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完全恋愛
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コメント・書評 |
完全なる小説が読者を陶酔させる
JOEL
Dec 20, 2008 11:49:14 PM
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評価 ( ★マーク )
★★★★★
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ミステリ小説と自伝的物語をあわせたような本である。したがって、読み終えたとき、2冊分の読書の楽しみを味わった気分になる。これは、実によくできた本であり、お得感が抜群である。
いや、そんな損得勘定を超えた高みに本書はあり、改めて日本の作家の技量の高さに恐れ入ってしまった。限りなく頂点を極めた作品である。今年の「このミステリーがすごい」の第3位にランクインしているのも、もっともだ。
主人公の少年時代に始まり、人生の終末に至るまでの長い長い遍歴が語られる。少年時代は東京大空襲の話から始まり、終盤は80年代末のバブルとその崩壊にまでおよぶ。この長大な物語を、読者にひとときも飽きさせることなく、読ませてしまう。
しかも、長い物語の各所に謎が仕掛けてあり、これを解いていくというミステリの醍醐味もある。その謎解きがまた半端でなく、よく練られたものになっている。
本書は400ページを超える大作であるが、初日は数十ページで我慢したものの、翌日はページを繰る手が止まらず、一気に最後まで読み終えてしまった。そのくらい密度が濃く、読者をグイグイ引っ張る力がある。
正直なところ、書名が『完全恋愛』とあるので、最初は手を伸ばすのをためらってしまった。なんだか恋愛指南本のように見られかねないからだ。しかし、本書は、もちろん恋愛ハウツーものとは全く関係がない。
それどころか、やや古風な印象の文体で、濃密な世界を描き出している。400ページを超える大作でありながら、余分な修飾的語句がなく、あくまで精緻なストーリー展開で読ませてしまう。
私は単なる読者にすぎないのに、この完成度の高い作品をものにした作家に嫉妬を覚えてしまった。真似しようとしても、とうてい不可能であると思われたからである。
何ヶ月もかけて準備をし、数々の謎を仕掛けながら執筆して、主人公やそれを取り巻く人々の数奇な運命をひとつの物語として仕立て上げた苦労が伝わってくる。 ただ、著者は執筆を終えた段階では、爽快感でいっぱいになったことだろう。おしまいの方には、著者による遊びの要素さえ入っているのだから。
それにしても著者は安易には謎を解いていかない。最後まで残る謎を、作家と読者が一体となり、時間をかけて解明していく。読み終えたときには、しばし我を忘れたほどである。
読者は、ひとりの主人公の生涯を共に生き、そしてミステリー小説の楽しみも味わい尽くすことができる。これは、万人にお勧めの傑作と言っていいだろう。 これを読まずして2008年を終えるのは大きな損失である。あまり5つ星を献上しない私であるが、これを該当作として推奨することにまったく躊躇しない。 |
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