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モバイル・コンピューティング モバイル・コンピューティング
FAT/good timing の良書
 コンピュータとい機械の設計思想の系譜をAI系(人工知能系)とIA系(知能増強=人工器官系)とに分類することにより、今後のマン・マシン・インターフェイスの発展の見通しを開いていてくれる。その一方で、その論調は、巷に良くあるタイプのビジネス戦略を分析すると称するタイプや、「今後のビジネスの方向性はこうだ」と知ったかぶりするタイプでもない。デバイスの変化の方向について、抑制された丁寧な記述がなされており好感度が高い。 iPadが発表され、その発売がいろいろな立場から「待ち遠しい」とされる2010年2月という絶好のタイミングで発刊された良書です。  全文読む 評価する

進化考古学の大冒険 進化考古学の大冒険
FAT/進化考古学という魅力的な方法論
 本書は、小学館版の「全集 日本の歴史」の第一巻『列島創世記』の著者が「自然科学の分野で飛躍的に発展した進化科学の成果に導かれて、考古学者がこれまで本業としてきた土器や石器、住居や墓などの解釈を、もっと科学に近づけてみよう、というのが本書のねらいである。」として、進化考古学(あるいは認知考古学)を平易に紹介するものである。 進化考古学(認知考古学)を評者なりに解釈すると、個々の人工物の製作「意図」ではなくて、人工物がヒトにどのような心理的・認知的効果を生み出し、それがどのように「共進化」してきたのかを解明する知的営み、とでもなろうか。 非常に魅力的な歴史へのアプローチではなかろうか。 本書の…  全文読む 評価する

犬養毅 犬養毅
FAT/一口で「評伝」とはいっても、いろいろあるということ
 同時期に本書「犬養毅」と同じ「ミネルヴァ日本評伝選」シリーズの「北畠親房」を読んでいたせいなのだが、同じ評伝といっても、かなり異なる印象を受けたというか、著者が目指そうとしているものが随分と違うものだと感じたところだ。 好みの問題として片づけてしまえば、その程度のことなのかも知れないが、本書「犬養毅」は、歴史家の著述というよりも、小説家の著作のようだ(ちなみに、現時点の私は、「評伝」として、このような著作に拍子抜けしている)。 本書は、犬養毅の人となりに重点をおいてその著述を進めていく形になっている。そのため、必ずしも犬養を軸とする政治の動きが鮮明に浮かび上がってくるとは、正直言いがたい。 …  全文読む 評価する

北畠親房 北畠親房
FAT/14世紀半ばの歴史を理解するための好著
 鎌倉幕府の崩壊後の14世紀半ばの歴史は、通常「南北朝時代」とされ、室町幕府の成立過程として著述されることが多いのではないだろうか。それも、「室町幕府の創設者」として、足利尊氏(高氏)の活躍を軸として描かれることが多いと思う。しかし、足利尊氏とその周囲の人物だけに焦点を合わせた歴史像には、何かしら腑に落ちないところがある。 本書は、北畠親房という南朝の中心人物の動静から、南北朝両統定立時代の成立過程を描写する訳だが、いわゆる「南朝」勢力の整序のプロセスにおける親房の微妙な立ち位置というものが、このプロセスにおける本質を表象しているだと思われる。 というのも、本書で明確に打ち出されているように、…  全文読む 評価する

二大政党制批判論 二大政党制批判論
FAT/評価できない立論
 単に、小選挙区制を賞揚した人たちに対する「憤懣やるかたない気持ち」がつづられている書物。民主政治というか、普通選挙に基づく議会制度においては、政権交代自体に価値がある。「民意の反映」という言葉は聞こえはいいが、所詮マジックワードで、反映度を検証する方法論が存在しない科学的検証に耐えられない概念でしかない。 とすれば、まずは、具体的な政治情勢、つまり現代の日本という風土、前提条件の下で、政権交代が起こりやすい制度とは何かという発想が重要なはず。 やみくもに死票が多いというだけの批判をするのは、いただけない。  全文読む 評価する

