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日本海軍400時間の証言
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萬寿生/NHKスペシャル「日本海軍400時間の証言」を見逃したのは残念
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NHKスペシャル「日本海軍400時間の証言」(二〇〇九年八月放送)の担当者たちが、制作と放送にあたり、何を考え、そして取材現場で何を求め続けてきたのかを、書籍化したものである。残念ながらテレビ放送は見ていないが、この本を読んで見ておけばよかったと後悔している。 一九八〇年から一九九一年まで、分かっているだけで一三一回にわたって、ほぼ毎月、海軍士官のOB組織である「水交社」で開かれていた、太平洋戦争当時軍令部や海軍省に所属していたエリート軍人による、秘密の会議である「海軍反省会」の、記録テープを基にした報道番組だそうだ。その趣旨は、「「命じられた側」ではなく、「命じた側」に迫る」、「反省会で…
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イスラームから見た「世界史」
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萬寿生/新たな認識を得ることができた
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著者はアフガニスタンでムスリムとして育ち、奨学金を得てアメリカの高校に留学し、大学に進んだのちに教科書の執筆に従事するようになった。歴史の教科書作成に携わった経験はあるが、歴史家ではないという。 歴史は、その時々の各地域や各階層の人々の間で紡ぎ出されるものである。その縺れこんだかたまりをときほぐし、縦糸と横糸として織り込んでいかなる文様をうかびあがらせるか、それが歴史家の仕事であろうか。そのような意味では著者は歴史家であり、本書では(日本においては)これまでには見られない新たな文様が描かれているといえよう。イスラームと西洋の両方の視座から、相対的に客観的に歴史を見ている。特に近代から現代にか…
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文明を変えた植物たち
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萬寿生/本書は入門書
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コロンブスのアメリカ到達以降にアメリカ大陸からヨーロッパを経由して世界中に伝搬し、その食糧事情や文化、社会に大きな影響を与えた植物について、ジャガイモ、ゴム、チョコレート(カカオ)、トウガラシ、タバコ、トウモロコシ、の六種を文化史的な面を中心に紹介している。世界的な影響を与えたアメリカ大陸が原産の植物としては、この他にサツマイモ、カボチャ、トマト、インゲン、ピーナッツ、ヒマワリ、パイナップル、カシューナッツ、チクル(チューインガム)、もあるが、何故前記の六種を選択したのかははっきりしない。著者の経歴(明治製菓に勤務)とも関連があるらしいが。 新大陸から伝えられたジャガイモやトウモロコシのおか…
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生物のなかの時間
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萬寿生/現代の生物学にはたくさんのおもしろいことがある
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理化学研究所発生・再生科学総合研究センターに所属する世代の違う三人の研究者による鼎談である。同じ部署で発生に関する研究を行っていても専門分野はそれぞれ異なるそうである。「生命とは何か」「情報と時間」などといった大きなテーマについて、「細胞の時間」「発生の時間」「形の時間」「進化の時間」「脳の時間」といった生物学の多種多様な分野について、縦横無尽に話しあっている。 次から次へと話題になってくる事項の間に、なにやらネットワークのようなつながりが見えてくる。素人目にもそれらの関連性がなんとなく感じられる。世代と研究分野の異なることによる相乗効果か、現代の生物学にはたくさんのおもしろいことがあるのだ…
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近代日本の中国認識
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萬寿生/近代日本の危機意識と中国観の変遷の関連が理解できる
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本書は、ほとんど書き下ろしに近いとはいえ、もともとは「かわさき市民アカデミー」での講義を原形にしたものという。そのためか、概論あるいは総括というようなことのようで、ことさら新しい知見が示されているようではないが、愛憎や敬愛と侮蔑が複雑に交錯する日本人の中国への思い入れが、よく整理されまとめられている。 江戸時代の儒学と国学の中国イメージから始めて、明治維新以降日中戦争までのそれぞれの時代の知識人たちが中国をどのように捉え、その中国認識がどのような意味をもち、日本の思想にどのような影響を与えたか、整理されたかたちで理解できる。各時代の知識人たちの論説、主張を時代ごとに紹介している。が、さらに、…
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天魔ゆく空
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萬寿生/織田信長以上に興味深い人物
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戦国時代の始まりは、「応仁の乱」と昔日本史の授業で教わったと思うが、近年では「明応の変」からというのが定説だそうだ。本小説の主人公、官領細川政元が足利将軍の首を挿げ替えて下克上の嚆矢となった。比叡山延暦寺を焼き討ちし、一揆を殲滅し、家臣により暗殺されてと、先んじること七十年にして織田信長の手本のような生涯である。 織田信長に関しては近年新たな史料が発見されたりして、それらを加味した何冊かのおもしろい小説が書かれている。細川政元についても新しい史料が見つかったのであろうか。それとも従来からの史料について、著者が解釈しなおしたのか。どちらにしてもこれまであまり注目されてこなかった時代と人物につい…
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ケアの社会学
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萬寿生/歴史上未曾有の高齢社会に生きるために知り考えておくべきことは?
