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ありえない!?生物進化論
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king/科学的方法論のケーススタディ
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タイトルがこれなもんだからスルーしている人も多そうだけれど、これが実によくできた本で、ある程度偶蹄類に近い仲間だと考えられていた鯨は、実は偶蹄類そのもので、もっとも近縁なのはカバだった、という発見を導き手として、分岐分類学という生物分類方法の話を絡めつつ、いかにして定説は書き換えられたかの経緯を追うとともに、仮説の証拠力、推論方法、使える根拠と使えない根拠の判別などなどの、科学的研究における仮説の実証と反証の具体的プロセスを基礎から細かくかつ平易に解説していくという驚くべき本格派な入門書となっている。カバと鯨の話、鳥は恐竜の仲間なのか、鳥はどうやって空を飛ぶようになったのか、化石という証拠をど…
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生物進化を考える
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king/分子遺伝学入門と優生学
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分子進化の中立説を提唱した遺伝学者木村資生による進化学史と遺伝学入門をかねた、ややハイレベルな入門書。これまで遺伝学関係のものはあまり触れてこなかったので、遺伝学について書かれた部分は知らなかったことが多く非常に面白い。中立説っていったい何なのかよくわからない状態から読んだのだけれど、詳しい数理的な部分はともかくとして、どういうことが問題になっているのかがある程度つかむことができると思う。進化というと、それまでは目に見える表現型をもとに考えられてきたけれど、遺伝子という内部構造を精査する手段を得たことで、いろいろ意外な事実が判明してきた。その一つが分子時計を可能にした、分子進化の速度が一定だと…
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種の起源
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king/世界の不思議を二つの原理で捉え直す
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科学史、進化生物学を専門とする渡辺政隆による進化生物学の古典の新訳。原本は1859年の第一版。岩波文庫版の訳文を吟味したことはないので比較はできないけれど、普通に読んで充分読み通せるものとなっている。原書に比べて段落等を増やしているらしく、ちょうどよく区切られているのもいい。ただし、当時強い影響力のあった創造論に対するガードを固めるためと、進化論(ダーウィン自身は「変化を伴う由来説」または「由来の学説」と呼んでいる。進化は環境への適応であって進歩ではなく、誤解を招きかねない進化と言う言葉を避けた)自体がまだいくつもの難題を抱えていることもあって慎重に慎重を重ね、着想から二十年を経ての執筆となっ…
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人物で語る物理入門
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king/多彩な人物、多彩な分野
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女性科学者としての視点を生かした著作も多い、物性物理の研究者による物理入門。タイトル通り人物にクローズアップしつつ、多彩な人物から物理学の多彩な研究分野が知られるようになっている。著者によると全体では物理学の基礎科目をカバーしたものになっているという。古代科学史と、コペルニクスからニュートンに至るあたりまでは王道のセレクトだけれど、光学のホイヘンス、女性単独で原子の名前になった唯一の人物マイトナーを扱った原子核物理の章、トランジスタ、超伝導と二回ノーベル物理学賞を受賞したバーディーンを扱った物性物理、クォークから複雑系へ、ミクロからマクロへと研究対象を転じたゲルマンに触れた章など、名前をあまり…
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物理学とは何だろうか
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king/数学として表現することの意味
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日本人二番目のノーベル賞受賞者朝永振一郎による物理学入門。著者が亡くなり未完に終わったため、執筆予定だった内容の原型となる講演を巻末に付け加えて刊行された。そのため、全体の構成はかなりアンバランス。随所に物理学部生向けの注が挟まれ、数式も容赦なく挿入されるので、わりと想定読者のレベルは高い。この数式の活用はもちろん、本書の狙いにとって欠かせないものだ。第一章はケプラー、ガリレオ、ニュートンの定番の話から始まる。ここではケプラーの神秘主義的な思考が、惑星の動きとどう関連していたかが述べられているところが面白い。惑星の動きの原因としてケプラーは太陽の自転を挙げていて、その自転は神によって起動され、…
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物理学はいかに創られたか
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king/「力」の解説
