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世界文学全集  1−04  太平洋の防波堤

世界文学全集(河出書房新社) 池澤 夏樹個人編集
デュラス著
田中 倫郎訳
デュラス著
清水 徹訳
サガン著
朝吹 登水子訳
税込価格: ¥2,940 (本体 : ¥2,800)
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出版 : 河出書房新社
サイズ : 20cm / 600,22p
ISBN : 978-4-309-70944-4
発行年月 : 2008.3
利用対象 : 一般

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内容説明

【毎日出版文化賞(第64回)】仏領インドシナのけだるい風土で暮らす、貧しいフランス人入植者の家族をめぐる2つの物語「太平洋の防波堤」「愛人」と、父の再婚相手を破滅へ追いやる17歳の少女の愛と孤独を描く「悲しみよこんにちは」の3編を収録。

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コメント・書評

瑞々しい青春の物語?いえいえ、いかにもヨーロッパ作品らしい悪徳に満ちた殺人のお話。しかも反省ゼロ。これまたフランス人らしいといえば、らしい。
みーちゃん
Aug 30, 2008 3:53:08 PM
評価 ( マーク )
★★★

ああ、申し訳ありません。本当はデュラスの「太平洋の防波堤」「愛人ラマン」についても書きたかったのですが、読みきれませんでした、っていうか読み通す自信、喪失。いえ、面白くないわけじゃないんです。「太平洋の防波堤」、100頁まで読みました。貧しい家の兄・妹と彼女に惹かれる金持ちの醜男、っていう構図、そして身分差に苛立つ兄っていうの、それなりに面白いんです。

でも、このまま読みつづけても年内に読み終わる自信が全然ありません。それに、池澤夏樹個人編集のこの全集、実は以前出たケアルック『オン・ザ・ロード』も同じ理由で途中リタイア。でも好きなんですよ、ブックデザイン。この厚さで角背の全集というのは、もしかして例がないのではないか、そんなことを思うし、カバーの色も好き。

黄緑というか鶯色に近い色ですが、ちょっと艶やかさがあります。そこに小さく金文字で英語タイトルと邦題と著者名、訳者名を小さく配する品のよさ。思わず長女が「可愛い」と声をあげるほど。そんな装幀は KAWADE DESIGN WORKS 。帯の装画は新田恵。この帯担当に関してはケアルックの時が藤原新也ですから、かなり力をいれてます、はい。

でも、申し訳ありません、収められている三篇のうちサガン『悲しみよ こんにちは』しか読めませんでした。っていうか読むのを絞りました。で、今回は『悲しみよ こんにちは』についてだけ書きます。実は、私、サガンを読むの、今回が初めてです。世代的にはサガン世代といってもおかしくないのですが、読まずに来ていました。

気にはしていたんです。『悲しみよ』もですが『ブラームスはお好き』だって、なんど新潮文庫に手を出そうとしたことか。でも私に残ったのは躊躇い傷ばかり。それならクイーン、クリスティ、マクリーン、グリーン、ル・カレと手が逆方向に伸びてしまう。そんなこんなでウン十年、やっと手にしたサガンなんです。

でも、私が思っていたのとあまりに違う内容に愕然としてしまいました。だって、私はてっきり爽やか系の楽しいお話だとばかり思っていたのですから。出版当時の反響は、巻末の朝吹 登水子の解説に譲るとして、このお話、日本人には素直に受け容れられないものじゃないか、なんて思うんです。これなら桐野夏生が描く女子高生や主婦の殺人、或は殺された東電OLの話ほうが理解しやすい。

第一、さほど金持ちでもなさそうな40歳の父と17歳の娘が仕事も勉強もそっちのけで女蕩しと男遊びにふける、というのが分からない。いや、今なら分かりますがこの本が最初に出た1954年に簡単に理解されたとは思えないんです。ただし、欧米の現在を考えれば、そういう生き方があることは分かります。

特にフランス人の仕事そっちのけでセックスにふけり、妊娠したら国が責任を持って育てる。そういう仕組みを国が認めた背景には、男女のあり方に関する長い歴史があるわけです。だからヨーロッパでは、ある意味、快哉をもって迎えられたというのも分かる。でも、未だに日本では少子化が社会問題視されても未婚の母や代理出産に対する理解は進んでいません。良くも悪くも、日本にはそういう歴史がある。

仕事そっちのけで異性を追いかけているのが生活、みたいな父娘にとって倫理や命の尊さなんて意味をもちません。邪魔者は死ねばいい。そういうセシルの考え方、行動を訳者の朝水はさも分かったように書きますが、あんた、ほんとにそう思う?って言いたくなります。とはいえ1917年生まれの朝水は2005年に亡くなっているので、空騒ぎですけど・・・

でも、サガンの文学の正当性をいうのに「サルトルに愛された」ことをあげるのはいかがなものか。それならサルトルの威光が地に落ちた今、サガンの文学も泥にまみれるのが当たり前。私にいわせれば、あのサルトルに愛された、っていうことは、それだけの作家じゃない、と言いたくもなります。ただし、この作品に含まれる毒は生半可ではありません。愛すべきとは思いませんがスキャンダラスな存在であることは確かです。

最後に、簡単に登場人物紹介。

セシル:二年前まで修道院にいた17歳の少女。主人公で、ともかく勉強するくらいなら誤魔化して男とセックスするのが好き。嘘をつくのも平気なら、人を陥れるのも全く平気。ある意味、悪漢小説の主人公といったほうが分かりやすい。なんども二年前に寄宿舎を出た、とあるのに、468頁には「三年前に寄宿舎を出たとき」という記述がある。正直、こんなミスが出版から50年近く野放しにされてきたとも思えないので、何かの間違い?

父:40歳で、15年来鰥夫(やもめ)、六ヶ月おきに女を替えるそうで、いい女であれば声をかけるし、飽きれば分かれる、それが人生、といったフランス映画によくいるタイプの男。仕事をしている場面はありません。

エルザ:情人(アマン)。赤毛の半商売人で29歳。性格描写皆無。

シリル:セシルのセックスフレンド。法科の学生、25歳。

アンヌ・ラルセン:死んだ母の友人で、42歳。二年前、寄宿舎を出たセシルに趣味の良い服装とか暮らし方、恋の手ほどきなどを教えてくれた魅力のある洗練された女性。遊びや無駄事で日を送るセシルや父親を軽蔑している、とセシルは思う。
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