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高齢者介護をする側される側のどちらの当事者にもなりうる状況が近付いてきている。歴史上未曾有の高齢社会となり、誰もが遭遇する可能性が高いにもかかわらず、高齢者介護について考えることも知ろうとすることもしてこなかった。目をそむけ見ようとしてこなかった。親、伴侶、自分自身の老後の世話をどうするのか、どのような選択肢と負担があるのか、を考えておかなければならないし、情報も得ておかなければならない。本書で目を見開かせられ、視野も広がったと感じる。 社会学とはこのような分野の研究をも行うものなのかと、あらためて認識した。大学の教養課程での社会学の講義には期待外れの思いを持ったものだが。社会学あるいは社会…
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つぎはぎ仏教入門
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萬寿生/仏教についてよく知らない現代の日本人にとって良い入門書
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著者は仏教や哲学については素人だと言っているが、なかなかの見識が示されている。仏教についてよく知らない現代の日本人にとって良い入門書となっているだけではなく、問題意識を持っている若いあるいは少壮の僧侶にとっても良い参考書となるであろう。彼らにとって問題提起の本であり、仏教についてなにを考えなにを調べていくべきかの示唆が与えられよう。 「大乗は仏説にあらず」という論証は、現代の仏教哲学に多少でも関心のある者にとっては、常識である。しかし、仏説という主張に全く根拠がないのではなく、釈尊の教えを拡大解釈しとたともいえようか。いや拡大解釈ではなく、もともと釈尊自体に小乗と大乗の両方の考え方があったの…
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ソーラー
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萬寿生/このような人物が小説の主人公になりうるものだろうか?
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このような人物が小説の主人公になりうるものだろうか?。だが現に成り立っている。背は低く頭の髪は薄く太っており、食欲と性欲の欲望には逆らえず、狡猾で好色な、若い時にはノーベル物理学賞を受賞したが今では研究意欲もなにもなく、過去の栄光のおかげで職にありついているイギリスの初老の物理学者。 この本を読む気になったのは、研究意欲のなくなったもとノーベル賞受賞者の科学者が主人公だというので、どんな内容でどのような話の展開になるのかと興味を持ったからである。 自分と五番目の妻の互いの浮気。妻の浮気相手達とのやりとり。その一人の事故死を他殺にみせかける工作。妻の浮気相手であり部下でもあった若手研究者の発明…
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沙門空海
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萬寿生/空海の実像が描きだされている
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本書のもとは一九六七年六月発行の筑摩叢書である。司馬遼太郎の「空海の風景」が一九七六年であり、本書もその執筆の参考にされたことであろう。筑摩叢書で一度読んだ記憶があるが、再度読むことにした。東京国立博物館で「空海と密教美術」展を見たことによる刺激もある。 空海ほど伝説の多い人はない。今昔物語などのように平安時代から既に伝説ができあがっている。宗門においては神格化されている。現代でも超能力者の本家本元のように扱われている小説や漫画が書かれている。 本書の著者たちは真言宗の僧籍にあるとともに仏教学者である。資料を選別し、史実と推定されることを史料のなかから抽出し、空海の伝記を構成している。おもに…
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ハッブル望遠鏡宇宙の謎に挑む
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萬寿生/美しい。人が星の写真を見て、あるいは直接夜空の星を眺めて、美しいと感動するのはなぜだろうか
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星や天体にもっとも関心があった時期は小学生の高学年であった。その当時見ることができた図鑑の写真から見れば、この本の写真は驚異的に鮮明で美しい。人が星の写真を見て、あるいは直接夜空の星を眺めて、美しいと感動するのはなぜだろうか。子供だけではない、今でもそう感じる。子供時代とは違って、星や宇宙の構造と進化などのより物理的な事項に関心が移ってはいるが。 現在はX線からマイクロ波まで広帯域の周波数で観測が行われていが、ハッブル望遠鏡は主に可視光と赤外線の領域で観測しているようだ。大気の影響がない分明瞭な写真が撮れ、多くの新発見があった。本書ではその一部がNASAの公開資料の写真を紹介する方法で提示さ…
