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樒/榁 樒/榁
呑如来/読者サービスもたまになら良いとしましょう
 これは前提知識として『鏡の中は日曜日』を読んでおかないと笑い所で笑えず話にならないのだが、どうせなら『黒い仏』から読んでおくとより楽しめる。作品としては、小さくまとまっているというか、内輪受けという感が否めないがミステリー作家のファンサービスとしてはなかなか悪意が効いていて面白い。それにしても殊能氏はいつも遠くまで取材(旅行)に行っているようで羨ましい。  全文読む 評価する

鏡の中は日曜日 鏡の中は日曜日
呑如来/生きているということ
 殊能将之の作品の中で本書を初めて読む人にはイマイチかもしれないが、『黒い仏』『美濃牛』で探偵・石動戯作に親しんできた人にはまさに珠玉の一冊。少しでも詳しいことを書くとネタバレになってしまうので何も言えないが、舞台となった土地を現実に訪ねたくなるところは他の殊能作品と同様である。 参考書籍に大爆笑するも良し、女性の描き方に快哉を叫ぶも良し、とにかく楽しんで読め、そして作者に騙されているとわかりながらも感動させられる快作である。  全文読む 評価する

四月の屍衣 四月の屍衣
呑如来/ダルジールのロマンチック・アイロニー
 冒頭にパスコーとエリーの結婚式は出てくるものの、今回はダルジール一人を中心としたストーリー展開なので、パスコー好きにはちょっと物足りなくもある。だが、そのためにダルジールの孤独の輪郭はいつになくはっきりと描かれており、彼の感傷的な一面を知ることでシリーズヘの親しみは一段と増す。 ヒロインであり、容疑者であるボニーとのラブアフェアもなぜか重苦しく、エピローグにカタルシスがないところも実存を重んじるレジナルド・ヒルならではというところか。良い意味で、「暇つぶしにミステリーでも」と考える人には向かない小説である。  全文読む 評価する

秘められた感情 秘められた感情
呑如来/パスコーとエリーの恋人時代
 傑作である『骨と沈黙』『ベウラの頂』からこのシリーズを読み始めたため、遡って本書を読み、レジナルド・ヒル自身もダルジールシリーズを書きつづけていく中で成長しているということがよくわかった。物語の奥深さ、哲学性、引用や言葉遊びの妙、などどれをとっても、この時点ではまだ「ミステリー」という枠内での素晴らしさに留まっているように思われる。 そうは言っても、パスコーとエリーはまだ恋人時代ということで、喧嘩さえ微笑ましいし、エリーからのプロポーズの言葉は限りあるこの世を生きる我々すべてを感嘆させる。  全文読む 評価する

幸運を招く男 幸運を招く男
呑如来/ダルジール&パスコーシリーズとはひと味違った知的快楽
 レジナルド・ヒルの著作の中でも、ダルジール&パスコーシリーズとはまた全然違って、純粋にコミカルでテンポのよいストーリーを楽しめるシリーズである。とはいっても、主人公の探偵を黒人という設定にしたことで、人種差別の問題を読者に問いかけている点はヒルならではの正義感の表れと言ってよいだろう。女友達である弁護士のブッチャーとの掛け合いも楽しめる。 デスクの引き出しに猫を飼い、その愛猫ホワイティを救い出すためなら人間も差し置いてかけつけてしまうジョー・シックススミスの人間性は親しみやすく、猫好きでなくともついつい感情移入したくなってしまうだろう。ジョーがビールやウイスキーが好物の黒猫ホワイティと一緒に…  全文読む 評価する

伝わる・揺さぶる!文章を書く 伝わる・揺さぶる!文章を書く
呑如来/書くことは生きることだから
 この本、単なる文章論ではないところがとても素晴らしい。「自分はなぜこの文章を書くのか、書くことによってどうしたいのか」と自問を続けていくなら、それは既に哲学の領域だ。文章を書くことによって自分の人生を見つめなおし、書くことの原動力となっている根本思想を知ることは実は結構つらい作業でもある。評価してほしいだけの自分、相手に非を認めてほしい自分、できることなら事を荒立てず丸く収めたい自分…等々、利己的な自分の姿が明らかになってしまうからだ。 そしてだからこそ、感情のままに書くのではなく、論理的に、戦略的に、時間をかけて文章を書けと著者は諭す。そしてその指摘は、まるで善良なカウンセラーのように的確…  全文読む 評価する

