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昼が夜に負うもの
ハヤカワepiブック・プラネット
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コメント・書評 |
民族対立も三角関係も乗り越える友情に
かつき
Jan 5, 2010 12:25:22 PM
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評価 ( ★マーク )
★★★★★
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女性名のペンネームで『カブールの燕たち』『テロル』と、 悲しい紛争とテロの物語を優美に紡ぎだしたカドラの新作は 故郷アルジェリアを舞台にしたアラブ系の青年の物語。
1930年代から始まり、二つの世界大戦、 60年代の独立戦争と、アルジェリアの歴史をたどる。
主人公のユネスは9歳。 アラブ系だが、美しい顔立ちとブルーの瞳で 人々を虜にする魅力的な少年だ。 彼の父親が貧しい農民から、一気に最貧困層へと没落し 困窮から彼の兄夫婦にユネスは養子に出される。
伯父のマヒは、パリで薬学の教育を受け、 現在も薬局を営んでいる。裕福な家庭だが子どもがいない。 フランス人の妻ジェルメーヌがアラビア風の発音ができず、 ユネスは「ジョナス」というフランス風の名前に 自然に変わっていく。
ここで彼はアラビア人社会からヨーロッパ系社会へと コミュニティを変えていく。 彼は隣人と親しみ、学校に慣れ、新しい社会に適応する。 その間にもアラブ系の伯父を圧迫する事態が起こるが 彼らは切り抜けていく。
やがてリオ=サラドに居を移したジョナスは、 シモン、ファブリス、ジャン=クリストフという ユダヤ系やヨーロッパ系の友人とは特に仲良くなり、 4人はまるで「フォークのさき」だった。
しかしエミリーという美しい女性に4人がそろって恋をし、 友情は微妙に変化し、そこへアルジェリア内の紛争から 民族間の感情、対立が生まれ、彼らは元のままではいられなくなる。
ジョナスは幼いころからおとなしい性格だった。 ヨーロッパ人系の社会でもアラブ系であるため 主体的な行動を起こせないことがあったのかもしれない。 彼はやがて恋を失い、友を失っていく。
唯一、彼がアラブ系の少年をかばって、 ヨーロッパ系の事業主に訴えるシーンは印象的だ。 「大昔のことですが、ソザさん、あなたや、 曾お祖父さまのさらに先代のかたよりもまえの時代、 あなたのいる場所に建った人間がいました」で始まる 自由を訴えるセリフは、心に切々と響く。
そして現代までドラマは続く。 「人生はノンストップの列車のようなものだ。 走っているところに飛びのるか、 ホームで通り過ぎていくのを眺めているか」 と回想する、80を超えたジョナスが思うことはたった一つだ。 「つねに自分のパズルには欠けているピースがある」。 幸福も感動も埋めることができないピースは、友に会うことだけ。
美しく、豊かで、抒情的なジョナスの物語は フランスでもベストセラーになった。
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