コメント・書評 |
読んでよかった1冊
kumataro
Sep 27, 2011 8:21:21 PM
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評価 ( ★マーク )
★★★★★
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愛しの座敷わらし(いとしの)上・下 荻原浩 朝日文庫
感服しました。文章運びがうまい。来年のゴールデンウィークに映画が上映されます。きっとヒットするでしょう。高橋晃一、47歳食品会社勤務課長職は、水谷豊さんが演じるとあります。適役です。家族の再生物語です。でも、家庭内暴力とか、こどもが非行とか、両親に離婚話があるとか、そういったことはいっさいありません。どこにでもある平凡な家族です。しかし、お互いの気持は、崩壊寸前の家庭です。今年読んでよかった本のうちの4冊目になりました。 父親と娘梓美(あずみ)中学2年生との気持ちのすれ違いは、娘をもつ父親が読むと胸にぐっときます。加えて、サラリーマンとしての父親の仕事に関する葛藤にも共感します。自分は何をやっているのだろうとか、こんなことをして何になると思いつつも、サラリー獲得のための忍耐は続きます。読みながら涙ぐんでしまいました。 物語は登場人物一人ひとりの語りでリレーされていきます。妻、史子(ふみこ)44歳、長男智也(ともや)4年生身長132.2cmちびと呼ばれる。夫の母、澄代78歳、認知症気味の5人家族です。クッキーという名前の子犬もいます。最初からまもなくまでの登場人物が語る「章」の移行は鮮やかですが、後半はだれがしゃぺっているのかわからなくなる章もあります。でも、気になりません。高橋ファミリーのまわりに、登場人物がだんだん増えてくるからでしょう。 隣宅に住む菊池米子85歳が「おもさげなでがんす」と話すので、舞台は岩手県でしょう。座敷わらしですから遠野地方でしょう。出だしは、この作家さんが書いた「メリーゴーランド」に似ている。ドライブからのスタートです。ドライブと言っても東京から舞台となる地への転勤であり、晃一にとっては左遷です。上巻は、おふざけモードでダジャレが多い。190ページまで読んで、肝心のざしきぼっこがあまり出てきません。遅い!と首をかしげながら下巻を読む。下巻は、まじめな話になっていく。ぼっこの生い立ち話には泣けます。作者の文章には魔法があります。ぼっこは、何をするわけでもない。言葉を発するわけでもない。だけど、ぼっこのおかげで、バラバラになっていた家族の気持がひとつにまとまっていくのです。 最初はテレビドラマ「北の国から」をイメージしました。でも違います。北海道と東北は違うのです。28ページ、高橋家が住むことになる古民家は、わたしが小学校低学年のときに住んでいた父方実家の農家を思い出しました。母屋(おもや)の隣に牛小屋があり、生まれたての子牛を見たことがあります。だからということもないのですが、座敷わらしのようなものが家にいると感じることはあります。見たことはありません。見えないけれど、だれかが家の中にいると気配を感じることが今でもたまにあります。怖く(こわく)はありません。いてもいいのです。直接的な被害はないのですから。ご先祖さまだろうと思っています。 最終ページは、すばらしいオチと伏線でした。感服しました。巻末にあった水谷豊さんの解説文もよかった。ことに彼と娘さんとの関わりがよかった。
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