冥途・旅順入城式 冥途・旅順入城式
呑如来/目を開けたままでも夢は見られるのです。
 起承転結もなければ脈絡もなく、感傷もなければカタルシスもない。そんな超短篇ばかりが集められたこの本を読んでいると、次第に目覚めていながら夢を見ているような、生きているのか死んでいるのかわからないような、奇妙な感覚に捉えられてしまう。 夢を文章化するのは非常に困難な作業だが、内田百間はそれをいとも易々と行っているようだ。解説で引き合いに出されてる漱石の『夢十夜』は確かに大傑作だが、量という点では百間も負けたものではない。幽玄の世界に遊びたいと思ったらこの本を読めばよい。  全文読む 評価する

百鬼園随筆 百鬼園随筆
呑如来/透明な目で綴られた心象風景
 百鬼園先生は、顔は怖いが文章は繊細で美しい。日本人として当たり前のように日本語を使ってはいても、正確な文章、理知的な文章、それでいて情感溢れる文章を書くのはとても大変なことだというのが、百鬼園先生の作品を読むとよくわかる。日記のようでいて日記でない、エッセイのようでいながら批評である、そんなテクスト群たちが集合したこの本は、ある意味「文章読本」と呼んでも差し支えのない面白さだ。例えば「手套」というテクストの透徹さなど詠嘆ものである。  全文読む 評価する

プールサイド小景・静物 プールサイド小景・静物
呑如来/日本が未熟だった時代の夫婦像
 今読むとかなり古めかしく思える作品群である。浮気をしながらも自分は悪くないと考えている身勝手な夫と、浮気されていることは薄々気づきながらも夫から愛されることだけを望む妻、などという図式は「男は仕事、女は家庭」といった男性原理がまかり通っていた時代のありふれた小景ではあったかもしれないが、現代の女性はそんな男とは初めから結婚などしないだろうし、そういう男だとわかればさっさと離婚するのが当然であるから、作品に感情移入もできないし心理描写がうまいと感嘆することも難しい。人が自分の若かりし頃を振り返るときのように「こういう時代もあったのだなあ」と気恥ずかしく感じさせられるのみである。とはいえ、この小…  全文読む 評価する

日本の「私」からの手紙 日本の「私」からの手紙
呑如来/日本の「読者」への手紙
 手紙という形式をとりながら、短篇集としての完成度も高いエッセイ集です。フランスの核実験ヘの反対表明としての手紙、天皇制の欺瞞を自己の戦争体験を通して問う手紙、ギュンター・グラスとの往復書簡、などなど、大江健三郎でなければ語れない語り方で様々な問題が提示されているのですが、それは読んでいる私たち自身の問題としても誠実に受けとめるべきものだと感じさせられます。小説というものが抽象的な意味での作者から読者ヘの手紙だとするならば、このエッセイ集はもっと具体的な、より身近な、われわれ読者ヘの対話ヘの呼びかけなのでしょう。このような仕方で物事を伝えることの出来る作家が同時代に存在するということだけでも、…  全文読む 評価する

「哲学実技」のすすめ 「哲学実技」のすすめ
呑如来/生半可な気持ちでは哲学し続けることは出来ないということ
 この本は内容自体が本当に凄まじい哲学道場となっており、今まで哲学的に考えたことのない人のみならず、多少は哲学的に物事を見る事に慣れている人までをも絶望させ混乱に陥れる。だから、安穏とした平凡な日常に留まりたいと考えている人や、出来るだけ楽に人生を送りたいと思っている人には全くお薦めできない。そのかわり、「自分は普通の人とはわかりあえない」「一応幸せなんだろうけど、このまま死ぬまで生きているだけで良いのだろうか」と何となく不安を覚え、悶々とした日々を過ごしている人にこそ読んでほしい。 「ああ、こんな風に真剣に生きているのは自分だけじゃないんだ」と思えるか、「いろいろ考えてると思っていたけど、ま…  全文読む 評価する

漱石書簡集 漱石書簡集
呑如来/誠実な思いと真摯な言葉
 漱石ほど真摯に人と人との関係や国の将来を考えている小説家は現在の日本ではどこにも見当たらない。一般人の間でも"癒し"がブームになって以来、「ダメな自分もそのままでいいんだ」という妙な開き直りが横行してしまい、自分自身を客観的に分析し、悪いところは改善していこうとする克己心すら失われているようだ。 そんなとき、漱石の残した言葉を読むと、本当の意味での優しさとにふっと手を触れられたような感じがして、心が洗われる。  気に入らない事、癪に触る事、憤慨すべき事は塵芥のごとく沢山あります。 それを清めることは人間の力で出来ません。それと戦うよりも、それを赦すことが人間 として立派なものならば、出来るだ…  全文読む 評価する

