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私の男

私の男(文藝春秋) 桜庭 一樹著
税込価格: ¥1,550 (本体 : ¥1,476)
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出版 : 文藝春秋
サイズ : 20cm / 381p
ISBN : 978-4-16-326430-1
発行年月 : 2007.10
利用対象 : 一般

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内容説明

【直木賞(138(2007下半期))】優雅だが、どこかうらぶれた男。一見、おとなしそうな若い女。アパートの押入れから漂う、罪の異臭。家族の愛とはなにか。この世の裂け目に堕ちた父娘の過去を圧倒的な筆致で抉りだす。『別册文藝春秋』連載を単行本化。

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コメント・書評

これで直木賞、大本命でしたが内容もそれにふさわしい立派なもの。思わず評も長くなってしまいます。それにしても12歳、時代の一言では片付けられない魅力的な年頃?
みーちゃん
Aug 11, 2008 6:19:59 PM
評価 ( マーク )
★★★★★

桜庭の今までの本のイメージを一新するカバーです。なにより、MARLENE DUMASの装画が大人です。正直、ゲーマーや少年少女といった今までの一樹ファンはヒクかもしれない雰囲気です。現代美術というか、シーレなどの近代美術の系譜上にあるというか、そんなカバー画のデータは

装幀 鈴木成一デザイン室
装画 MARLENE DUMAS
Couples (Detail)
1994 Oil on canvas
99.1×299.7 cm
Marlene Dumas
Private Collection,
courtesy Zwirth & Wirth,New York
協力 ギャラリー小柳

です。無論、文章も違います。『赤朽葉家の伝説』で見せたユーモラスで濃厚なものから、ユーモアと饒舌を除き、一見、軽めの普通のそれになったかのよう。ただし、本の厚さ同様、見かけに惑わされてはいけません。実は私、この本を見たとき、これなら二時間で読めるな、と甘めに予測を立てて予備本を一冊余分に抱えて通勤電車に乗ったわけです。

ところが、これが大間違い。普通なら270頁程度の厚さのなかに、なんと380頁以上が収まっています。100頁読んでも少しも捗らない。中身も同じ。何気にみれば当たり前の文章。ところが、読み始めると若者向けの今までの軽快なものとリズムが違う。粘っこくはないけれど重い。結局、予備本は運んだだけに終わり、桜庭本には三日を掛けてしまいました。

で、お話の内容は、桜庭自身が「近親相姦」もの、と言い切っているので、あえてそれ以上の説明はしません。ともかく、私が最も好きな禁忌もの。私にとっては同性愛以上に大切な(何が?)主題です。おまけに、仕掛けもあります。それらについては、直木賞受賞作でもありますし、書評も多いのでこれ以上、触れません。

ただし、もし私が花や淳悟の立場にいたら、同じことをしたと思います。ほんとうに根拠もない常識という名のお節介ほどムカツクものはありません。「なぜ人を殺してはいけないか」と同じく「なぜ近親相姦はいけないか」も、簡単に答えがでないもの。むしろ澁澤龍彦が喝破したように「それはあまりにも甘美ゆえに権力者のみに許される」という解釈こそが妥当な気がします。

とはいえ、話は単純に甘美を謳いあげるものではありません。禁忌を前面に描くものでは決してない。どちらかといえばエロチシズムは通奏低音のように、全篇を通じて背景に流れ、時に水面に顔を見せ、あるときは深く水底の潜む。その見せ方が、今までの桜庭作品にないほどに微妙で上手です。直木賞受賞も当然でしょう。

実は、私、桜庭の受賞を二日前の書評で予告しています。自慢したいので、あえてここで1/15日にbk-1に投稿した『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』書評のコメントをコピペしておきます。

「私の見るところ、今回の直木賞は佐々木穣『警官の血』と、桜庭一樹『私の男』で決まりなんですが、2004年当時の桜庭はまだまだ子どもたちの支持をうけることしか出来なかったんじゃあないか、これもその域はでていない、そう思います。無論、13歳にしたという設定は凄いんですが」

ちなみに、佐々木穣『警官の血』はハズしました。残念。ま、桜庭に関しては本命だったかもしれないので、エラソーには言えないんではあります。コメントを引用したのには、他の理由もあります。第5章ですが、一人の主人公である花はこの1996年に12歳を迎えます。12歳といえば、ナボコフ『ロリータ』の少女が12歳、『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』の藻屑が13歳、まさに時代です。

話は15年という長きに及ぶものです。それをどう見せるかは、実際に味わってもらうとして、全体は6章構成です。各章のタイトルの「、」で区切られる前の頭を飾る花、美郎、淳悟、小町、はすべてその章の語り手です。話全体の主人公は花と淳悟なのですが、タイトルに名を出す4人を紹介しましょう。年齢は、その章の時代で代表しておきます。

腐野花は2008年現在、24歳です。両親を15年前1993年の夏に地震で亡くしています。当時の姓は竹中でしたが、現在の養父に引き取られ腐野となりました。明日、尾崎美郎と結婚するというところから話が始まります。式場で養父の到着を待つ彼女の姿は、ちょっと違いますが「健気」という言葉があう気がします。

尾崎美郎は2005年現在、25歳です。幼稚舎からの一貫教育で大学まで出て、父親が専務を勤める会社の子会社に勤務しているということからくる育ちのよさもあって、女性からは人気があります。先輩の頼みで合コンの手配をしているとき、派遣で受付をしていた花と出会い、噂の合った彼女と付き合い始めます。

腐野淳悟は2000年現在、32歳です。京都の海上保安学校を出て、北海道の海上保安部の巡視船で賄いを受け持っていましたが、公務員を辞め、東京に来て花と二人で暮らしています。仕事はバイク便の契約ライダーです。花を養うために働いていますが、どこか余裕のある仕事振り。といっても、それは金銭的なものでは決してありません。だから前借りもします。

大塩小町は1996年当時、25歳です。地元の高校を出て札幌の短大に進学、卒業後、地元にもどって北海道拓殖銀行の紋別支店に就職。高校時代Iに出会った二学年上の淳悟と本格的に付き合い始めたのは就職後のことです。そのまま結婚すると本人も周囲も見ていたのですが、花の登場に嫌な予感を抱いています。

他に、紋別では有名な実業家・大塩のおじいさん、大塩を尊敬する地元の警察官・田岡の二名が重要ですが、その理由は本文で確認してください。出版社のWebの案内で、皆川博子がブロンテの『嵐が丘』を例にしながら、「時を越えて読み継がれていく魅力」というのに思わず肯いてしまう、そういうお話です。

最後になりますが、タイトルなどを三段に並べた目次のレイアウトがちょっと面白いので、再現してみました。本とはちょっと違うかもしれませんが、大体の雰囲気は分ると思います。

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