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宇宙の誕生
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萬寿生/大人も子供もそれぞれに自分なりの読み方ができる
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ルーシーとスティーヴン・ホーキング父娘の共作の三巻目。最終巻だそうだ。前二作の「宇宙への秘密の鍵」、「宇宙に秘められた謎」の続きであるから、そちらを先に読んでおいた方がよい。ジョージという少年を主人公にした冒険SFであると同時に、物語をとおして子供たちの天体物理、宇宙物理への興味を引き出そうとしている啓蒙書でもあることは同じだが、内容はレベルアップしている。まず、ところどころに挿入されている一流の物理学者が解説している科学コラムや科学解説の項目は、宇宙の始まりと進化についての現代物理学の最先端にかかわるものである。相当噛み砕いて書かれてはあるが、小学生にはチョット難しいのではなかろうか。物語…
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バウドリーノ
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萬寿生/娯楽作品として一級品、堪能できる
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映画「薔薇の名前」は見たが、小説や学術書をふくめてウンベルト・エーコの著作を読むのは初めてである。文芸作品と娯楽作品の融合といったところか。いろいろな意味で面白い。いずれ映画化もされることであろう。娯楽作品として一級品であるから。キリスト教神学や中世ヨーロッパの歴史に関する知識があれば、さらに面白く読めるのだろう。著者の蘊蓄が垣間見られるし、喜劇的なにおいも感じられる。ほとんど虚構にしても、中世における希代の嘘つきの物語なのだから。著者自身の出身地のイタリア北部の都市の創設伝説かなにかをヒントにして書きはじめたのではないか。少しはあるいはかなりの史実があるのかもしれない。主人公の名前自体も実…
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いまファンタジーにできること
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萬寿生/著者の見解に賛同
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作家と読者の両面からファンタジーを考察している、評論集である。8編の論考が載っている。スピーチを文書化したものもある。論理や見解は明快で、軽薄なところがない。幅広く深く考究している。学者一家の中で成長し生活している背景がうかがえる。ここに書かれているファンタジーや児童文学に対する著者の見解には賛同する。 蛇足だが、SF小説『闇の左手』『所有せざる人々』『風の十二方位』などには、よく理解できないところもある。一方、ファンタジーや評論には理解し難いところはない。
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紫式部の欲望
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萬寿生/このように読みとくやり方もあるのかと、納得するやら感心するやら
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紫式部日記を断片的に読んだときにはびっくりした。赤染衛門をのぞいて他人の悪口雑言だらけであった。紫式部にたいしては臈たけた奥ゆかしい人と独り合点で想像していたその像が、あっけなく崩壊した。嫉妬深い底意地の悪いおばさんという感じ。善くも悪くも才能を持て余す鬱屈した女性である。そういった女性であったからこそあれだけの物語が書けたのでもあろうが。 紫式部日記に現れる女性像を受け入れて、源氏物語を読みなおすとどうなるか。当時の生活環境などの背景も考慮して、紫式部の女性としての思い、感情、考えが源氏物語のどこにどうもりこまれ書きこまているのか。このように読みとくやり方もあるのかと、納得するやら感心する…
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偏愛的数学
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萬寿生/幾何学のおもしろさに目覚める人もでてくるだろう
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高校の幾何で証明問題を解いたものが二、三あるものの、平面幾何学のなかでももっと高度のものばかりが紹介されている。第一巻めと同様に証明はない。証明がないぶん、ただ眺めるだけで気楽に図形の奇妙で不思議で美しい関係を堪能できるであろう。 数学もふくめ学問とはおもしろくたのしいものである。おもしろいとかたのしいとかと思うには、興味や関心がなければならない。興味や関心をもつには、なぜだろうかと疑問を持つのが前提になる。なぜだろうと思うには、奇妙だ、不思議だと感じなければならない。 この本には、奇妙だ、不思議だと感じる図形がたくさん紹介されている。確率に関する意外な話もふくめ、感覚や直感とは異なること…
