コメント・書評 |
見るところが異なれば、考えるところも異なるということか
みなとかずあき
Aug 3, 2008 11:56:48 PM
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評価 ( ★マーク )
★★★
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別のところでも書いたことがありますが、最近の新書はタイトルで読ませるというか、タイトルほどには中身は面白くないというか、著者が本来その本で書きたいと意図するところと編集者の本を売ろうとする意図にずれがあるように思います。しかもこの『他人を見下す若者たち』は、大きな帯に「「自分以外はバカ」の時代!」などとさらに購買欲をあおろうとしているのが見えてしまうようなコピーまでついているので、最近の若者の行動様式や思考を取り上げた他の新書と同じ軽佻浮薄な新書がまた1冊増えたのかと思わせられなくもありません。 教育心理学を専門とする著者がこの本で言わんとしていたのはむしろ、目次を眺めると見えてくるのかもしれません。 第1章 感情が変わった 第2章 やる気が低下する若者たち 第3章 他者を軽視する人々 第4章 自己肯定感を求めて 第5章 人々の心に潜む仮想的有能感 第6章 自分に満足できない人・できる人 第7章 日本人の心はどうなるか キーワードは、「仮想的有能感」です。もちろん著者の造語です。「過去の実績や経験に基づくことなく、他者の能力を低く見積もることに伴って生じる本物でない有能感」(118頁)であり、現代の若者の行動傾向を説明できると考え、いくつかのデータを紹介しながら説明しているわけです。そして、そのような感情や行動傾向が現代の若者だけでなく、今後日本人全体に広まっていくのではないかと警告しているのです。 研究データの多くは著者や著者が指導している研究グループのものなので別途検証する必要はあるのでしょうが、第1章、第2章などで述べられている現代の若者の姿を読むと誰にも心当たりがあるのではないでしょうか。それだけに、この本で語られていることはある程度納得のいくものではあります。 しかし、これは私が精神医学・医療を生業としているから感じるのかもしれませんが、「仮想的有能感」とわざわざ名づけるべきものなのか、とも思ってしまいます。精神医学の領域を見渡してみれば、「自己愛パーソナリティ障害」という精神障害があります。「仮想的有能感」とまったく同じとは言いませんが、かなりの部分を「自己愛パーソナリティ障害」で説明できるようにも思います。 著者もその辺りは一応考えているようで、「自己愛」や「自尊感情」などすでに知られている概念と「仮想的有能感」の異同について検討はしていますが、やや説得力に欠けるように思われます。敢えて、新語を作り出してまで訴えたいものなのかどうか、学者さんたちは、「これは自分が見つけたものだぞ」というのがないとやっていけないのでしょうか。 もっとも私も精神医学を生業としていながら、わりと近い分野である(教育)心理学でこのような概念が提出されているということをこの本を読むまで知りませんでした。知らなくても仕事はできてしまうのですが、同じようなことを考えているのだなあということを知らせてもらえただけでも、少しこの本の価値はあるようにも思います。
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