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アインシュタイン、そしてレオポルト・インフェルトの共著になる物理学入門。どういう担当になっているかは書かれていないけれど、アインシュタインが構成を考え、執筆したのはインフェルト、という話を聞いた。非常に初歩的な力、運動の説明から始まり、熱力学、電磁気学の話に続く。磁力の遠隔力はどのように伝わるのか、という話から場の概念、相対論へとつなげる構成は、力学という点に力点を置いたものだろうか。物理学史というよりは、力とは何か、それは物理学においてどのように考えられているか、ということを中高生向けに書いた本になっている。印象的だったのは、決して中をのぞくことができない時計の文字盤の動きから、内部の構造を…
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宇宙創成
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king/「科学的方法」の人間味
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ハードカバー時はタイトルが『ビッグバン宇宙論』で、その通りにビッグバン理論の解説に焦点を当てている。最近の本はどれも超ひも理論とかもっと多様化した最新宇宙論の話を扱うものが多いようだけれど、本書はビッグバン理論が定説となるあたりで終わっている。宇宙論の新しい本だと思って読むと話題の古さにがっかりするかも知れないけれども、エピローグや訳者解説にもあるとおり、本書が焦点としているのは、ビッグバン理論という説が、いかなる紆余曲折を経て定説となったか、ということを上下二巻に渡って綿密にたどることにある。この点、『フェルマーの最終定理』などとは異なる点だ。シン自身『フェルマーの最終定理』で書いていたけれ…
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暗号解読
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king/戦争から日常へ
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古代以来連綿とつづく暗号とその解読をめぐる歴史をたどる『暗号解読』。史上現れた様々な暗号を丁寧に解説していくなかで、頻度分析その他数学的処理が解読の要として用いられている様子を描いていくので、本書も『フェルマーの最終定理』と同じく、数学もののノンフィクションといってもいいだろう。暗号の歴史とともに、戦争、通信、コンピュータの歴史もが密接に絡んで、最終的には原理的に解読不能の暗号、量子暗号にまで到達する。暗号とその解読は人間同士の戦いなので、戦争をめぐる記述がとても多いのが特徴。政治的謀略、外交などが絡み合った人間味に満ちた知恵比べの歴史だ。解読、ということで暗号ではなく、シャンポリオンによるヒ…
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フェルマーの最終定理
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king/世紀の難問はいかにして解かれたか
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「3 以上の自然数 n について、Xn + Yn = Zn となる 0 でない自然数 (x, y, z) の組み合わせがない」というのがフェルマーの定理。単純そうに見えて、というかそれゆえにか、証明することはきわめて困難で、300年以上をかけてようやく達成された。本書はいかにしてこの難問が解かれたかをめぐるノンフィクションだ。前々から評判高く、読む前からこれは絶対面白いと見込んでいたのだけれど、その予想を軽々と上回る秀逸な出来。それ自体が興味深い題材をきわめて良質な叙述で描き出していて圧倒的だ。難問への挑戦という学問の側面と、個々個性的な研究者たちのエピソードが両立しているのがいい。ある学問的…
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形態の生命誌
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king/形態をめぐる生物学エッセイ
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近著は内容が既読のものと重複してそうで手を出してなかったのだけれど、これは長沼氏にしては目新しいテーマだったので飛びついた。意外なアプローチだな、と思っていたら、やっぱりもともとはこういう方面には詳しくないそうで、そういうスタンスから進化発生学(エボデボ、と呼ばれる)を学びつつ書いていくエッセイ、という体裁になっていたのはやや当てが外れた感があるけれども、内容は面白く、亀の甲羅の発生学的な由来とか、フィボナッチ数が生物において重要なことなど、聞きかじったことはあってもちゃんとは知らなかったことがさまざまに触れられていて、面白い。1951年に癌でなくなった人の癌細胞が現在も生き続けていて、しかも…
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深海のパイロット
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king/何故人が深海にもぐらなければならないのか
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長沼氏との対談本もあるSF作家藤崎慎吾と、潜水調査船パイロット、地質学者の三人による共著。共著とはいっても、本文の大半は深海探査の興味深いエピソードを集めた、藤崎氏による第一部で、これが200ページを占める。これだけでもはや新書としては一冊分なのだけれど、加えて二人(第一部にも登場する人物)がそれぞれの立場から「しんかい二〇〇〇」や「しんかい六五〇〇」について語った文章が加えられて一冊となっている。深海探査を興味深いエピソード共に紹介することで、楽しく深海探査の意義を伝えようとするのとともに、予算的な問題で運用を休止することになった「しんかい二〇〇〇」の再度の運用を開始したいという願いが込めら…
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地球の内部で何が起こっているのか?
