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普通の家族がいちばん怖い
徹底調査!破滅する日本の食卓

普通の家族がいちばん怖い(新潮社) 岩村 暢子著
税込価格: ¥1,575 (本体 : ¥1,500)
出版 : 新潮社
サイズ : 20cm / 222p
ISBN : 978-4-10-305851-9
発行年月 : 2007.10
利用対象 : 一般

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内容説明

「個性」重視、「私中心」の行き着く先は…? 正月とクリスマス、2大家族イベントを徹底リサーチ。223世帯への調査、76枚の食卓写真と720の主婦の証言から、家族の歪んだ幻想を解体し、その実像を探る。

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コメント・書評

富岡多恵子が日本芸術院新会員に。それと、この一年前の本とをむすびつけたくなったのです。一年前とはいえ、クリスマスと正月の食卓が主題です。
和田浦海岸
Dec 5, 2008 4:54:55 PM
評価 ( マーク )
★★★★★

11月29日の新聞に「日本芸術院新会員に15名」とありました。
読売新聞には、全員の顔写真。産経新聞は3人の顔写真。
その3人は、山田洋次・富岡多恵子・佐佐木幸綱のカラー写真でした。
さてっと。
ここには富岡多恵子にご登場ねがいます。小説家73歳。詩から小説に転じ、近年は評伝を発表。と産経新聞にあります。ちなみに、詩人は飯島耕一・入沢康夫の両氏が新会員となっておりました。

富岡多恵子に「青春絶望音頭」(角川文庫・古本)というのがあります。
そこにですね。食事のことがでてくるのでした。

「ゴハンも炊けなかったわたしが突如として料理ができるようになったと先刻いったのは、なにもわたしが特別に料理の才能があったわけではなくて、人間はちいさい時から食べてきたものは自分でつくって食べられるということだったのである。食べたことのない味のものをつくるのは、いくら創造力があるといったって、少々ムリなはなしである。それに、子供の時から、自分ではつくりはしないが、母親が五目寿司をつくり、酢味噌あえをつくり、タケノコとワカメの煮ものをつくり、大根の一夜漬けをつくるのを見ていたということもあったのだ。わたしは、生れてはじめて魚を三枚におろし、サシミをつくり、アラを煮てたべた時、われながらおそれいった次第だったが、それはきっと、父親がイキのいい魚を買ってきては酒の肴に自分で料理するのを見ていたせいだろう。わたしは料理というものは、専門家になるならいざ知らず、ふつうの人間が学校で習うなんておかしなことだと常々思っている。」(p82)

なぜ、こんな箇所を思い浮かべたのかというと、
最近、岩村暢子著「普通の家族がいちばん怖い  徹底調査!破滅する日本の食卓」(新潮社)を読んだからでした。この本には、クリスマスと正月の食卓の様子が調べられております。
「1999~2000年、2004~2005年の二回にわたり、総計223世帯を対象として実施された『フツウの家族の実態調査(クリスマス・お正月編)』。その結果から垣間見えてきた普通の家族の実態の、ほんの一端をここに取り上げてみた。」(p21)
じつは、この本は昨年の暮れにいろいろなところで書評がなされており、どれも興味深いものでした。私はつい2~3日前に読んだばかりです。

岩村暢子氏の本文中にも、調査家庭の食卓の写真入りで、とても興味深いのでした。それで、富岡多恵子の、本の引用をしてみたくなったのです。ここでは、岩村さんのあとがきを、引用していきます。

「だがさらに言えば、私は対象者の回答(発言・記述)内容もあまり信じてはいない。対象者が虚偽の回答をすると思っているからではない。理由は大きく二つあり、近年多くの対象者が『本当にそうであること』より、『そう答えるのが正解だと感じること』を答えるようになってきているという事がひとつ。二つ目に人は自分の行ったことに対して、そんなに自覚的ではないものだという事がある。人が『している』と回答することと『実際にしている』ことの間には、調べると大きな乖離があるものだ。
そこで私たちの調査では、対象者が『行った』と言うことについては、必ず『写真』記録を求めることにしている。無論、本調査でもそうだった。特に多くの人がまだはっきりとは捉えていない新しい変化を調べるとき『写真』は欠かせない。自覚せずに行い始めている人たちにいくら言葉で『行っていること』を尋ねても、出てくるはずがないからだ。正月元旦の殺伐としたバラバラ食光景などはその好例でもあったと思う。・・・・」


富岡多恵子の引用の箇所を私は、この岩村暢子の本を読みながら思いうかべておりました。岩村さんの本にこんな箇所がありました。それは第四章「うるさい親にはなりたくない」の「語らない親たち」(p127~)
「正月に限らず家庭の年中行事の伝えについて主婦たちに尋ねると、ほとんどが『日本人として大切なこと』『私も子供たちに伝えていきたい』と口を揃える。だが、『言葉で話して伝える』と言う主婦は本当に少数しかいない・・・・なぜ主婦たちは子供に言葉で話して伝えようとしないのだろうか。」

ここが面白いテーマになると私は思われます。
ちょっと、それますが、学校のことが出てきます。
「しかし最も多いのは、『学校のお便りにわざわざ書いてあるから、ウチでは話さない』(43歳)、『小学校で担任の先生が授業中に教えてくれたみたいで、プリントに書いてあったから私は言わなくていいと思う』(44歳)をはじめ、『そういうことは、学校で習ってくるんじゃないですか?』(45歳)、・・・学校や幼稚園の教育をアテにして『だから、ウチでははなさなくていい』と語る主婦たちである。発言した主婦の七割は、このような考え方であった。・・・外部情報をアテにして『私が言わなくてもいいと思う』と語った主婦も少なくない。『情報社会なのでインターネットで調べればすぐわかるものだから、いまどき何も家庭で親が言うということにこだわるつもりはない』(50歳)ときっぱり言い切った主婦もいる。親も話してもいいではないかと思うのだが、主婦たちはまるでそれを避けようとしているかのようである。そればかりか、子供にそんなことを話そうとする家族がいると、うっとうしがるような発言をする主婦もいる。『御節(おせち)なんかただ食べていればいいのに、主人は伝えるという意識が強い人なので、いわれとかも必ず子供(10歳・8歳)に言いたがるんです。そういうことを言うのはうるさい人だと思います(36歳)。・・・・』

引用した富岡多恵子の文には、直接言葉によって教わったような雰囲気はないかわりに、身近にしぐさの様子が豊富にあったようです。ここらあたりが、岩村暢子さんの本を解明してゆく手がかりになるのじゃないかと愚考するわけです。もう一度岩村さんの言葉を引用すると「だがさらに言えば、私は対象者の回答(発言・記述)内容もあまり信じてはいない」。

回答の発言や記述を信じておらず。しかも、その回答をする主婦自体が「子供にそんなことを話そうとする家族がいると、うっとうしがる」という状況をどのように考察してゆくか。この本を読んでいると、そういうことにまでいろいろな発想を呼びさましてくれるのでした。そんな選ばれた素材がつまった一冊。あなたの考察をうながされることになる一冊。一年前とはだいぶ状況も変わってきておりますが、時間のふるいにかけてもなお残る、真摯な調査態度がここに浮かび上がるのでした。時代を知る実態調査の見本としてお薦めいたします。
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