コメント・書評 |
夢の時間を生きていくことについて
しっぽ
Dec 11, 2001 11:56:00 PM
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評価 ( ★マーク )
★★★★
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この物語は南の方にあるどこかの島が舞台です。まだ、自然も色濃く残っているものの、飛行場もあり町中では車も走り回る、そんな島。主人公のティオは街のホテルの子供だ。物語はティオが島の中で経験する、ときには幻想的な、ときには現実的なできごとが次々と語られていく。
ぼくが好きなのは「帰りたくなかった二人」という短い作品です。 海に囲まれた南の島にかんちがいで山登りをしようとした日本人のカップルが、ティオのホテルにやってくる。山には結局登れないんだけど、ふたりはすっかり島での生活が気に入ってしまう。少しでも長く島で暮らすために、ホテルも引き払って森の中の小屋で二人は暮らすようになる。 それでもやがて、手持ちのお金が尽きる。二人は日本に帰らなくてはならなくなる。日本に帰ると仕事で忙しい毎日が待っている。二人の仕事はやりがいもあっていい仕事らしい。飛行機のチケットを売ろうか…男の人はそんな考えを弄んだりもする。けれど結局、二人は日本へと帰っていく。 「またくるね」そういう二人にティオは思う。「二人はもう、戻ってこないんじゃないか」と。
最近ぼくは、趣味で帆船に乗っています。帆船に乗るって言うのがどういうことなのかはピンとこないでしょうが、それはすごく強烈で新鮮で魅力的な体験です。ただし、時間的にも金銭的にもけっこうきついものなのです。帆船での航海って。
で、一度航海を体験した後で、何度も船に乗るようになる人と、航海がすごく楽しかったにも関わらず、二度と船に乗りにこようとはしない人もいます。一方は年に一度一週間船に乗るために、お金をため、有休を調整して、ものすごい努力をしてまで海に出ようとします。 そして一方に、たまに会って船の話とかをしているとすごく楽しそうだったり、ぼくが今度船に乗りに行くと言うとうらやましそうにしたりする人がします。でも、その人たちは決してもう一度船に乗って航海しようとはしないのです。
ぼくはこの短い物語のラストシーンで、ふと、そんなぼくの友人達のことを思いました。ちょっと切なくなりました。夢と現実をごちゃまぜにしたまま生きていくのには、資格や力が必要なのかもしれません。それは夢を現実に変えていくには、もしくは現実の世界の中に出現させるには、と言い換えてもいいのかもしれません。夢を見ることはだれにでもできることだけど、夢を見続けることや夢を現実のなかで求めていくことができるのはごくごくわずかな人たちだけなのかもしれません。
この本を読んで、そんなとりとめのないことを思ってしまいました。
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