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荒野

荒野(文藝春秋) 桜庭 一樹著
税込価格: ¥1,764 (本体 : ¥1,680)
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出版 : 文藝春秋
サイズ : 20cm / 506p
ISBN : 978-4-16-327040-1
発行年月 : 2008.5
利用対象 : 一般

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内容説明

恋愛小説家の父と暮らす12歳の少女、荒野に新しい家族がやってきた。「恋」とは、「好き」とは? うつろい行く季節の中で、少女は大人になっていく…。ファミ通文庫「荒野の恋」に第3部を新たに書きおろし1冊にまとめた。

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コメント・書評

我が家では第一部が人気でした。多分、あの会話を読んだ人はみんなノックアウトでしょう。それはさておき、冒頭に桜庭一樹争奪戦、なんてこと書いて講○社からは、まだ出てない、なんて書いたらナント、書き下ろしで長編がでるそうです。この本と関係ないって?確かに・・・
みーちゃん
Oct 24, 2008 7:46:22 PM
評価 ( マーク )
★★★★★

桜庭一樹を押えろ!っていうのは今の多くの出版社のトップが出す指令じゃないか、なんて思うんです。ファミ通→角川は分かります。東京創元社も納得。新潮社も肯けます。でも、なぜ講談社じゃなくて文藝春秋?なんて思うんですね、私。無論『私の男』での直木賞受賞あってのというのは理解できますが、でもあの本からまだそれほど時間経ってないし・・・

しかもです、装幀が完全にアダルトでしょ。あ、私がここで言う「アダルト」は、「アダルト・ビデオ」から連想される怪しげなものではなくて、ごく普通に大人の読者向け、っていう意味です、はい。まず第一印象が重松清の傑作『疾走』風でしょ。本の作り、カバーの色合い、頁数、紙の手触り、重さetc.装幀は、文春の専属?って思いたくなる大久保明子、写真は大橋愛。

で、タイトルとブックデザインの印象、出版社、直木賞受賞第一作、そんなことから、、てっきり内容もアダルト向けだと思って読み出してビックリ。なんと第一部で登場するのは12歳の少女です。時代の空気を敏感に感じ取った文藝春秋がロリコン狙い?なんて思いました。

とりあえず読み終えて、巻末の注を見て分かったんですが、これって直木賞受賞以前の2005年、6年と『荒野の恋 第一部、第二部』というタイトルでファミ通文庫から出ていたものに第三部を書き下ろして合本したものなんです。それが分かれば、主人公の年齢設定は分かります。でもファミ通文庫としては自分のところで出したかったでしょうねえ。

どんな取引があったのか分かりませんが、何か筋が通らない気がします。せめて第三部の文庫はファミ通で出させてあげて、それも今までのイメージのカバーで、って思います。勿論、合本での文庫は文春でいいんですよ。そういう美しい譲り合いっていうのは出版界にはないのでしょうか。

閑話休題。内容紹介は、文春のHPを見てください。第一部から第三部まで丁寧にかいてあります。量が多いので、コピペはしません。その代り、短い謳い文句は拝借。

山野内荒野、12歳。恋愛小説家の父と暮らす少女に、新しい家族がやってきた。“恋”とは、“好き”とは? 感動の直木賞受賞第一作

です。目次はしっかりと写します。

第一部(2005年6月ファミ通文庫刊『荒野の恋 第一部』を加筆修正)
 一章 ハングリー・アートの子供
 二章 ぼくの小さな黒猫ちゃん
 終章 青年は荒野をめざす
     
    山野内荒野。
    ――十二歳。
    大人、以前。

第二部(2006年2月ファミ通文庫刊『荒野の恋 第二部』を加筆修正)
 一章 恋はおんなをこどもに、男を地下組織にする
 二章 勝ち猫、負け猫
 終章 青年の特権

