|
水鏡綺譚
|
|
ゲレゲレ/得るものと失うものの物語
|
時代は定かではない。戦国時代であろうか。 狼にひろわれ、行者に育てられたワタルは「立派な人間になりたい」と思い旅をしていた。ある時、さらわれた娘、鏡子(かがみこ)を夜盗の手から救う。鏡子は生まれた時に持っていた鏡を失ったため過去の記憶がない。ワタルと鏡子、ふたりの旅は鏡子の家探しの旅。その途中、さまざまな事件に出会う。 鏡子はワタルのことを「自分のことを救ってくれる人」と直感し、ワタルから離れない。ワタルは修行の旅に女は妨げ、と考えたが、純真な鏡子をじょじょに好きになる。 第七話「白比丘尼」。途中、何度も生まれ変わり、何千年を生きる白比丘尼にふたりは出会う。白比丘尼は「この娘が知恵を持った時…
|
|
|
国際線スチュワーデスのリッチな節約生活
|
|
ゲレゲレ/それは女性魂か、プロ根性か、したたかさか
|
以前は大企業の部長以上の高給をもらっていたスチュワーデスも不景気時代に入り、普通のOLとほとんど変わらない給料だという。それでもスチュワーデス=美しい、という客の期待を裏切るわけにはいかない!とがんばるスチュワーデスたちの努力から生まれた知恵が書かれています。また、海外の航空会社のスチュワーデスだった著者は同僚も外国人だった。というわけで世界中の女性の考え方も読めておもしろい。 美しく見せる秘訣が書かれており女性の方は必読。たとえば、化粧品にお金をかけずにきれいになる方法、太ってもやせたように見せる方法、ブランド品を安く買うコツ、スチュワーデスの得意技スカーフをきれいに巻くコツ(思い切りキツ…
|
|
|
波のうえの魔術師
|
|
ゲレゲレ/今でも色あせず伝わる小塚老人のことば
|
私は株をやっています。原作は株をやってない人もおもしろいと思うけど、やっているとすごく感情移入できる著作です。 舞台はドン底の不況下にある東京の下町、荒川区町屋。マーケットに精通した小塚老人が、パチンコしか生きる術のない大学出たての青年を、社員として雇うところから物語は始まる。 老人が一見取り柄のないその青年になぜ声をかけ、社員にしたかを語る一説が印象的だ。「(前略)ロシアの小説家がこんなことを言っている。『ほんとうに貧しい人というのは、みんなと一緒に貧しい人のことだ。ひとりきり孤独に貧しい者は、まだ金をつくっていない金持ちにすぎない』。大勢の野次馬のなかにぽつりと浮かんで、きみはまさにそん…
|
|
|
半落ち
|
|
ゲレゲレ/組織と人間の関係
|
警察の取り調べで、犯人が完全に自白した状態を「完落ち」、すべてを自白していない状態を「半落ち」というそうだ。49歳で妻を殺害したこの警察官は、殺人は認めても、殺人後に出頭するまでの2日間については、決して語ろうとしない。敏腕の刑事、検察官、新聞記者、弁護士らが、その謎に挑む。 小説では警察組織の内情がリアルに描かれる。検察は警察の上位機関としての位置づけられるが、組織対組織、狭い地域の中での「つきあい」の図式の中では、上位機関としての機能が有効に働かない。長年、同じ組織の中で勤務し続けていく人達が、恐れ、大切にするものは、犯行の真相を究明とはまったく異なる。組織維持、保身なのだ。 「人間はひ…
|
|
|
模倣犯
|
|
ゲレゲレ/真実を見る目を眩ませるモノ
|
東京のように多くの人が住む都会では、人に気を使わなければならないシーンが多い。そして、「人に気を配ること」=「良いこと」という固定観念に捕らわれ過ぎている人もいる。そんな人は、無神経さが引き起こすトラブルを恐れ、自分が「無神経な人」呼ばわりされることを恐れている。気配りに頭が行っていると、真実を見る目は曇ってしまう。時にトラブルが起きたとしても、真実に目を向けなければならない場面もあるのだ。 登場人物のひとり、フリーライターの前畑滋子は非常に周囲に気を配る性格だ。前畑は、容疑者の妹、高井由美子が兄の無実を遺族たちに会って訴えようとした時に、遺族たちの気持ちに配慮し、「絶対に会うべきでない」と…
|
|
|
ジーンリッチの復讐
|
|
ゲレゲレ/未来を予測する数々の理論を提示
|
物語の舞台は西暦2020年。遺伝子を操作することで、癌などの大人になってからかかる多くの病気を予防できる。さらに、頭のよさなど、プラス面の遺伝子操作も行われた人間が現れる。それがジーンリッチだ。 未来のSF夢物語ではなく、実際に技術的に人間への遺伝子操作が可能になっていったときに、人の心はどう変わるか。多くの予測が含まれている。冒頭で事件を巻き起こす未来のインターネットウィルスは、パソコンへの影響のみならず、直接、人間に作用する点にも驚いた。 物語には多くの理論が登場し、未来予測の根拠を示している。不確定性原理、アポトーシス、クローン、遺伝子…などの説明。私にはちょっと難しかったが、科学やS…