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偏愛的数学
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萬寿生/数学嫌いになりかかりの小学生や中学生にとって、踏み止まるきっかけになる
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整数論の分野の本であろう。自然数の間の不可思議、奇妙奇天烈、クイズのような、興味深いいろいろの関係が紹介されている。証明などはいっさいないから、数学嫌いの人でもおもしろく読めるだろう。そうはいっても完全な数学嫌いになってしまった人には、数字の間にどんな関係があるからといって何がおもしろいのか、ということになるのかもしれない。一方、まだ数学嫌いになりかかっているばかりの小学生や中学生にとっては、踏み止まるきっかけになるかもしれない。 数の間に存在するいろいろな関係が紹介されているが、それらの関係がなぜあるのか、その証明が数学者でもできないものもある。それらの数字を並べて書くと美しさを感じるもの…
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「持たざる国」の資源論
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萬寿生/注目すべき論考
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「はじめに」に本書の目的、意義、特徴、論点が著者自身によって、まとめられている。この本の主題は、そのときどきの時代の文脈の中で形成された日本人の資源観である。今日の資源観を支配している「原料・エネルギー確保」とは違った、他の有望な考え方が過去の日本で模索されていた。それらの考え方がなぜ採用されなかったのか、それを解析することが今日の資源問題を考える頼りになる出発点になる。 「持たざる国」の資源問題について、過去に時代を先取りするような勧告や提案があった。そのような活動をした政府組織があった。なぜその活動が実際の行政に反映されなかったのか、その歴史の教訓を学ぶことは、遠回りに見えるとしても、将…
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道元「小参・法語・普勧坐禅儀」
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萬寿生/座禅は悟りを得るための手段ではなく、悟りそのもの仏道そのもの
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初心者にたいして説かれた「普勧座禅儀」は理解しやすいほうである。次いでいくらか理解できるのは、「法語」である。修行僧に対する時節ごとの訓話・訓示である「小参」は、禅問答の引用も多く理解できない。 「普勧座禅儀」は道元が南宋より帰朝した初期の頃に、座禅の意義とやり方を一般向けに解説したもののようである。もっとも原文は四六駢儷体の漢文であるから現代の日本人の大部分の人には読めなくなっているが。現代語訳や解説を読むと素人向けに基本的な内容が書かれているようだ。 「法語」は入門者や在家の求道者にたいして与えた質問への回答や教示である。自己の正伝仏教にたいする自信もうかがえる。ひたすら正しい仏教を求め…
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錯覚の科学
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萬寿生/本書によって、おおいに反省する機会がたっぷりと与えられよう
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「おわりに」「訳者あとがき」「解説 脳トレ・ブームに騙されるな!」に本書の内容と特徴がよくまとめられている。これらを先に読んでもよい。本文の内容が理解しやすくなるだろう。本文を読んだ後でみれば、書かれていることに同感することだろう。 『私たちのあいだにいるゴリラ』という実験心理学の論文—ビデオを見てバスケットボールのパスを数えていると、ゴリラが出てきて胸を叩いて通過しても、半数以上の人がゴリラに気づかないという実験—を発表した心理学者たちのてになる著書である。 「注意の錯覚、記憶の錯覚、自信の錯覚、知識の錯覚、原因の錯覚、可能性の錯覚」という、人間の脳の機能や進化にともなう心理的問題を具体的…
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中国嫁日記
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萬寿生/面白く楽しく三回すみからすみまで読みました
