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素数の音楽
Crest books
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コメント・書評 |
もし君が,指数を表す左肩の小さな文字や,虚数を表すイタリックの小文字の「 i 」を見るとじんましんが出るくらい数学が嫌いだったら別だけど
SnakeHole
Sep 25, 2008 7:05:33 AM
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評価 ( ★マーク )
★★★★
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もし君が,この話をほんとに聞きたいんならだな……というのは何の本の書き出しだったか,ずっと思い出せずにいたんだがついさっき,それは野崎孝訳の方の「ライ麦畑でつかまえて」だと気づいたっていうか,村上春樹訳の方は読んでないんだけどね。もうひとつ,もし君が北陸のほうに旅することがあったら……というのもあって,こっちは友部正人の「トーキング自動車レース・ブルース」であることを忘れたことはない。とにかくこの書評の書き出しを,なんとかこれらどちらかの書き出しの本歌取りというか,パロディみたいにできたら素敵なんぢゃないかといろいろひねくり回したのだけど結局失敗したのである。
もし君が,指数を表す左肩の小さな文字や,虚数を表すイタリックの小文字の「 i 」を見るとじんましんが出るくらい数学が嫌いだったら別だけど(ほら,あんまりうまく行ってないだろ?),例えば数学における難問と言われていた地図塗り分けの「四色問題」とか「フェルマーの最終定理」というのが結構前に証明されたって話は知ってるよ,とか,映画「ビューティフル・マインド」を見て数学者って大変なんだなと思ったよ,というくらいの人だったら,この「素数の音楽」はとってもお勧めの一冊である。
それにしても「素数の音楽」とは実に詩的でイメージの拡がる題名をつけたもんで,数学者たちの見果てぬユメの美しさをあますところなく表現していると思う。これはその素数に関する難問「リーマン予想」に挑んだ,挑んでいる,挑み続ける,これから挑む……人は入ってないか,数学者たちの冒険の記録である。なんつうかな「アムンゼン,スコットの南極探検物語(ただし未完)」みたいなもんである。メインストーリーのリーマン予想もさることながら,この謎を中心にした渦の周縁部(まぁそっち側から言えばリーマン予想が周縁部なんだけど)で起きたコンピュータの発展や量子物理学の確立,現在インターネットで使用されてる暗号方式の話なども興味深いだろう。が,だ。
もし君が,既に「リーマン予想」という難問について1冊ないし2冊に本を読んでおり,その解明に今後の人生全てを賭ける決心はしてないまでもガウスのゼータ関数くらいは理解していて(この時点でおれより上である),今数学の最先端にいる人々がどのあたりまで謎に肉薄しているのか,あるいはどんなアプローチを試みようとしているのか,を知りたいと思っているのであればこの本はまったく役に立たない。
なんかさぁ,そういう核心部分を(数式ぢゃなく)平明な言葉で説明するのが難しいのはわかるんだけど,例えば213ページのようにラマヌジャンの発見した分割数の公式を示し「この公式が弾き出すのは分割数そのものではなく,丸めると分割数になる値だ。後にこの公式に手を加えた分割数そのものを求める式が見つかった」と書いてその式が書かれていないのはなんとも隔靴掻痒だ。この伝で「だれだれがぺけぺけという手法でさらに一歩近づいたが云々」という記述がやたら多いのだが,その手法の中身について具体的にはなんも書いてないことが多いんだよね(お前,それが書かれてて分るのかよ,という突っ込みはなし)。
オレのようにそういうことを感じるムキには,「リーマン博士の大予想 数学の未解決最難問に挑む」(カール・サバー著)の方がストレスのない読み物でありました。まぁサバーの本業がライターなのに対してソートイは自身も数学者なので,シロウト向けに「端折った」説明を書くのは嫌だったのかも知れないんだけど。
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