携帯電話は人工知能の夢を見るか? 携帯電話は人工知能の夢を見るか?
FAT/このタイトルは「あんまり」ではないでしょうか
「携帯電話は人工知能の夢を見るか」というタイトルから、どのような内容を予想するでしょうか。そして、グーグルのアンドロイド・プラットフォームとの関連を示唆する内容紹介がされていたら、どれほどのわくわく感を持つでしょう? しかし、本書は、これらの期待をことごとく裏切る内容です。 本書は全体で120ページほどですが、そのうち80ページまでで、計算機の歴史を振り返っています。このタイトルで、まさかベバリッジやENIACについて読まされるとは思いもよりませんでした。 さらに、読み続けると後半では、著者が研究している「エキスパートシステム」についての話が続きます。まあ、その研究内容自体はともかく、この「エ…  全文読む 評価する

慶安の触書は出されたか 慶安の触書は出されたか
FAT/メディアの陥穽
 「慶安の御触書」 日本史のお勉強のとき、江戸幕府が農民の生活統制=年貢確保のために出した「お節介法令」(いわば江戸時代の軽犯罪法)というイメージがある。 衝撃的だが、この「慶安の御触書」というものは、実は「幕府法令」として実在したものではなくて、原型が別にあり、それが後世(19世紀第2四半期以降)になって、慶安時代(1649年)に幕府によって全国に発令されたものとして「法令集」などに掲載され、多くの藩で採用されたものだそうだ。そもそも、慶安時代に発布された触書そのものというのは、全く発見されておらず、明治期からその実在性については疑念を抱いていた学者もいたというのだから驚きである。 問題は、…  全文読む 評価する

ダブル・クラッシュ ダブル・クラッシュ
FAT/銀行にとっての不動産担保融資のリスク
 タイミングの良い時期に発刊された良書です。 本書では、目下の世界的デプレッションの要因である、米国の金融危機について、日本のバブル崩壊後の金融危機と連関させて分析しています。 重要な点は、日本のバブル崩壊と同じ構造の不動産担保融資による金融機関の過剰なリスク負担による破綻であることを端的に指摘しているところ。決して、今回の経済危機について、グローバル経済やグリード金融の破壊だの、新自由主義の崩壊だのといった、良く言えば経済思想的観点、実際には、イデオロギーじみた観点からの論調はない。 そして、この過剰な不動産担保融資を抑制し、かつ、貸し渋り等マクロ経済への悪影響を抑制するための方策として、不…  全文読む 評価する

イスラーム教「異端」と「正統」の思想史 イスラーム教「異端」と「正統」の思想史
FAT/「異端」が「正統」を生み出すというパースペクティブ
 本書において展開されているのは、イスラム教における二大宗派であるシーア派とスンニ派の成立過程。この成立過程の要点は、「異端」たるシーア派の教義の固定化が時間的には先行し、「正統」たるスンニ派の教義は、そのシーア派の教義に触発される形で整備されていったものだという点だ。 第3代カリフ・ウスマーンの就任から、第4代・アリー、そしてウマイヤ朝の成立、そしてアッバース革命(アッバース朝の成立)という政治変動の中で、後代のシーア派にとっての「カリフ」である代々のアリーの血統者とその支持者の政治的行動の変遷とともに、アリーの血統の指導性を神学的に強調していく宗派形成の過程がつづられていく。一方、スンニ派…  全文読む 評価する

中世の天皇観 中世の天皇観
FAT/日本の中世から近世の政治体制を制約した「正統」概念
 本書では、中世以前の「天皇」なる地位の基盤、つまりある個人を天皇として周囲の人(基本的には、朝廷及び武家政権の権力者達)が認める論拠となっているのは、「正統(しょうとう)」という概念だとする。まさに、天皇の正統(せいとう)性は、正統(しょうとう)によって基礎づけられる。 この「正統」とは、ごく最近に皇位を継いだ天皇の父系血統であるが、今上から上代にさかのぼる形で認識されるものだが、神武天皇から下る系図の「幹」という形で構想されるもので、本書の31ページ以下で視覚化されている。 この「正統(しょうとう)」を周囲から認められることが、皇位承継の条件であったというのが、本書の主張であり、この点か…  全文読む 評価する