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40歳代の中年男と20歳代の若い中国人の嫁さんとの日常生活におけるカルチャーショックやギャップというものを、四コマ漫画で表現したものである。二人の愛情がなんとなくもれ滲み出ているようで、微笑ましくもあり暖かみもある。絵がいいです。暖かみと和みがあり、柔らかい。作者自身は自分を「オタク』と称していますが、ウィキペディアによれば多才な人のようです。 この二人は自分たちの行動や考え方を客観的に見ていますね。自分たちのことを客観的に観察できまた笑いとばせるということは、なかなかできないすごいことです。今後も二人仲良く御幸せに、と応援したくなります。 四コマ漫画以外もいろいろ書かれています。面白く楽し…
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ライオン艦長黛治夫
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萬寿生/規格はずれの日本海軍将校の第二次世界大戦における記録
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個性的で闘魂溢れる日本海軍将校の第二次世界大戦における記録である。いろいろな意味で規格はずれの人であったようだ。参謀や教官の経験もあるが、第一線での実戦部隊の指揮官・艦長として能力を発揮し、自分でも戦闘指揮官と自己規定していたようだ。そのためか戦後特に評価の高い米内光政、山本五十六、井上成美については批判的である。 歴史の評価は難しい。どのような記録を史実として採用するのか、判断に見識が問われる。記録には書いた人の立場や考えが自ずと反映されるものであるから、記録とはその人から見た事実である。他の人から見ればまた違って見える事実がある。太平洋戦争における「航空主兵・戦艦無用」が正論という考えも…
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諸葛孔明
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萬寿生/簡潔明瞭な伝記。あらためて諸葛孔明に魅力を感じた
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著者は、旧制松山高校、新潟高校、新制新潟大学、国士舘大学の名物教授であったという。専攻は東洋史で、一般向けの著書もいくつかあるそうだが、寡聞にして今回のこの本で初めて知った。 内容は題名どおり、「諸葛孔明」の行迹である。日本人に人気のある悲劇的な名軍師であるが、残された記録や資料は少ない。それらの史料を詳細に読みとき比較参照し縦横にまとめ、簡潔明瞭な伝記に仕上げている。背景となる三国時代の政治状況もわかりやすく簡明に紹介してある。飾り気のない澄んだ文章であり、学識のみならず、文章力、表現力も優れている。直木三十五の実弟であるというが、分かりやすく読者にうったえるような書き方がある。いくつかの…
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日露戦争陸戦の研究
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萬寿生/どの記録を重視するのか、どれを私見をまじえない客観的な記録と見るのか、評価するのはむずかしい
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史実というものは、できるだけ多数の記録を比較参照して、何が真実かをあるいはより真実に近いかを、明らかにする必要がある。日露戦争の遂行においては第二次世界大戦の軍部の行動に比較し、政軍の協調など理想的であったと思われてきたが、そうでもないらしい。スタッフとしての高級司令部参謀による現状無視で理想論的作戦立案という無能さかげんを、ラインである軍司令官以下の実戦部隊の努力と苦闘で補完したというのが実際のところであるらしい。現在の日本社会のあらゆる組織で見られる状況が、日露戦争のときから続いている、というのが本当らしい。 記録というものは、それを書いた人の立場や見方が反映されている。その点を考慮し、…
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力と物質
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萬寿生/自然科学においても歴史を学ぶことは、理解を深める最善の方法の一つ
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ファラデーの講演というと「 ロウソクの科学」が有名だが、この本も ファラデーのクリスマス講演の速記録を本にしたものである。 エネルギの概念が確立していない約150年も前の講演である。現時点から見れば古くさく見えるのはやむを得ない。しかし、自然科学においても歴史を学ぶことは、理解を深める最善の方法の一つである。マックスウェルの電磁方程式のように完成された姿を見ているだけではなく、その成立過程を見ることは物理的本質を把握するのに役立つ。この講演は青少年を対象にしたものであり、興味を引くような実験がいろいろとくりだされている。重力、熱、化学反応、電気、磁気、それぞれの力の示す現象や相互の関係を目で…
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昔も今も
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萬寿生/軽妙洒脱、一種の喜劇
