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ヨーロッパ戦後史
上
1945−1971
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コメント・書評 |
歴史という危険な思考
わたなべ
Jun 10, 2009 4:22:14 PM
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評価 ( ★マーク )
★★★★
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| ユダヤ系として戦後のイギリスに生まれ、フランス現代史を専門として現在はニューヨークで教える著者による大著。上巻は1945年から71年まで。ヨーロッパの戦後を、西ヨーロッパと東ヨーロッパどちらにも偏らず、国別にまた複雑な国際関係を丹念に解きほぐしながら記述していく手際の良さは見事の一言に尽きる。第二次世界大戦が、ヨーロッパの人種的/民族的不均衡をいったん「更地」に戻し、それが戦後の政治経済状況の「復興」を助けた、とか、冷戦を背景に実質的に軍事をアメリカに負わせることで西ヨーロッパの国々(とくにフランス、西ドイツ)は劇的に復興した、とか、成程と思わせられる指摘は多い。60年代の「新左翼」をはじめ、いわゆる「知識人」や「革命」に奔走した人々に対する批判はきわめて手厳しいもので、実質的な意味は何もないと断言しているのも、著者自身がアルチュセールの授業などを受けた経験を背景にしていわれている部分もあり非常に面白い。「プラハの春」もふくむ一種の同時代的的現象として、フランス革命から始る「イデオロギー」政治のヨーロッパにおける終焉と総括されているのは、最近のいわゆる「ポストモダン(後期近代)」をめぐる理論的動向とも呼応する論点だろう。たとえばしばしば知識人が魅了されるという「暴力への誘惑」などについてもう少し詳しく例証を上げて分析して欲しいと思ったりもするが、まあ、基本的にとても大きな視野で描かれる「戦後史」なので、細部がややざっくりしたものになるのはしかたがないのかもしれない。しかし経済的な実質の構造変化と、メディア的な言説の向うエネルギーの方向があまりにも食い違っている悲喜劇的状況というのは、後代から見れば悲惨なまでに異様なのだが、我身を振り返って見ればまったく震撼するしかない。というかこういう本を読んでいると、物事はまったく思ってもみないようにしかなるようにならないものだ、という気さえしてくるので、ある意味で危険な思考かもしれない。 |
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