コメント・書評 |
立花隆とは一生口きいてやんない
しっぽ
Oct 23, 2001 10:09:00 AM
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評価 ( ★マーク )
★★★★★
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「立花隆とは一生口きいてやんない」 そう決めたのは、この本にまつわる彼のコメントを目にしてからです。 『プロレス少女伝説』という本は大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した、女子プロレスを題材にしたルポです。クラッシュギャルズが引き起こした女子プロレスの大ブームが少しずつ翳りを見せ始めていたそのころに、女子プロレスの世界に足を踏み入れた、神取しのぶ、天田麗文、メデューサ・ミシェリーという、三人のまったくちがったタイプの女子プロレスラーたちの、生い立ちやプロレスに関わるようになったいきさつを書いています。
さて、立花隆がどこに出てくるかと言うと、彼はこの本が受賞した文学賞の選考委員の一人だったのです。 この手の文学賞では、受賞者が発表になると、総括として選考委員のコメントなども同時に公表されることが多くあります。 その選評に目を通してみると、ほとんどの選考委員がこの『プロレス…』の受賞を推していたのに、ひとり立花隆だけはかなり強い姿勢でそれに反対していました。彼は発表された選評のなかで、その理由として次のようなことを述べていました。 作品としての構成力や文章力は十分に賞をとるに値する。しかし、プロレスという題材がいけない。 プロレスというのは「知性と感性が同時に低レベルにある人間だけが楽しむことができる」もので、その特殊な世界の中でのできごとなどは、わざわざノンフィクションとして世に問うような大事な出来事などではない、ということでした。 繰り返しになりますが、これは雑誌に掲載された選考委員の一人としての公式の選評です。決して、インタビューでつい勢いづいてしゃべってしまったとか、飲んでる席でポロっと言ってしまったとかいうたぐいのコメントではありません。
なんやねん、その話をきいてそう思いました。
子柔道で日本チャンピオンにまでなりながら、柔道界の体質を嫌い、ごくあっさりとプロレスに転向していった神取。日本人と中国人のハーフで、十二の歳まで日本に住んでいる両親と離れて南京で暮らしていた天田。レスラーを足掛かりにエンターテイメントの世界へ進むことを夢見ていたメデューサ。三人がなぜプロレスという世界に足を踏み込み、そこで何を見て、どんな足跡をのこしていったのか。 それは確かに女子プロレスという閉鎖的で特殊な狭い世界でのできごとかもしれない。しかし一方で、女子プロレスという世界に熱狂する観客の少女達が大勢存在し、そこになんらかの価値を見つめているのも確かだ。 たしかに、取るに足らないくだらないことなのかもしれない。ある人々から見ればね。だけど、だからといってそれを切り捨ててしまったら、彼女たちはどこへ行けばいいんだろう。 プロレスは不思議なもので、見方によってはすごくたくさんの意味をそのなかに読み取ることができる。その多彩さやいかがわしさ、夢のような豪華さやむっとする汗臭さ。そんなものが混じりあっているのが本当のプロレスなのだと思う。 プロレスというものを通して初めて、世界と正面から向き合うことを覚えた人だってたくさんいる。だから、プロレスの世界で彼女たちが生きてきた足跡をたどっていくことは決して意味のないことではないと思う。
慣れない日本での巡業暮しの中で、他の日本人選手達から距離を置かれていたメデューサは笑いながら作者に言った。 「誰かが私を永遠に受け入れなくても、それは問題にならない。私は他人に受け入れられるために生きているのではなく、自分の人生を見きわめるために生きている」
強くならなきゃ、22才のぼくはそう思った。 |
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