    山野内荒野。
    ――十四歳。
    大人になる、すこし前。


第三部(書き下ろし)
 一章 恋しらぬ猫のふり
 二章 つぎの花、ポン!
 終章 終わりなき出発

    山野内荒野。
    ――十六歳。
    時は、流れた。

です。各部の終わりの三行がいいです。でも、三部の最後、時は流れた、っていうのだけはちょっとリズムが違うかな、なんて思いますよ、わ・た・し・・・。登場人物についてだけ書きます。数年にわたる話なので、年齢は、あえて書きません。

タイトルの『荒野』は『疾走』のように、内容を象徴するものかと思っていたら、肩透かし。主人公の名前に由来していました。山野内荒野、日本人形みたいといわれるメガネ少女です。実の母を幼いときに亡くし、以来、父親と北鎌倉の今泉台に平屋建ての一軒屋に住んでいます。一小出身。中高一貫の私立校に入学。中学の最初の年、神無月とともにクラス委員になります。成績はフツーですが、胸は大きいです(なんか文脈、変・・・)。接触恐怖症です。

荒野の父親は山野内正慶、ちょっと有名な恋愛小説作家です。容姿は詳細に描かれませんが女性から人気があり、常に複数の女性と関係を持っています。編集担当の女性とも当然のごとく関係します。実際に荒野の面倒を見るのは家政婦の奈々子です。年齢不詳ですが、身長170cmの痩身の、ちょっと男っぽい印象の女性です。彼女は吊り橋効果で、荒野と悠也の間にある想いを解き明かします。

神無月悠也は、五小出身で「氷の神無月」と呼ばれるます。美しい母親の蓉子が正慶と結婚したことで、荒野の兄になってしまいます。中学の最初の年、クラス委員に選ばれることで分かるように成績は優秀。実家は大船駅前の商店街にある眼鏡屋さん。正慶をハングリー・アートの人と喝破するジャズ好きの読書家。五木寛之『青年は荒野をめざす』が愛読書で、人生の荒野を追い求めています。ふむ、やはりタイトルは二つの意味を持ってたのね・・・

実は、我が家の娘たちに人気があったのは、荒野でも悠也でも、ましてや正慶でも蓉子でもありません。奈々子は結構いいところに行きますが、でも及ばない。誰にか、っていうと荒野の学校の女友だちです。

まず、田中江里華です。鎌倉三小出身ですが、我が家の長女は彼女が荒野にかけてきた言葉、「うさまん、食べて帰ろう、にょ」にゾッコン。勿論、私もノックアウトされました。勿論、美少女ですがお屋敷のお嬢様、というわけではありません。鎌倉駅からチョット奥まったところにある一軒屋に、兄弟たちと暮らしています。休日になると荒野と一緒に着物を着て鎌倉市内を歩き、観光客のために鎌倉をそれっぽく見せるバイトをします。男に興味がなく、荒野のことが大好きです。

でも、私は江里華ほど目立ちませんが、湯川麻美がお気に入りです。五小出身ですから、「氷の神無月」のことはよく知っています。とはいえ、特別な感情は抱いていません。だから荒野とも気軽に付き合います。陸上部に所属する運動美少女で、印象としてはクール。どちらかというと奈々子似かもしれません。

阿木慶太という、性格も明るく温厚で友人の多い少年で、中二の時の荒野の同級生が登場しますが、存在感は希薄。もしかして居なくても成り立ったのでは、なんて思います。『私の男』のような破天荒なお話ではありませんが、いかにも桜庭らしい小説で、上手い着地を見せます。

ただし、そこのところが我が家の娘たちには受けなくて、第一部が一番面白かったといっています。ま、第一部には江里華の「うさまん、食べて帰ろう、にょ」という必殺技があるので、当然といえば当然ですが、桜庭にとって嬉しい評価かどうかは難しい。悠也にしても、海外に行くまでのほうが可愛かった、なんて晩熟(おくて)の娘たちは言っています。ともかく、一読を。
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