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夜は短し歩けよ乙女

夜は短し歩けよ乙女(角川書店) 森見 登美彦著
税込価格: ¥1,575 (本体 : ¥1,500)
出版 : 角川書店
サイズ : 20cm / 301p
ISBN : 4-04-873744-9
発行年月 : 2006.11
利用対象 : 一般

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内容説明

【山本周五郎賞(第20回)】【大学読書人大賞(2010)】「黒髪の乙女」に片想いしてしまった「先輩」。ふたりを待ち受けるのは、奇々怪々なる面々が起こす珍事件の数々、そして運命の大転回だった…。キュートで奇抜な恋愛小説in京都。『野性時代』掲載を単行本化。

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コメント・書評

これは我が家での評価で、もしストーカー先輩がいなければ間違いなく五つ★。好みというのは恐ろしいもので、もし羽貫さんがもっと活躍して樋口さんと結ばれたら★、さらに追加。
みーちゃん
Jul 9, 2008 8:00:03 PM
評価 ( マーク )
★★★★

出版から二年経っても図書館の待ち人数が殆ど減らないベストセラー、なんて書いちゃっていいんでしょうか。ま、実際だから仕方ないか。実はこの本、書店で見て存在は知っていましたが、あまり気にしていませんでした。読まれている、と知ったのも昨年末、『有頂天家族』のあまりの面白さに「うへ」と言ってしまった、そのときのことです。

さっそく調べると、これがなかなか凄い。殆どフィーバー状態です(私じゃなくて世間様が)。森見作品はすべて人気なのですが、なかでもその頂点にあるのがこの本。感心していましたら、大学生と大学受験勉強中の娘たちは、大分前から気になっていたそうで、通学の電車の中で読んでいる人、学校の仲間で本を手にしている人もかなり見る、といいます。

待つこと半年、やっと図書館から本が届いたと連絡がありました。待ちかねたぞ、武蔵!と早速、本をチェック。

カバー画で言えば、まず中村佑介描くところの乙女の服に線がないのがいいです。顔や脚、腕には外形線があるのに、服は色だけで見せる、それが粋。李白の乗っている電車は基本的に縁取りなしですが、そこでは一階部分中央の暖簾の色がいい。そして李白という字。白抜きなんですが、それが風にゆらめいてすこし傾いている、その芸の細かさがたまらない。装丁は高柳雅人(角川書店装丁室)。

一時は、藝大を目指そうとしたこともある長女は、なにより中村描く乙女の姿に惚れ込んでいました。ただし内容については厳しい。「ともかく、先輩が嫌い、あれ、いなくてもいいじゃん」とバッサリ。「絶対に浴衣の人がいいよ」とは高校生次女。「あんな先輩なら東堂のほうがいい」「羽貫さん、やっぱり美女でしょ」と私。みんなで「ソウダソウダ」。いやはや「有頂天家族」ではあります。

話ですが、京都を舞台にした明るく楽しい、ユーモラスでちょっと怪しい恋の run & chaise とでも書いておきましょう。人気本なのでこれ以上内容については触れず、主な登場人物だけ紹介しておきます。

まず主人公です。最初の語り手を主人公にしてもいいのですが、我が家で不人気のこの男をそうとは思いたくない。あくまで恋される側の乙女を主人公としておきます。京都の女子大生。嶽本野ばらの小説に出てくる主人公風の口調で話します。ともかく世間知らず。何だか世の中を漂っているような感じの美女で、お酒が大好き。飲みっぷりはウワバミですが、ともかく可愛らしい。

その乙女の乳をもんでしまうセクハラ親爺が東堂さん。このお話、登場人物がみんな年齢不詳。こども、大学生、20代後半、50歳以上、70歳以上、くらいの分類しかできません。で、藤堂さんは50代でしょう、多分。錦鯉を育てて売ることを商いとする中年?でバブル期には稼ぎまくったものの、その後は鳴かず飛ばず。今年に入って彼の錦鯉センターを竜巻が襲い、「優子」「次郎吉」などを吸い上げられ、経営は破綻寸前。それでも毎晩のごとく先斗町に現れてはお酒を飲んでいます。

その東堂さんを追い詰めているのが李白さん、金貸しです。年齢は70歳以上、イメージ的には仙人。木屋町先斗町界隈の有名人で、カバー画の3階建て電車は彼の乗り物です。この老人も大酒のみ。彼と飲み比べて勝った者はまだいない、そういう爺さんです。金貸し=陰気、というイメージはこの人には当て嵌まりません。ネアカの金貸し。

東堂さんの魔手から乙女を救ったのが、20代後半の羽貫さん。絶世の美女です。我が家の一番人気。歯科衛生士をやっています。酒豪ですが、乙女のように「飲んでも酔わない」とは違って、心地よく酔います。酔いつぶれもします。でも乱れた印象を微塵も与えません。私だってこういう人とお友だちになりたい。

羽貫さんといつも一緒にいますが、恋愛関係にはないようなのが樋口さん。いつも色褪せた浴衣を着ている謎の人で、葉巻を吸いながら空中を浮遊するという技を見せるというのが凄いです。総じてこのお話、暴力がでてきませんが、樋口さん、本気だせば強そうです。はっきり書かれていませんがイケメン。羽貫さんか乙女のどちらかと結ばれて欲しい、それが我が家の悲願です。

ほかに、古本市の神と呼ばれる本のことなら何でも知っている天才美少年がいます。小学生でしょう。乙女と仲良くなるのが嬉しいです。それとパンツ総番長、偶々、あることを一緒に体験した女性と再会するまではパンツを替えない、と宣言する大学生です。それと似ているのが紀子さん、偶々、あることを一緒に経験した男性と再会するために象のお尻を制作した女子大生。

最後が先輩、乙女が通う大学のクラブの先輩で、彼女のあとを付け回すストーカー、我が家では人気云々以前の存在。この話の恥部でしょ。

さてこの物語の評価ですが、我が家は『有頂天家族』という大傑作から入ってしまいました。もし、『有頂天』がなければ、もっと点数をあげた、そう思います。それと、このお話を書いたときに森見に、『有頂天』の構想があったかどうか。それによっても評価は変わりそうです。面白いお話ではありますが、先輩の存在が足を引っ張り『有頂天』の高みまでは昇れなかった。森見に関して言えば、出版順に読んでいくべきかもしれません。

最後に各章の簡単な、あまりに簡単な紹介と初出。

目次

第一章 夜は短し歩けよ乙女:乙女と老人の飲み比べ。

第二章 深海魚たち:乙女の思い出の絵本をめぐる争奪戦。

第三章 ご都合主義者かく語りき:乙女の大学の学園祭での珍事。

第四章 魔風邪恋風邪:古都を覆い尽くす風邪を越え、乙女は運命の人と結ばれるのか。

初出「野生時代」2005年9月号、2006年3、10、11月号

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