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king/深海掘削と地球科学の歴史
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海洋研究開発機構関係者を中心とした共著による地球科学入門、と同時に地球深部探査船「ちきゅう」の意義を広報する一冊。本書では深海掘削計画を軸にして、これまでの世界の深海掘削計画の歴史と、プレートテクトニクス等の地球科学の発見の歴史をたどった本になっている。「ちきゅう」の運用開始を目前にして、なぜこれが必要なのか、ということを説明するために、これまでの掘削と地学の歴史を振り返ることで「ちきゅう」の重要性がわかるようになっている、という本。なので、気候変動、白亜紀の絶滅等にも触れられているけれども、地球科学といっても、プレートテクトニクスや地震関係等、深海掘削と関係のある部分を中心にまとめられたもの…
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ペインティッド・バード
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king/陰惨な滑稽さ
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松籟社の<東欧の想像力>第七弾は、以前コジンスキー『異端の鳥』として刊行されていたものの新訳で、ポーランド生まれの亡命作家がアメリカ在住時に英語で書いたデビュー作。1965年に発表され、いまもってベストセラーとしてその地位を保っているとのこと。発表とともに、親ソ的なプロパガンダとも、反「東欧」キャンペーンの急先鋒ともみなされ、東西冷戦のさなかきわめて微妙なポジションにあった。自伝的作品も呼ばれるけれど、作者は本作をフィクションだと強調している。舞台は、ホロコーストの影が忍び寄る第二次世界大戦下の東欧。物語は「東欧の大都市」から遠い田舎に六歳の少年が両親から離れて疎開するところから始まる。戦争の…
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耳刈ネルリ御入学万歳万歳万々歳
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king/奇抜さと王道のバランス
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全く知らない作品、作家だったけれど、ソ連みたいな多民族が混在する学園生活、というのが基本設定だと言うことを知り、東欧関係を調べていた時だったので俄然興味がでてきたので読んでみたのだけれどこれがとても面白い。全三巻で完結しているのでまとめて書く。いかにもオタクな妄想トークが暴走したりするトリッキーな語りは今風なんだと思うけど、物語的にはむしろ王道の、あるいはほとんど古風な学園ものというべき作品で、最近のラノベに良い印象を持ってない人こそ読んでみると良いんじゃないか。能力バトルでもなく、日常系部活ものでもなく、キャラ萌えで引っ張るのでもない、学園青春物語だ。二百六十八もの王国や「自治活動体」を内部…
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東欧SF傑作集
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king/東欧SFアンソロジー
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ロシアソ連SFアンソロジーを編んだ深見弾編による東欧SF選集。こちらはさすがに深見氏だけではなく、沼野充義、ルーマニア文学の翻訳等で知られる住谷春也、ユーゴでは波津博明といった訳者が協力している。重訳かどうかの説明はないけど、さすがに全部原語訳ということはなかろうと思われる。こちらは新しめの作品を重点的に選んでいる点が対照的。そもそもSFの紹介が遅れていたりした国々なので、英米等のSFの体系的な紹介が行われてきてからのものを選んだと言うことだろう。また、扱っている国が多いために、十ページほどの短い作品が多くなっていて、やや読み応えの点で難があるのと、その国のSF史を感じられるほど分量がないとい…
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ロシア・ソビエトSF傑作集
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king/短篇によるロシアSF史
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深見弾訳による上下巻のロシアSFアンソロジー。特に書かれていないもののおそらく作品選定も深見氏によるものだろう。元々79年に出ていたものを時代を感じさせる表紙もそのままに復刊したもの。通時的に作品を並べていって、ロシアSFの歴史をたどる構成になっているので、短篇によるロシアSF史としても面白い。さらに各巻末に50ページずつ付されたロシアSF史が貴重だ。上巻ではロシア最初のSFともいわれるものから、ロシア革命によるソヴィエト成立以前の作品を収める。全五作と少数ながら、プリミティブなタイムスリップものから、新兵器を作ってしまった話、ユーモア風のものまで多彩で、そして注目すべきは奇人ボグダーノフによ…
