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限りなき夏
未来の文学
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コメント・書評 |
もしかして私って、プリーストに関しては若い時の作品のほうが好きだったりして。だって、最近の作品て小難しいばかりで、楽しめないんだもの・・・
みーちゃん
Oct 17, 2008 7:38:25 PM
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評価 ( ★マーク )
★★★★
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最近、プリースト作品をよく読むんですが、正直、好きなんだか嫌いなんだかよくわからない状態です。SFテイストというか手法が話を複雑にしていますし、女性を描くのは決して上手ではありません。過去を舞台にするのは、作者の興味のありどころとは理解できても、東洋の端っこの小島に暮らす私にはあまり楽しいものではありません。
特に最近の作品は、芸術的な評価こそ高くなっても、物語自体に明るさやスピード感が感じられず、少なくとも読んで楽しいといったものではありません。ま、芸術的、といわれる多くの作品が同じような特徴をもっているわけで、それが結局読者の純文学離れを加速させているわけですから、自業自得といえば自業自得なんですが。
最後は天然記念物みたいに珍重・保護されてニッチな世界で生残るんでしょう。自尊心ばかり高くて周囲がまったく見えない傲慢な作家と、数少ないことを貴重であると誤解した一部の取り巻きによって支えられた古典芸能の世界、いやだいやだ、そんな愚かで暗い世界・・・
プリーストの作品にはそんな文学的駄弁を弄したくなるような雰囲気があるんですが、それはここまで。造本は国書刊行会らしくしっかりしたもので、カバーも色合いが渋い割にどこか重厚で華やかな印象です。爬虫類的な美しさ、なんていったら装幀担当の下田法晴+大西裕二(s.f.d)は怒るでしょうか。
カバー折り返しには、例のごとく幾分詳細な内容紹介が
ふたりの若い恋人たちが囚われの身になっ た夏の日は、長く伸ばされた一瞬となっ た――過去と未来を彷徨する人間たちの 愛と焦燥をロマンティックかつ技巧的に 綴る2篇のマスターピース「限りなき夏」 「青ざめた逍遥」、狂騒にみちた終末のビ ジョンを描くデビュー作「逃走」、混乱す るアイデンティティをめぐる初期の代表 作「リアルタイム・ワールド」、そして数 千年にわたって戦争状態がつづく世界 〈夢幻群島(ドリーム・アーキペラゴ)〉 を舞台にした美とエロスと眩惑と恐怖に みちた物語4篇(「赤道の時」「火葬」「奇 跡の石塚」「ディスチャージ」)。〈物語の 魔術師〉プリーストの洗練された流麗な 語りが堪能できる全8篇+書き下ろし序 文を収録。
と出ています。暗いカバーに小さな字ですから見にくいのですが、所詮はそんなものでしょう。以下、目次にしたがって各話の原題、初出、簡単な内容紹介をしましょう。
日本語への序文
◆限りなき夏 An Infinite Summer 初出 〈Andromeda 1〉(1976):1988年生まれのトマス・ロイドが1903年に企んだのは、自分の結婚相手を周囲が勧めるシャーロットではなく妹のセイラにかえること。資産家の娘で甲乙付け難い二人の姉妹だが、ロイドは20歳の落ち着いた姉より、17歳の明るい妹が好き。そして1940年・・・
◆青ざめた逍遥 Palely Loitering 初出 〈The Magazine of Fantasy and Science Fiction〉(1979/1):家族と出かけた「フラックス流路公園」。10歳のマイクは親からはぐれたのをいいことに明日橋を渡るが、間違って32年後の世界に迷い込んでしまう。困っていた彼に声をかけてきた若者は、エスティルという女性への思いを告白するが・・・
◆逃走 The Run 初出 〈Impulse〉(1966/5):汎アジア主義者たちとのトラブルが全国規模にまで拡大した。アンダースンの求めに応えて帰ろうとしたロビンズ上院議員のまえに立ちふさがるのは、その汎アジア主義者らしき若者たちの群。車に殺到し、議員を恐怖に陥れた彼らに怒りを覚えたロビンズは・・・
◆リアルタイム・ワールド Real-Time World 初出 〈New Writings in SF #16〉(1972):観測所で孤立しながら所員たちの動向を探る私と妻の間にはいつしか隙間風が。狂気にとらわれた社会の中で、孤立することで正気を保とうとする観察者の私。噂がいつか実体化する社会を見る目は・・・
◆赤道の時 The Equantorial Moment 初出 〈The Dream Archipelago〉(1999):飛来するミサイルや敵戦闘機を監視する建前でジェット輸送機の後部回転銃座に座る私の眼前に広がる果てしないパノラマ。戦争の最中に私の脳裏をかけめぐる想いは・・・
◆火葬 The Cremation 初出 〈Andromeda 1〉(1978):代理でコリン・マーシアの火葬に参列することになったグライアン・シールド。見知らぬ風習の中で失敗を重ねる彼に、周囲は冷ややかな目を向ける。葬儀を終えてマーシアの屋敷に戻った彼に向けられる熱い視線。見知らぬ女性の誘惑は・・・
◆奇跡の石塚 The Miraculous Cairn 初出 〈New Terrors #2〉(1980):シーヴル島を沖合いに見るジェスラを最後に訪れて16年、島にも20年行っていない38歳の私レンデン・クロス。叔父トムと叔母アルヴィが最後を迎えた島には、いやな思い出が沢山ある。なかでも15ヶ月年上の従姉のセラフィナとのことは。そんな島を再訪するのに同行するのは若いベラ・リース巡査部長・・・
◆ディスチャージ The Discharge 初出 〈Scifiction〉(2002/2/13):娼婦たちの手を借りて兵役から逃れた私は、貧しいながらも金を貯め、なんとか好きな絵で生活できるようになった。それでも兵士たちの行動を監視し取り締まっていた黒帽の存在は今でも怖くてならない。警棒片手に暴力を振るう彼らの目を逃れ・・・
訳者あとがき 古沢 嘉通
やはり1970年代の作品と2000年前後の作品では印象がまったく異なります。私のプリースト観は1970年代の作品を読んで培われたものなので、どうしてもシンプルで、在る意味他の人でも書けそうな初期のもののほうが親しみやすい。それが世紀末を境に、なんだか霧の中を彷徨うような印象の作品に変わっていきます。
これを文学的成長・洗練と見る人もいるでしょうが、私には退廃としか思えない。老成は若さには絶対に勝てない、なんて老境に入りつつある私は悔しくても認めざるをえません。巨匠と呼ばれるより、一度しか称される機会のない有望な新人、という言葉の持つ輝きこそが芸術家にとっての栄冠、私はそう思います。 |
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