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生物と無生物のあいだ  講談社現代新書

生物と無生物のあいだ(講談社) 福岡 伸一著
税込価格: ¥777 (本体 : ¥740)
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出版 : 講談社
サイズ : 18cm / 285p
ISBN : 978-4-06-149891-4
発行年月 : 2007.5
利用対象 : 一般

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内容説明

【サントリー学芸賞(第29回)】【新書大賞(第1回)】「生きている」とはどういうことか? 分子生物学がたどりついた地平を、歴史の闇に沈んだ科学者たちに光を当てながら平易に明かす。ページをめくる手がとまらない極上の科学ミステリー。

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コメント・書評

―古典的実験思考の限界―
レム
Sep 20, 2009 12:04:40 AM
評価 ( マーク )
★★★

  DNAは、理論上は生命活動の全てをコードしているはずである。 では、コードをじっくり読み進めば、全ての生命の謎が解けるのだろうか・・・。 この答えは、そう単純な話ではないだろう、ということを本書は物語っている。
   
  事実、例えば特定の酵素や機能をコードしている遺伝子配列は、既に多数知られてきているし、ある塩基配列の有無や異常が特定の疾患と結びつくといったことも分かってきている。 場合によっては、たった一箇所の遺伝子の塩基配列の違いで抗癌剤の効果が劇的に異なるといった事例もある。
  となれば、生命活動に重要な遺伝子を欠損させた生物は、どうなってしまうのか。 著者はGP2という膵臓の細胞分泌において重要な役割を担うタンパク質に注目し、このタンパク質をコードした遺伝子を全く欠落(ノックアウト)したマウスを作成した。 科学者一般の予測では、そのマウスは直ちに死に至るはずであった・・・。 しかし、結果は見事に裏切られて、このGP2ノックアウトマウスは元気に生き続けるのだ。
   
  ここで、最も基本的な原因と結果の科学的関係の考え方は次のようになる。 ある系から因子Aを取り除くことで特定の事象Bが発生せず、そこに交絡因子と呼ばれる見かけの因果関係の関与が無ければ、その因子Aと事象Bには科学的に因果関係があることが示唆される(もちろんこれだけでは不十分だが)。 さらには因子Aの存在しない系にAを加えることで、それまで起こり得なかった事象Bが発現するならば、このAとBの関係はさらに確認できる。 それらには再現性も同時に求められる。 この原因と結果の証明の考え方は、極めて古典的な実験思考法に基づいたものだが、今日においてもなお科学的な証明における基本理論だ。 
  つまり、GP2ノックアウトマウスの実験から分かったことは、次の2点である。 生命の謎を解明するための金科玉条と思われたDNA解読は、塩基配列を近視眼的に読むだけでは歯が立たないということ。 そして、DNAいや、生命を紐解くには、古典的因果関係の考え方を越えた科学的思考方法が必要であり、我々はそのパラダイムシフトをいまだ迎えていない、ということである。
   
  生物学系の学生あるいはそのような大学出身者の読者諸賢にとっては、本書の評価は大きく異なるだろう。 というのは、本書の内容はあまりにも教科書的で常識的な内容だ。 ただ、本書で特筆すべきことは、専門的で複雑な研究手技や手順も平易な文章で綴られている点で、生物学と縁が遠い方や中高生でも充分理解することができよう。 DNAや内分泌の話一つにしてもその発見の経緯や原理からつぶさに語られ、しかもそこには、科学者たちの確執や陰謀などの人間劇やエピソードまでがふんだんに織り込まれている。 各種の賞を受賞した所以は、これまでこの手の本に無かったそういった肌理細やかさにあるのだろう。 
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