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ラギッド・ガール
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king/仮想空間のなかの「官能」
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「廃園の天使」シリーズの第二作。このシリーズは長篇三作とその他中短篇からなる予定だという。たまに全三作と勘違いして、あと一冊で終わると思っている人がいるけれど、違います。『グラン・ヴァカンス』ではずっと数値海岸内での事件が扱われていたけれど今作では外部と内部、あるいはその両方にまたがった話が収められていて、数値海岸がいかにしてできたのか、そして大途絶はどうして起こったのかという謎が明かされる。というわけで話や設定的にも『グラン・ヴァカンス』読者には必読の一冊。以前何度か飛浩隆はSFのようで何か違うことをしている感じがあると書いたような覚えがあるけれど、ひとつ自分のなかではっきりしたのは、それが…
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現代東欧文学全集
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king/民族混在の町が遭遇する近代
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旧ユーゴ唯一のノーベル賞作家、1892年生まれのイヴォ・アンドリッチの代表作。セルビアとボスニアの境界近くにあるヴィシェグラード(中欧四ヶ国が所属する「ヴィシェグラード地域協力」のヴィシェグラードはハンガリー、ドナウ川沿いにある別の都市)の町を流れるドリナ川にかかる橋を舞台に、オスマン帝国による橋の建造から、サラエヴォの銃声が聞こえ、オーストリアに橋を爆破される1914年までの400年にわたる橋と川を巡る年代記。橋の建設は1571年。近世から近代への歴史を背景としている。とはいっても、すぐに19世紀の話になるので、全体の大半は近代に偏っている。序盤では橋にまつわるいくつもの伝説が紹介されると物…
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誇り
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king/「思い通りにゆかないもの、それが人生だ」
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サッカーに興味はないけれど名前だけは知っていたストイコビッチが、旧ユーゴ出身のセルビア人だったとは知らなかった。というわけで著者木村元彦のユーゴサッカー三部作の第一作目を読んだのだけれど、これがとても面白い。彼の所属していたユーゴ代表チームは、ユーゴ解体によって連邦のなかの国が独立していくのとともにチームメンバーが減っていき、制裁によってストイコビッチは全盛期を祖国のチームでプレイすることができなかった。さらには移籍したフランスのチームで八百長騒動に巻き込まれ、失意の底にあった彼は、気分転換とばかりにやってきた日本で、最初はなじめず不調だったのがだんだんと調子を上げるのとともに、有名な納豆好き…
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世界文学全集
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king/「チャップリンですら思いつかないほどのグロテスクな喜劇」
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現代チェコ文学の代表的存在といわれるボフミル・フラバルの長篇。チェコという「小さな国出身の小さな男」、名字も「子供」の意味があるヤン・ジーチェという駆け出しの給仕人を語り手に、彼の成り上がりと没落の物語を、マサリクの共和国、ドイツの保護領となったナチス時代、社会主義政権下のスターリニズム時代と移り変わる激動のチェコ現代史を背景に、人間味あるユーモアに満ちた悲喜劇のうちに語り倒す。『あまりにも騒がしい孤独』に比べてオーソドックスなサクセスストーリー風の構成になっていて、非常にポピュラーな魅力のあるものになっている。なので、東欧文学に興味のある人にもない人にもお勧め。とにかく、良い小説。ジーチェの…
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二つの伝説
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king/抑圧に対して、生の情熱として溢れ出るもの