武器と女たち 武器と女たち
呑如来/男性が女性を「人間」としてありのままに理解し、受け容れている感動作
 副題に「エリー遍歴記(エリアッド)」とあるように、これはエリーの物語である。と同時に、これは男たちの中で働く女性警察官ノヴェロの物語でもあり、エリーの友人ダフネ、フィーニー・マッカラム、ウェンディ、といった現代を生きる女性たちの物語でもある。 本書は、「男のための女」ではなく、自我とプライドを持ち自分の人生を生きようと必死に格闘している女性たちへの讃歌だ。そしてこれが女性の手によってではなく、男性の手によって愛を持って書かれたという事実が何よりも感動と勇気を与えてくれる。しかし、考えてみれば、作中作『安心毛布』のプロローグの、   —従順で、目立たず、歌われることもなく—   女たちが長い航…  全文読む 評価する

甦った女 甦った女
呑如来/誰が彼女を裁けるのか?
 シリーズ12作目の本作では、パスコーとエリー夫婦の間の暗雲が悲劇的な調べを奏でていて切ない。だが感傷的になっている暇もなく事件は起こり、「冤罪」をめぐるダルジールとパスコーの真実探究の旅は我々自身をも熱中させてゆく。 しかも今回は、ダルジール警視がイギリスを発ってアメリカにまで渡ってしまうのだが、ここの描写で感心するのは、日本人からするとイギリスもアメリカも英語圏という点では同じように見えるのに、彼らの中では明確な区別があり、イギリス人からするとアメリカ人は理解不能な面が数多くあるという点がとても明確に伝わってくることだ。レジナルド・ヒルの小説は英国人の思考を理解するのにも非常に役立つという…  全文読む 評価する

暗号攻防史 暗号攻防史
呑如来/暗号の知的な悦び
 暗号と言えば推理小説または軍事小説、という時代は過ぎて、今やパソコンを通じて誰もが暗号に接するようになっている。だが、パソコンでは自分の知らない間に暗号化がなされてしまうので、内部でどんな変換が行われているのか、なぜ鍵を公開してあっても解読されないのか、実は全然わかっていなかったりする。 著者はそんな暗号の歴史を古い(そして易しい)順から詳しく解説してくれているので、数学に疎い人でもミステリーを読むより楽しめる本に仕上がっている。情報処理を学んでいる人ももちろんだが、ミステリーや歴史好きの人も読んでおきたい1冊だ。  全文読む 評価する

幻の森 幻の森
呑如来/在ることの不思議
 自分の来歴、それはアイディンティティを保証する石の砦だ。だが、それが脆くも崩れ去ったとき、真実を知ることは今までの自分を否定することに等しい。 パスコーの孤独、それはパスコーの恵まれない家族関係に起因している。そして冒頭で起こる祖母エイダの死によってもたらされた来歴不安は、悪い夢のように彼に取りついて離れない。並行する事件がウィールドとダルジールの視点から描かれているものの、本書のメインテーマはパスコーの自分探しに他ならない。 だが、先祖の秘密を探る旅も、よくあるトラウマ小説のように感傷的ではなく、単純で退屈な癒しと再生の物語にもなっていない。この極めて中立的な身振りこそ、レジナルド・ヒル哲…  全文読む 評価する

完璧な絵画 完璧な絵画
呑如来/完璧な構成
 レジナルド・ヒルは本当に語りの名手だということが、シリーズ13作目の本作を読めばわかる。緊張と弛緩、真面目さとユーモア、この絶妙なバランスによって構成された高級料理を食べてしまった後では、単調なファーストフードなどとても味わえたものではない。「善いやつ? 悪いやつ? それとも、醜いやつ?」、の誰が撃たれたのか、という不安を抱きながら読んでいた時間を思い出しても、自分がいつからこのシリーズをこれほどまでに愛するようになっていたのか、と感慨深い。ウィールドの孤独に感情移入できるのも本作の味わいの一つであろう。  全文読む 評価する

妖怪馬鹿 妖怪馬鹿
呑如来/おろちの登場には笑いました
 この本ではたしかに妖怪談義も面白いのだが、何より感嘆させられるのは、京極夏彦氏による有名漫画の画体を忠実に模写したパロディ画の方である。水木しげるに始まり、楳図かずお、大島弓子、山岸涼子、つげ義春、松本零士、手塚治虫、そしてみうらじゅん等々のパロディ漫画は本当に愉快である。 そして、人生の充実度は、のめりこめる対象の有無とそれを追求していく熱意にかかっているのではないか、とも改めて思った。  全文読む 評価する