近代日本の国家構想 近代日本の国家構想
FAT/次の参議院選挙に向けて、戦前の議会政治を巡る思想を振り返る
 本書は、日本の明治所期から昭和の立憲構想、議会制構想を巡る思想史の概観し、二大政党による政権交代という政治の在り方、内閣という組織と官僚機構(藩閥)の在り方についての、政治家(井上馨)と思想家(福沢、徳富、美濃部)の論陣を歴史的に分析するもの。 勿論、戦前「憲法」下においては、内閣総理大臣を任命し、行政執行を担う内閣を編成する「大権」が、形式上天皇にあり、議会との関係で「超然」とすることが、解釈上許容されるものであったのだから、そこでの議論と、議会に内閣総理大臣の指名権があり、内閣を構成する大臣の過半数が国会議員=事実上政党員でなければならない現行憲法下では、議論における前提が大きく異なって…  全文読む 評価する

税を直す 税を直す
FAT/政権交代後の税制論議の行方
 ここ1年ほどの間の税制議論では、間接税の議論ばかりがなされている。 消費税を社会保障目的税にすることによる、税率の引き上げの可否の議論、ガソリン税などの化石燃料への間接課税の暫定税率の引き下げ、あるいは充当目的の変更の議論。 しかし本書では、間接税の議論もさることながら、直接税の税制について、 ・所得税の累進強化(というよりも、過去への復帰) ・法人課税の継続(そして、所得課税との斉一化)を主張している。 また、大事なことは、これらの税制「改悪」を進めてきた論拠の虚妄性、つまり、実は根拠がはっきりしないことを、淡々と論じている点だ。 今回の選挙(2009年8月末)の結果、過去の税制論議の虚妄…  全文読む 評価する

変貌する労働時間法理 変貌する労働時間法理
FAT/労働する者の自律を支える労働時間法理を探って
 本書は、労働時間を巡る裁判例を敷衍する形で、労働時間に関する実定法とその実定法の抽象的な文言を具体的な判断基準に落とし込む判例法理の展開を解説するもの。 本書から浮かび上がってくるのは、個々の事案の解決としては労働者の権利を擁護するような「妥当」な判決に見えつつも、その判例法理に本質的に埋め込まれている問題点であり、労働時間、要すれば「使用者の指揮命令に拘束される時間」を巡る実定法と判例法理が、いかに使用者側に有利に設定されているかということだ。 そこでは、「総合的に業務を遂行する上で不可欠」といった理由で、個別の「使用者」の指揮命令や就業規則の設定・変更が正当化されてきた歴史が展開されてい…  全文読む 評価する

保育改革の焦点と争点 保育改革の焦点と争点
FAT/紋切り型のバウチャー批判
 現在、政治の争点としては浮上していないが、児童保育、いわゆる保育所制度について大きな見直しの作業が進められている(実現されるかどうかは不明だが)。そのポイントは、保育所への「バウチャー」の導入、つまり保育事業への広義の「補助」を出すのではなく、保育者、つまり親に「補助」を出し、親が保育所を選ぶという制度への転換が検討されているところ。 本書は、このバウチャー導入に反対をしているのであるが、正直、その批判のロジックは論理の飛躍ばかりだし、紋切り型の新自由主義批判であり感心しない。特にだめなのは、現状の認可保育所制度が絶対的供給制約下にあって、これを解消する具体的見通しを持っていないところ。 一…  全文読む 評価する