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「東欧の想像力」叢書第六巻は、カナダに亡命したチェコ出身の作家、ヨゼフ・シュクヴォレツキーの中篇集プラス、エッセイ。ちなみに、ミステリ作品が90年代に一冊訳されているので、作者の単行本初紹介というわけではない。本書では装画からして明らかなように、音楽特にジャズが大きな意味を持っている。冒頭に置かれたエッセイ「レッド・ミュージック」はジャズの思い出を語りつつ、ジャズと重ね合わせるように自身の文学観を語っていて非常に面白い。「レッド・ミュージック」の「赤」はもともとあった「ブルー・ミュージック」というバンドにちなんで名付けたグループ名で、別に共産主義を意識したものではなかったにしろ、結果的に皮肉な…
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石の花
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king/「またしても“現実の方をのみこむ”んですね」
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「7つの隣国、6つの共和国、5つの民族、4つの言語、3つの宗教、2つの文字により構成される1つの国」かつて存在したユーゴスラヴィアの多様性を示すものとして、この言葉はよく知られたものだろう。本作は第二次大戦下、ナチスドイツの侵攻にさらされたユーゴを舞台にしている。村を襲撃されゲリラに身を投じることになった少年クリロを主人公に、チトー率いるパルチザンへの参加、王制派レジスタンスチェトニクとの内紛、ユダヤ人強制収容所の惨状、そして第二次対戦終了までを描く歴史長篇漫画だ。文庫版全五巻。開巻冒頭ではスロヴェニア地方東北部の自然あふれる穏やかな情景を描き出していて、カラーページの美しさには目を奪われる。…
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中欧の分裂と統合
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king/哲人大統領マサリクの生涯
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タイトルが漠然とし過ぎているけれど、サブタイトルのとおり、チェコスロヴァキア共和国初代大統領トマーシュ・ガリグ・マサリクの生涯をたどりながら、共和国建国の歴史を叙述する一冊。チェコ史について読んでいて、マサリクという人物に興味がでたところだったので、とても面白い。マサリクについては、他にカレル・チャペックによるものや石川達夫によるものなどもあるけれど、入手しやすい本としてはこれがあるだけとなる。マサリクは、チェコ人とスロヴァキア人の両親の間に生まれている。ただし、彼の母親はドイツ化したチェコ人であって、日常生活ではドイツ語を話し、マサリク自身も小学校はドイツ語教室に通っていた。チェコ、スロヴァ…
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物語チェコの歴史
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king/個人の目線からの歴史
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チェコの歴史の入門書だけれど、政治史を中心にするのではなく、ある時代のなかで特定の人物にクローズアップして具体的にその行動を追うことで、個人の目線からの歴史をつないでいく構成を採っている。何故この構成なのか、を説明する「まえがき」は一国の歴史を書くということについて、きわめて示唆的な議論がなされている。今でこそチェコはチェコ人が多数を占めるチェコ人の国となっているものの、近代以前は多数のドイツ人やユダヤ人が居住する多民族国家だった。国の歴史を、一民族による歴史として叙述する歴史観は、国民国家を根拠づけるものとして近代になって生まれたものだ。だから、今の国民国家の枠組みによって歴史を遡ろうとする…
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チェコとスロヴァキアを知るための56章
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king/チェコとスロヴァキア入門
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明石書店の「知るための○○章」シリーズ(「エリア・スタディーズ」)はメジャーなところからマイナーな地域まで様々な国や地域を扱う入門書シリーズで、その地域の研究者が多数参加し、数ページの章単位で執筆しているのが特徴。歴史、文化、経済、社会、生活、芸術その他多様なテーマを設け、基礎的な知識をフォローしている。本書では「チェコとスロヴァキア」として、しばらく前まで一つの国だった地域をカバーする。ここではやはり古都プラハを擁するチェコが前面にでていて、スロヴァキアはやや扱いが小さい。都会のチェコと、田舎のスロヴァキア、というと失礼だけれど、この経済的格差による対立が、チェコスロヴァキア連邦分裂の要因に…
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ミカイールの階梯
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king/「共生」と「英雄」のテーマ