Yの悲劇 Yの悲劇
呑如来/善悪の彼岸
 傑作である。といっても、それは意外な犯人や犯人を導き出す論理の秀逸さによるものではない。「罪と罰」を検証する哲学性と、「人が人を裁くことは出来るのか」という判断を読者に突きつける作者の態度が素晴らしいのだ。ラストの不気味さは、神なき世界に住む人間の“善悪の彼岸”を示しているように思える。  全文読む 評価する

Xの悲劇 Xの悲劇
呑如来/論理だけでは物足りない
 ドルリー・レーンの推理が冴える本作は、確かに傑作ではあるのだが、文章に面白みがなく 登場人物のキャラクター設定もありきたりで、現実的がどうかを別にすればトリックも意外ではない。 純粋にロジックを楽しむというのであれば、物理や哲学の本を読めばいいのだし、現代のもっと深みのある幅の広いミステリー小説を知っている身には、作者の数学的な解答を導こうとする意志ばかりが目立ちすぎて物足りない気がする。が、しかし、現代から見てこういう批判をするのはちょっと酷かもしれない。  全文読む 評価する

ふさわしき復讐 ふさわしき復讐
呑如来/赦しと和解の物語
 これはミステリーというより恋愛小説と言った方がしっくりくる作品だろう。そして本作最大の見どころはリンリー、デボラ、サイモンの三角関係がどのように決着するのかにある。そのメインディッシュに、サイモンの妹であるシドニーとジャスティン、リンリーの弟ピーターとサッシャ、リンリーの母ドロシーとロデリックの恋愛模様が興を添える。恋愛における心理の複雑さ、傷つかないために自分で自分に嘘を重ねていく愚かさ、等の描写には頷けるところが多い。 また、脇で、リンリーとその母、リンリーとピーター、デボラとその父、サイモンとシドニー、という家族間の和解の物語がそれぞれに演じられていく様子は、「赦し」という人生における…  全文読む 評価する

十角館の殺人 十角館の殺人
呑如来/ステレオタイプな青春
 元ネタであるクリスティの<a href="/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi/?aid=&bibid=00873606&volno=0000" target="_blank">『そして誰もいなくなった』を知らなければ十分楽しめない、というより、有名な古典ミステリは既読であることを前提として(誇示して)書かれた小説である。登場人物の描き方は稚拙だし、大学生の合宿で女性だけが炊事をしている点も役割意識の蔓延っていた時代を感じさせ興醒めだが、普通のミステリ研究会の学生が書いた自慰作品に比べれば面白いことは面白い。 だが、どうせ哲学性も何もない娯楽小説を書くのなら、下手なお涙…  全文読む 評価する

ヒッコリー・ロードの殺人 ヒッコリー・ロードの殺人
呑如来/ポアロでなくとも、もう似非心理学にはうんざりなわけで
 これは何しろ訳が悪い。ポアロの会話の訳し方など、原作に愛を感じてないとしか思えない。まあそれは置いておいて、内容の方は通俗的な心理学に対する嘲笑になっており、なかなか興味深い。ポアロが学生たちのトラウマを媒介とした恋愛にうんざりしている箇所など、現代人の我々の方が共感できるくらいだろう。 結局心理学など他人の内面を分析して彼の優位に立ちたいという権力欲でしかないし、トラウマを癒す為の恋愛など自己愛に他ならぬ、という事実をこの小説からも得ることが出来る。  全文読む 評価する

そして誰もいなくなった そして誰もいなくなった
呑如来/狂った論理
 冷静で短調な語りが効を奏し、クリスティの作品の中でも異色の恐怖ストーリーに仕上がっている。犯人の見当はすぐについたが、犯人と殺人の動機がわかってもますます怖さが増すのみで、ポアロものにあるようなカタルシスは全くない。この理不尽さは映画「バタリアン」にも匹敵する。 邦題の素晴らしさも手伝って、わが国でも「ミステリ史上の大傑作」という地位は揺るぎないものになっているが、よく読めば読むほど、奇妙で狂った感が増幅してゆく変な小説だ。  全文読む 評価する

ベウラの頂 ベウラの頂
呑如来/悲しい子ども
 愛する者と、愛されたいと願う者。親と子の関係はそれが絶対的なものである故に神々しく、そして哀しい。愛する子を失ったとき、愛してくれるはずの親からそれを与えられないとき、人の心は崩壊し闇に落ちる。 ダルジール警視シリーズの中でも本作はひときわ重い。親と子と血の問題、という普遍的なテーマが扱われているからであろうか。作者は視点の移動を駆使して物語が重層的に奏でられるよう配慮しており、その試みは成功している。ベッツィ・オールグッドの筆記録の文体も巧みだし、説話「ニーナとニックス」の恐ろしさも通低音として効いている。だが何といっても主旋律であるマーラーの「亡き子を偲ぶ歌」なしではこの作品は語れない。…  全文読む 評価する