|
|
|
姑獲鳥の夏
|
|
ゲレゲレ/謎を解明したい欲求はもどかしく広がっていく
|
物語は、鬱病を煩ったこともある内向的な主人公のひとり、関口の視点で語られる。関口自身は表向きは謎の答えを解明しようと努力する。だが、本当は最初から謎の答えを知っていたのかもしれない。知りたくないという気持ちが強いために、真実から目をそむけ、彼の目は容易に開かない。だが、陰陽師京極堂の論理的な解明や、榎木津の示唆により少しずつ関口の迷妄は解かれていく。 関口は思い出したくないことを少しずつ思い出す。本文の中では一行おいて語られる一言か二言程度の関口の独白が衝撃的。そして、幻視ができるため最初からすべてを知っているはずなのに、多くを語らない探偵榎木津の存在もあり、謎の解明は引っ張るだけ引っ張られ…
|
|
|
夜を賭けて
|
|
ゲレゲレ/差別と憎悪の中で生き抜いた人たち
|
舞台は、昭和30年頃の大阪。広大な大阪造兵廠跡地から高価な鉄が掘り出されたところから始まる。後にアパッチ部落と呼ばれるバラック小屋の集落が、大阪造兵廠跡地のすぐそばにあった。 在日朝鮮人であるだけで日本人から差別され、ろくな仕事につけない状況で、まじめに生きていくことができるだろうか。どん底の中で必死に生きようとする人たちは、追いつめられ窮鼠猫を噛むように生命力を爆発させる。そして、活劇のようなダイナミックなシーンが展開される。時には生命力が高じて犯罪につながる場合もある。犯罪のそもそもの原因は、日本人の心の狭さにもあったはず。その罪が取り締まられ、朝鮮人の信用はますます落ちる。朝鮮人を憎悪…
|
|
|
Z
|
|
ゲレゲレ/鬼気迫る拷問と殺戮のシーン
|
1945年太平洋戦争終戦当時の朝鮮の状況などかなりノンフィクション部分も多く書かれています。とにかく拷問や殺戮のシーン描写が精密で,読んでいるだけでも,殺される寸前の時間を味わっているような,深い不安と恐怖に陥ります。 この本は韓国人同士の拷問や殺戮の話が多いけど,当時,日本人は,それに倍する拷問,殺戮を行ったことは間違いない。私は,以前は韓国人がどうしてそんなに日本人を目の敵にするのか?と思っていました。この本を読んだ後では,もし自分の肉親が苦しめられ,家畜のように殺されたとわかったら,相手を許す気にはなれないだろうと,本のあまりにも悲惨な描写に感情移入したことで気づかされました。 ただ,…
|
|
|
睡魔
|
|
ゲレゲレ/みんな目先のお金にせっぱ詰まって生きている
|
人は目先のお金に困った時に勧誘されると,ねずみ講とわかっていても手を出す。親類,友達を販路にするねずみ講にはまりこむと,自分だけ抜け出すわけにはいかない。楽をしてもうかるはずの親になっても,実際はそうはならない。さらに子が倒れれば共倒れ。勧誘者は,自己実現を話していたのに,いつの間にか我欲の実現に変わっていく説得術のウソなど,フィクションの小説だが内容は非常にリアルだ。この本からヤンソギルにはまりました。
|
|
|
血と骨
|
|
ゲレゲレ/ふつうの人のエゴが生み出した化け物
|
主人公・金俊平はひどい人間である。酒を飲んで暴力をふるう。大金持ちになってもケチ。誰も信じようとしない。女は性の対象としては必要、子供も必要だが、絶対信用しない。気をゆるせる人はほとんどいない。型破りな行動と体力があり、極道さえも恐れる。 ただ、常識的な見方をした場合、少しだけいいところもある。比較的きれい好き、自分で手と時間をかけて料理を作る…ゲテモノ料理だが食べてみるととてもおいしいものもある。ケチな反面、節約もする。服を着飾ったりして見栄をはることは一切しない。そして、徹底した個人主義を守るためならば極道とでも戦う意志と体力がある。 多くの日本人たちは、金俊平とは逆の性格だろう。人と協…
|
|
|
血と骨
|
|
ゲレゲレ/理不尽さの中に生きている
|
餓死寸前になり汚い身なりをして浮浪する母娘を,自分は助けるだろうか。おにぎりのひとつも手渡しははしても,それ以上のことは私にはできない気がする。身勝手で暴力をふるう夫,耐える女,当然のように行われる朝鮮人に対する差別(小説の舞台は1920年代頃から),そして戦争。すべてが理不尽で胸が痛い! 帯には「人間のあらゆる欲望を体現した男」とあるけど,その男の話だけではありません。
|
|