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上巻ではこの小説の題材の面を紹介したけれど、読んでいて印象に残ったのは、「共生」と「英雄」のテーマだ。これはたぶんどちらも「HISTORIA」シリーズの重要な要素ではないかと思われる。そもそもの今作の文化の混在の設定は、「共生」を語るために必然的に要請されたものだとはいえる。様々な異なる言語、文化、民族が交錯するなかで、作中でも己の純粋性を高めようとする志向が対立を激化させる様子がしばしば否定的に言及される。レズヴァーンはこう語る。「汚濁と混沌の坩堝に在って、一点の汚れも混じりけもない純潔のイデオロギー。その追求の結果、絵に描いたような全体主義と原理主義が出来上がりました。しかし彼らが提示する…
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ミカイールの階梯
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king/異なるものの混在のモチーフ
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仁木稔による歴史改変未来史「HISTORIA」シリーズの長篇第三作。シリーズとはいっても、世界設定を共有したそれぞれ別の時代、舞台なので、第一作「グアルディア」の直接の続篇というわけではなく、時間軸も本作の方が早いので、本書から読んでも問題はない。ただし、「ラ・イストリア」は「グアルディア」の前日譚という体裁になっている。本作についてもその前日譚が準備されているそうで、このシリーズは今のところ、本篇たる大作とそのフォロー的な作品という形で構成されるようだ。本シリーズが特徴的なのは、その舞台設定にある。大きなウィルス禍により文明が崩壊したあとの数百年未来ではあるものの、第一作とその続篇はラテンア…
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ミステリウム
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king/「不可能ゆえに確かなり」
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「不合理ゆえに吾信ず(Credo quia absurdum)」という言葉がある。埴谷雄高がその著書に用いたことで知っている人も多いだろう。これは古代の神学者テルトゥリアヌスの言葉として知られているのだけれど、じっさいは彼の著作にこの言葉はないという。カナダの作家エリック・マコーマックの「ミステリウム」には、「不可能ゆえに確かなり(Certum quia impossibile)」という警句が二度ほど出てくる。これを見たときに私は、有名なフレーズ「不合理ゆえに吾信ず」のパロディとしてマコーマックが創作したものではないか、と考えた。しかし、訳者の増田まもる氏が調べたところ、テルトゥリアヌスの著作…
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隠し部屋を査察して
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king/ドライでグロテスクな奇想小説
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マコーマックはカナダ在住のスコットランド生まれの作家で、これはデビュー作。マコーマックは基本的にグロテスクといっていい奇想を得意とする作家で、本書もそうした奇想を核とした長くても20頁程度の短篇が収められている。表題作の「隠し部屋を査察して」は、地下牢に閉じこめられた人間を査察する人間を語り手にしつつ、それぞれの部屋の住人がそこに閉じこめられたいきさつを語っていくもので、一人は何千ヘクタールもの人工の森とグロテスクな人工の動物たちを作り上げ、一人は発明の天才だけれども作り上げた自動機械が動物だけでなく彼の妻の友人までをも殺してしまったため密告され、一人は森の中に実物大の軍艦を建造した農夫という…
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進化とはなんだろうか
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king/「生物学のどんな現象も、進化を考えに入れない限り意味を持たない」
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長谷川氏は行動生態学の専門家で、著書にも動物関連のものが多く、特に性について書いたものが多い。私はまだこれだけしか読んだことがないけど、かなり有名な人。岩波ジュニア新書、ということで何にも知らないところから入っていける。ジュニア、というけれど、このシリーズは昔習ったことなんか綺麗に忘れてしまったという大人が読んでも充分満足できるレベルだったりして、とっても役に立つ。本書冒頭で長谷川氏は、「進化論」と呼ばれていて、個人の意見であるかのように聞こえるけれども、これは既にれっきとした現代生物学の一部、というより「現代生物学を統合する総合的な理論」だと述べ、「進化生物学」と呼ぶべきだと主張している。ま…
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