タンパク質の一生 タンパク質の一生
FAT/細胞内小器官の機能の本質が分かる
 書名は「タンパク質の一生」であるが,この本は,細胞の機能を俯瞰し理解する上で,非常に優れた本である。いわゆる細胞生物学の本では,細胞内小器官自体について,その機能を解説するというスタイル,叙述方式になる。しかし,この本では,タンパク質の生成から,「成熟」,そして分解までを一連のプロセスとして描き,その中で各々のオルガネラの機能を展開するというスタイルとなっている。 勿論,細胞の機能は,タンパク質代謝系だけではなくて,エネルギー代謝系もあるので,タンパク質の生成分解過程だけで,細胞の機能が解明される訳ではないが,「タンパク質の一生」に細胞内小器官がどのように関与しているかという,一本筋の通った…  全文読む 評価する

日本の歴史 日本の歴史
FAT/認知考古学に基づく抑制的な筆致
認知考古学、要すれば「モノ(=発掘物や遺跡)をして語らしめよ」という哲学で本書は貫かれている。その元で、モノの個別の制作者の意図は「分からないものは分からない」と、潔く諦めているのである。そのため、一部逸脱もなくはないが、全般的に実証的ですがすがしい著作となっている。これが、本書の読後感の第一。さらに、本書では、決して「日本」という国家概念ではなく、「列島」という地理概念で叙述が進む(そもそもタイトルがそう)。ここがポイントで、旧石器→縄文→弥生→古墳と進む時代区分の中で、列島の域内に、文化の「まだら模様」が作られていったことを説得的に説明している。これを見ると、邪馬台国論争なんて、エネルギー…  全文読む 評価する

ケインズとシュンペーター ケインズとシュンペーター
FAT/ちょっと。これは無いんじゃないですか
確かに、同じ出版社の「経済学の教養」には、頸をかしげましたが、根井先生の著作で、「ケインズとシュンペーター」と来れば、期待するでしょう。しかし、本書も頸をかしげざる得ません。今時、シュンペーターの「企業家精神」の議論に一章当てること。「『マクロ経済学のミクロ的基礎』という名の下にケインズ経済学を『去勢』してしまった最近の学界の動き」といった表現。こういう部分を見るにつけ、小野氏の「不況のメカニズム」が上梓されている現在において、本書の問題意識はどこにあるのか、正直全く理解できません。しばらく、根井氏の著作を読むことはないでしょう。  全文読む 評価する

近代日本の右翼思想 近代日本の右翼思想
FAT/目次に全てが集約されている
本書については、まず目次を見て欲しいと思う。著者の「近代日本における右翼」の見通し、パースペクティブがここに集約されている。第1章 右翼と革命    世の中を変えてみようとする、だがうまくゆかない第2章 右翼と教養主義    どうせうまく変えられないならば、自分で変えようと思わないようにする第3章 右翼と時間    変えることを諦めれば、現在のあるがままを受け入れたくなってくる第4章 右翼と身体    すべてを受け入れ頭で考えることがなくなれば、からだだけが残る その後、まず本書の「まえがき」と「あとがき」を読んで欲しい。 「教義」が体系化され、「教典」を持っている左翼思想の一部としてのマル…  全文読む 評価する

世界の小国 世界の小国
FAT/小国に学ぶことはできない
著者が本書を記した意図が、現代の日本政治・社会の有り様について、小国から学ぶこともあるはずだというものであるならば、その意図が成功しているとは言えない。 本書を通じて明らかになる、いわゆる「マイクロ国家」の実態の有り様からすれば、結局、マイクロ国家は、現実の国際政治社会において、実質的な存在としては存立できはしないということではないか。 要すれば、資源収入に頼った権威主義的国家運営を行うか、「炭坑のカナリア」を装って機会主義的行動を取るか、「国家主権」のベールを利用して制度の隙間をついたレント・シーキングを行うかという、有り様しかないということだ。 結局、世界全体の経済厚生をプラスする、プラス…  全文読む 評価する

