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素数たちの孤独
ハヤカワepiブック・プラネット
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コメント・書評 |
孤独と孤独が出会うとき。
求羅
Aug 17, 2009 11:42:27 AM
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評価 ( ★マーク )
★★★★
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マイナスとマイナスを足しても、プラスになることはない。その数値が大きくなればなるほど、ますます正数からの距離は広がっていく。 だが、孤独と孤独が出会うとき、共感が生まれ、癒しとなる。それは、ひとりで歩む人生の流れの中で、奇跡のような瞬間だ。
自傷癖のある天才数学少年マッティアと、片足に障害をもつ拒食症の少女アリーチェ。 心に傷を負い殻に閉じこもって生きていた二人は、相手の中に自分と同じ苦しみを見出し、自然と引き寄せられるように。幼少期から思春期を経て青年期へ。時の移り変わりとともに交錯するふたつの人生は、いつしかひとつの運命に縒り合わさっていく。
切ない小説である。剥き出しの傷のような、ひりひりとした痛みを伴う小説である。登場人物たちの底知れぬ孤独を思うと、途方にくれる。 もともと作者が考えていたタイトルは、章題にもなっている「水の内と外」だったそうだ。 作中では水のイメージが随所で重要な役割を果たしているが、広い意味でいえば、私たちが住む世界そのものを現しているといえるだろう。マッティアやアリーチェたちの抱える事情は特殊だが、上手く泳げない息苦しさは誰しも馴染みのあるものだと思う。
作者のパオロ・ジョルダーノは、素粒子物理学を研究している大学院生。 デビュー作となる本書で、2008年イタリアの権威ある文学賞・ストレーガ賞を受賞した。26歳という若さと異色な経歴から、イタリアではずいぶん話題になったようだ。 一文が短く淡々と綴られた文章なのに、心の深いところを揺さぶってくる。じれったい展開にヤキモキしながら、ページをめくらずにはいられなかった。素数の性質と絡めて描いた作品なので、小川洋子の『博士の愛した数式』を思い浮かべる人も多いのではないだろうか。 ともすれば傷の舐め合いになりがちな主人公たちの交流は、共鳴しながらも自分のあるべき場所を離れることはない。それはまるで、〈双子素数〉のような孤独と連帯。ひとつの偶数字で隔てられた距離は、近いようで遠い。けれどけっして「独りぼっち」ではないのだ、という確信が、人の生きる支えになる。 |
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