クッキング・ママの依頼人 クッキング・ママの依頼人
呑如来/食欲増進ミステリー
 シリーズ7作目の本作も、今までと手法、文体ともに全く変化がないので、コーヒーを飲みながら安心して読むことができます。今回は、あの憎きジョン・リチャードが殺人の容疑者になって窮地に陥るところが見どころ。しかし、こんなに嫌な男と関わり続けるゴルディもゴルディだと思うのですけどね…。いくらアーチのためとはいえ自業自得という感じがしないでもありません。それに両親が離婚した子供は、普通引き取られた方の親の肩を持つものなのに、いつも父親に加勢するアーチの振る舞いは設定として納得できない気が。アーチの頭の悪さはちょっとうんざりです。 とはいえ例え途中に何があっても、最後には丸く収まるところなど水戸黄門と同…  全文読む 評価する

ベンスン殺人事件 ベンスン殺人事件
呑如来/あまりに探偵小説的な
 探偵的な、あまりに探偵的なファイロ・ヴァンス。それはまさに初めて読んでもその既視感に呆れかえるほどのステレオタイプなのである。 とはいえオリジナルがコピーに負けてもそれは彼のせいではない。「ワトスン役さえ務められないヴァン・ダインなどただの語り手にしておけば良かっただろうに」という批評もウンベルト・エーコの『開かれた作品』やロラン・バルトの<a href="/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi/?aid=&bibid=00443552&volno=0000" target="_blank">『テクストの快楽』を読んでなければ生まれなかったかもしれないわけだから。 しかし…  全文読む 評価する

死にぎわの台詞 死にぎわの台詞
呑如来/年寄り笑うな、行く道だもの
 人は誰でも歳をとり、やがて死ぬ。しかしそのことを常に頭に置いている者は少ない。老人を無用の長物と蔑みながら、自分がその蔑まれる立場になることを想像しもしない愚か者のなんと多いことか。だがレジナルド・ヒルはそのことを大仰に嘆きもしないし、若者を啓蒙しようと熱弁をふるうこともない。ただその悲しい現実を客観的に描写するだけだ。そしてその態度こそ、作者の生に対する誠実さの表れだと言ってよい。 3人の老人の死を扱う本書では、老人ホームの実態、痴呆と介護、独り暮らしの老人の寂しさ、といった重いテーマが取り上げられており、読んでいて身につまされる場面も多い。また、ダルジール警視が飲酒運転及び過失致死の罪を…  全文読む 評価する

クッキング・ママの事件簿 クッキング・ママの事件簿
呑如来/結婚式だと言うのに…
 シリーズ第4作目にしてようやくゴルディとトム・シュルツの結婚と相成るわけですが、さすがはジェットコースターミステリ、牧師は殺されるわ、花婿は犯人に拉致されるわと大変です。しかも周囲の人たちはキリスト教徒とは信じられない意地悪ぶり。アメリカ人に限らず、大衆は退屈な平和よりも争いやゴシップを好むということなのでしょうか。でも何があっても結局はハッピーエンドが訪れるので、このシリーズは安心して読めるわけなのですが。 それにしても、ジュリアンの作る料理といい、トム・シュルツのレシピカード(チョコレート・トリュフ・チーズケーキ!)といい、このシリーズの男性陣が料理好きなのは素晴らしいことです。  全文読む 評価する

満潮に乗って 満潮に乗って
呑如来/ありがちな設定とありがちな終結、だけでもない
 莫大な遺産を相続したうら若き未亡人と、故人の財産を当てにしながら生きてきた血縁者たちの対立…いかにもありがちで、ミステリでなくとも事件が起こらなくては申し訳ないような設定である。またクリスティの小説で遺産の絡まない事件は無いと言ってもよいほどだから、いい加減飽き飽きという感もある。 しかし、そもそもポアロ(クリスティ)の場合「動機のない殺人はない」という大前提をもとに全ての推理を編み上げているので、動機の発生しないような状況設定では物語自体が成立しないといっても過言ではない。ということは、ポアロの活躍を楽しみたい者はその設定の紋切り型も甘んじて受け容れなければならないということになる。 とは…  全文読む 評価する

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