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ニッコロ・マキュアヴェリとチェーザレ・ボルジアとの対決、書くのは世界の文豪サマセット・モーム。ウーム、唸るしかない。イタリアが小国家に分裂していた時代、西暦1502年の都市国家の政治的対立をめぐる権謀術数の対決と人妻をものにしようとする色恋の駆け引きとの組み合わせ。塩野七生の時代小説と比較すれば、作者の創作になる虚構の部分がより多いだろうが、史実にそって物語を構成展開し、対話の場面と対話の内容とを作り上げる。対話のやり取りが面白い。後に権謀術数の代名詞となったマキュアヴェリとイタリア統一を目指す冷酷非情なチェーザレ・ボルジアとの対話だけではない。その対話は、丁々発止のやり取りだが、他の人々との…
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コニー・ライオンハートシリーズ
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萬寿生/たった四巻で終わるのは残念
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第一巻を読んだ時感じたように、このシリーズがたった四巻で終わるのは残念である。巻をおうごとにより面白くなってきていることでもあるし。続編を書けない展開とはなっていないから、更なる作品を期待したい。続編の伏線になりうる記述もあるし、意味深な新たな登場人物がいる。今回も新しい人物、神秘動物、不思議な能力が多数登場してくる。思いがけない場面で、予想外の人物も出てきて、その行動に驚く。思い出してみれば、前巻にその伏線は書かれたあったのだが。 主人公と敵役との直接対決(対峙と戦い)は、予想外というか、予想どおりというか、なかなか示唆にとむ内容と展開となった。第三巻のときにも述べたが、ユング派の深層心理…
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コニー・ライオンハートシリーズ
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萬寿生/複雑な心の多層性の記述と個性的で多彩な脇役の登場
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動物たちとの精神感応能力を持った少女を主人公にした、少年少女向けのファンタジーの三巻目であるが、正邪や善悪といった二分法では理解できない複雑な心の多層性といったことについて、考えさせられた。この本の直前に、「知性誕生」と「ダンゴムシに心はあるのか」という脳科学や心の科学に関する本を読んでいたせいもある。読書の順番にも不可思議な因縁を感じる。ユング派の深層心理学者で心理分析家の故河合隼雄氏にこの本を読んでもらい解説してもらいたいとも思った。興味ある意見が聴けただろう。 今回は主人公コニーと悪の元締クレルボとの戦いの場面は最後に少しあるだけである。主人公の心の中にあるものと、主人公の周囲の人々や…
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井筒俊彦
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萬寿生/智の巨人の思想遍歴と学問経歴を紹介
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井筒俊彦は南方熊楠と劣らぬ智の巨人である。二十以上か三十以上の多数の言語を理解し資料を原文で読むのを原則としていることや、多くの論文を海外でも発表していることなどが共通なだけではない。その研究分野の広さと深さに唖然とし、呆然と眺めているしかない。 井筒俊彦は哲学を主として学問の対象としているため、南方熊楠の著作よりもより読むのが難しい。しかしいつまでも立ち竦んでばかりもおられない。山は高いだけ、谷は深いだけ、より少しでも歩み寄ってみたいものである。 この本は、井筒俊彦の思想遍歴、学問経歴を綴り、紹介している。どのような人からどのような影響を受け、どのような人にどのように影響を与えたかも、記述…
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昭和天皇
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萬寿生/集大成的なまとまりと充実した内容
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新書判ではあるが、これまでに明らかになった資料をもとに、昭和天皇に関する研究として集大成的なまとまりと充実した内容をもっている。東宮御学問所の教育、皇太子時代の欧州旅行によって、どのような政治思想形成がなされたのか、その結果としてどのような理想と責任感を持って天皇として職務を行ってきたかが、その仕事ぶりが、浮き彫りにされている。旧でも新でも憲法に則り立憲君主としての義務と責任を生真面目に遂行しようとして、孤立した姿がある。 「昭和天皇の政治思想の特色は、儒教の徳治主義を基盤としているだけに道徳主義的な色彩が強いことである。天皇は、国家において、そうした信仰や信念に相当する役割を果たしてきてお…
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