キャラ化するニッポン キャラ化するニッポン
FAT/「キャラ化」という魅力的なキーワード
この書評のタイトルは、本書のあとがきからの引用である。この台詞の直後で、著者は次のように書いている。 このキーワードは今後ますます、その魅力と説得力とを増していくはずだ。(本書、P182) 本書における、社会現象をキャラ化で説明する論旨展開自体には、実はそれ程目新しい議論がある訳ではない。しかし、このキーワードは、混乱した各種の社会現象を「統一的に」説明する説明概念として、デュルケームの提唱した「アノミー」と並ぶ程に協力なものである気がする。ある意味では、その力が強力するぎるので、その説明力が疑わしくなる程である。 評者自身は、この「キャラ化」ということを規範的には受け入れがたいので、心情的に…  全文読む 評価する

天皇の日本史 天皇の日本史
FAT/結果的には「日本史の謎」は氷解せず
本書の著者は、冒頭で 「天皇はなぜ日本の長い歴史の中で重んじられつづけたのだろうか」この問題は、日本史上の最大の謎だといってよい。とし、さらに、 一つの王家の支配がこれほど長期にわたって行われた国は、世界の文明国の中で日本だけなのだ。とも述べている。 この「謎」の答えは、結局、天皇(家)は、日本の祭祀王であり、この宗教的権威に、世俗政治上の権力者はあらがえなかったからということらしい。要すれば、ローマ教皇と同じだということが、著者の答えらしい。 正直拍子抜けである。反証として、簡単にアッバース朝のカリフを挙げることができる。  私見では、ユーラシア辺境の島国には、大規模な民族移動の波が到達しな…  全文読む 評価する

幕末・維新 幕末・維新
FAT/基本的には良いと思うのですが・・・・・
幕末の江戸幕府能吏による外交交渉の評価、江戸時代末期における幕府の衆議の重視や民衆の政治的意見表明に関する事実、また、日本が李氏朝鮮と条約交渉をしている時期における、日本と朝鮮の民衆反乱についての比較の視点などなど、興味深い指摘が多数存在しているのは間違いない。ただ、本書一冊を通した読後の満足感がないのは、なぜなのだろうか?それは、幕末の政治史や新政府の明治六年の政変に至る政治的変動が、ほぼ結果だけ書かれているという感じになっているせいなのではないかと思う。では、なぜこのような叙述になっているのだろうか?評者は、本書の著者が、「ありきたりの政治史をなぞることでは、少々新事実を指摘したところで、…  全文読む 評価する

前頭葉は脳の社長さん? 前頭葉は脳の社長さん?
FAT/比喩はイマイチだが、内容は優れもの
本書の各章で出てくる脳の領域「野」を、企業経営における各担当分野をもつ役員に例えるというのは、ご愛敬。しかし、本書の開陳する脳の機能、働き方についての仮説は、非常に分かりやすく説明されているのです。また、検証すべき命題として、どこまで発展させられるかどうかは判断が難しいが、次のような本書の説明には、強いイメージ喚起力があり、何か分かった気にさせてくれるのです。「脳の意思決定は、脳の広範囲の領域で起こっている減少です。どこかひとつの領域が意思を決定しているわけではなく、複数の領域、そして当然のことながら多数の神経細胞が協調した結果として、脳の意思が生まれてくるのです。」「ある瞬間にパッと指令を出…  全文読む 評価する

戦争指揮官リンカーン 戦争指揮官リンカーン
FAT/文官政治家による戦争指導とは
結果の相同性を指摘しただけで、そこに因果関係を措定するのは、基本的な誤り。本書の随所に見られる「南北戦争が、その後アメリカが行った戦争の原型だった」という類の指摘については、個々の戦争を指導した政治家や軍人が、南北戦争の戦史を追認しつつ戦争指導を行ったという点についての実証がなされない限り(たとえば、米国の軍人向けの教科書の記載が南北戦争に偏っている等)、留保をつけるべき。一方、評者にとっての、本書の「おもしろみ」は、まさに史実としてリンカーンが戦争指導をどのように行ったのかという記述そのものにある。文官が武官に戦争を指導するというのは、ワシントンが武官=軍人かという範疇分けにもよるとは思うが…  全文読む 評価する

