーテンを買いに行く。ここから図らずも「男の隠れ家」づくりが始まるのだ。カーペットや本棚を買い、高価なオーディオセットも迷った末に買ってしまう。何せマンションを買おうと思っていた資金があるのだ。そんな中、ソファだけはなかなか気に入っ…
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殺人作家同盟
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katu/コアなファンにも初心者にもオススメ
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昔はよく「EQ」というミステリー雑誌で短篇を読んでいたが、長篇を読むのは久し振りだ。ダイヤモンド警視シリーズが有名だが、この作品はノン・シリーズものである。 表紙の裏からあらすじを引用すると・・ 「出版社を経営するエドガー・ブラッカーが放火により殺された。彼は歯に衣着せぬ物言いで作品を批判したり、出版の約束を反故にするなどして作家から恨みをかっていた。容疑者は12人、アマチュア作家の集まり<チチェスター作家サークル>の面々に絞られた。無実を訴えるメンバーの身辺を、サークルの新入りであるボブ・ネイラーは調べ始めるが、まもなく第二、第三の犠牲者が・・・」 典型的なフーダニット・ミステリーであ…
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舞台裏おもて
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katu/宝箱のような本
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タイトルの通り、歌舞伎・文楽・能・狂言の舞台裏を見せてくれる本である。小さな正方形に近い版型にカラー写真が満載で、なんだか宝箱のような本である。 ただ舞台裏の写真を掲載しているだけではなく、それぞれ成立の歴史なども紹介してくれているので、これらの古典芸能の入門書としても優れている。 個人的には、最も縁のない文楽が一番興味深かった。そもそも一体の人形を3人で操るということすら知らなかった。「主遣い」が頭(かしら)と右手を、「足遣い」が足を、「左遣い」が左手を動かし、「主遣い」になるまでには「足十年、左十年」という長い修業が必要らしい。衣装を着せながら各部位を人形の形に組み立てることを「こしら…
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わたしたちに許された特別な時間の終わり
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katu/新たな才能の出現
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「チェルフィッチュ」を主宰する岡田利規の初めての小説集である。戯曲を小説化した「三月の5日間」とオリジナル小説「わたしの場所の複数」の2編が収録されている。 「チェルフィッチュ」の芝居といえば、何といってもあの役者の不思議な動きである。喋りながら、手や足を常に動かしているのだ。最初に見た時には奇異に感じたが、慣れると段々気にならなくなってくる。自分の身の回りの人たちを見ても、結構無為に手を動かしながら喋っていたりするものだ。小説ではこの動きを利用することができない。そこをどう考え、処理するのかが一つの見どころだった。たまたま今日(3月22日)の朝日の夕刊で岡田利規が取り上げられており、その点…
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ワインの自由
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katu/ワインは決して難しいものではない
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同じ著者の『ワインの個性』の方を最近知り、その本の前にこの『ワインの自由』を書いていたことも知ったので、先に『ワインの自由』を読むことにした。著者は冒頭でこう書いている。 「自由」とは、他から影響、拘束、支配などを受けずに、自らの意思や本性に従うことをいいます。 その言葉通り、本書には今までの通例に囚われない自由な物言いが溢れている。例えば、「料理とワインの相性」という節は「私は、料理とワインの組み合わせについていろいろと講釈をたれるひとが嫌いです」で始まり、「自分が好きな料理を食べながら、自分の好きなスタイルのワインを飲むのがそのひとにとってベストの組み合わせのはずで、その組み合わせを知…
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カラスのジョンソン
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katu/通いあう心
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朝日新聞における悩み相談室の名(迷?)回答者といえば中島らもだったが、中島らも亡き後は何といっても明川哲也だろう。人によっては「ドリアン助川」の方が通りがいいかもしれない。そのドリアン助川、もとい明川哲也の小説である。 主人公はカラスのジョンソンだ。まだ子どものジョンソンは、「褐色の影」の襲撃を受けて巣から落ちてしまう。それをたまたま拾ったのが工場で清掃のパートをしていた里津子だ。彼女には陽一という小学生の息子がいるが、離婚しているので母子家庭である。市営住宅に住むこの親子が元気になるまでという期限付きでジョンソンを飼うことにするが・・・。 新聞紙上における明川哲也の回答は、突拍子のないこ…
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江戸っ子だってねえ
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katu/旅行けば駿河の道に茶の香り♪
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その昔、ってほど昔じゃないけど、私の父親はヤクルトの広沢が打席に立つたびに「いよっ虎造、しっかりしろよ」と声を掛けていた。私の父親(昭和12年生まれ)よりも上の世代の人たちにとっては、「山」と言えば「川」のごとく「広沢」と言えば「虎造」だったのだろう。そんな広沢虎造の一代記である。 広沢虎造の名前こそ知っていたが、浪曲には全く興味のなかった私がなぜこの本を読むに至ったのか。それは文庫版の解説を町田康が書いていたからである。『正直じゃいけん』に収録されていたその解説を読んで、すぐにこの本が読みたくなった。 「例えば浪花節というものがどういう芸なのか、なんてことについては、まだ素人で浪曲好きの…
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独白するユニバーサル横メルカトル
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katu/何と言ってもタイトルがいい
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言わずと知れた2006年の「このミス」国内1位作品である。相当にグロいと「このミス」にも書いてあったため、購入するのは躊躇われ図書館で借りた(順番が回ってくるまでにかなりかかったが)。 確かにグロい描写や残酷な描写も多いが、全部が全部そうだという訳ではない。トマス・ハリスのハンニバル・レクターもののパロディとも言える「卵男(エッグマン)」や江戸川乱歩の『人間椅子』を彷彿とさせる表題作の「独白するユニバーサル横メルカトル」などはなかなかのアイディア作品だ。特に「独白するユニバーサル横メルカトル」がいいね。まずタイトルがいい。これだけで半分成功しているようなものだ。もちろん内容も凝っている。何せ…
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