外国人投資家 外国人投資家
FAT/読んだ私が悪いのか
わざわざ「外国人投資家」というタイトルで本を書くのだから、愚痴るのは、お門違いなのかもしれない。しかしながら、そんなに外資が偉いのか?何で日本の資本市場や個人投資家のあり方について、いちいち外資のご託宣をたまわらなきゃならんのか?要すればそういう本です。  全文読む 評価する

不況のメカニズム 不況のメカニズム
FAT/乗数効果の否定
貨幣愛に起因する不況という理論自体は、ケインズの一般理論にもあることなので、その復活という意味では政策的意義、特に日銀の金融政策に対する意義は大きいが、それ以上ではない。一方、本書の学問的に重要な点は、乗数効果の全面的否定ということであろう。さらにここから含意されるのは、マクロ経済学の財政政策へのツールとしての意義の消滅、少なくとも半減である。著者の言葉に拘らずに、財政政策への含意をまとめると、「失業があるときには、その失業を埋めるだけの仕事を公共事業として行うことは、資源の浪費・遊休を減少させることとなり、経済的に意味がある。しかし、公共事業の中身は資源の浪費にならないように、精査しなければ…  全文読む 評価する

組織の〈重さ〉 組織の〈重さ〉
FAT/組織の通信簿
本書の冒頭における、実証的組織論研究の停滞についての整理は非常に重要であると思う。アメリカ流の経営戦略論の日本への導入が進み定着し、経営戦略論から技術経営論へと進んでいく一方で、地道な組織特性、組織の具体的様相を研究することがおろそかにされていく様がサーベイされている。この組織論というと、ゲーム理論、契約・情報の経済学を使った、新制度派経済学的研究ばかりが目に付いた。しかし、藤本隆宏教授のアーキテクチャ論が生産現場の実態を分析する視点として定着しつつあるなか、組織論においても実証化の波が来そうな気配。このような研究にキチンと資金が配分されると、この国の企業統治、組織統治の度合いを測る適切な「通…  全文読む 評価する

多元化する「能力」と日本社会 多元化する「能力」と日本社会
FAT/実証科学としての価値は低いが・・・
本書の分析は確かに甘い。因果関係と相関関係をはき違えては勿論ないが、しかしそれでは、統計データと仮説命題とのリンクが牽強付会を逃れ得ない。ただし、一種の研究エリアを構築したという観点からは、ネーミングについては今一歩だとは思うが、「ハイパーメリトクラシー」という課題設定は優れていると思う。本書は、処方箋を期待するより、問題をあぶり出した警句の書と考えるべき。人間は準拠枠を作らなければ分析枠を作れないので、肯定批判を含め「ハイパーメリトクラシー」という準拠枠を踏まえた今後の研究の深堀を期待する。要すれば、「ニート」とか、最近だと「ネットカフェ難民」という概念の「発見」が政策論議に結びついたように…  全文読む 評価する

海外貿易から読む戦国時代 海外貿易から読む戦国時代
FAT/実証性のかけらもない
タイトルと中身の関係がよく分からない。戦国時代の海外貿易の実証的な研究のようなものを期待すると、期待を裏切られますので注意してください。  全文読む 評価する

「日本封じ込め」の時代 「日本封じ込め」の時代
FAT/日本は封じ込められているか
これを読んでも、現在の日本がどのように「封じ込めれている」のかは、全く分かりません。日本の朝鮮半島統治とアメリカによる日本占領統治を比較するという着眼点だけは興味深いですが、この著述からその比較が何らかの識見を生み出す比較なのかは全く分かりません。というか、まともな比較はされていません。同じ切り口による本当の歴史家による比較研究を望みます。  全文読む 評価する

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