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エヴリブレス
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コメント・書評 |
もしこれが瀬名のデビュー作だったら、注目されずに終わったのではないでしょうか。ある意味、限界が見えたのかな、そんな気がします。同じ話なら鈴木光司に軍配
みーちゃん
Jul 4, 2008 7:27:12 PM
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評価 ( ★マーク )
★★★
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瀬名秀明、といえば『パラサイト・イヴ』、そう思っている人が多いんじゃないでしょうか。『八月の博物館』『BRAIN VALLEY』といった作品もありますが、『パラサイト』レベルのインパクトがあったかというと疑問です。第19回日本SF大賞受賞を獲った『BRAIN VALLEY』にしても、文学的な感動があったかといえば、それはありません。
とはいえ、著者名が素敵なので、ついつい新刊がでると手を伸ばしたくなる、そういう作家ではあります。今回はTOKYO FM出版から出された本という珍しさや、「ラジオとのコラボレーション、しかもメディアをクロスし、様々な形でこの作品が展開されること、そして女性の視点から書いたラブストーリーであるということ、この2点が、自分には経験の無い新しいことへの挑戦だった」という著者のコメントもあって、興味津々で読み始めたのですが・・・
まず、凡庸、というのがピッタリではないでしょうか。まず、こんなに小難しい設定にしなくても、瀬名が言いたかったことは十分に書けるわけで、以上では少しもありません。作品全体に靄がかかったような曖昧さ、不透明さがあって、それがとても鬱陶しいのです。それが文学的な仕掛けであればともかく、むしろ未熟さが露呈した感が強い。
まず登場人物に魅力がありません。基本的には時間を超えた想い、を描くお話なんでしょうが、シンプルなテーマを時間をずらし、世界を二層にすることで深みを出そうとした、それは分ります。でも、その仕掛けそのものが夾雑物となって足を引っ張ります。仮想と現実世界が曖昧になった未来、というのが少しも効いていません。
だって、曖昧なのは作者の表現であって、二つの世界は厳然として別個に存在しつづけていますから。境界線の曖昧さ、なんていうことになるとP・K・ディックという巨人がいますし、そういった世界をロマンチックに、しかもハードに描くという点では神林長平という天才が日本にはいるわけです。その二人の作品、とくに神林の世界に親しんだ私には、この話、甘い、としか思えません。
時間を超える愛、となれば鈴木光司の第二回日本フアンタジーノベル大賞優秀賞受賞作『楽園』では「一万年の時と空間を超え、愛を探しつづけ」ているわけで、あそこでも光と海がキーになっていたと思いますが、あのスケール感には到底及ばないし、空気が透明になっていくような爽やかさもないわけです。
舞台が大和郡山で、15歳の杏子がトシオという高校の先輩を好きになる、という冒頭は、凡庸ではあっても決して悪いものではありません。帰宅前に、駅の近くの店で自治会の高校三年のメンバーと一緒に静に時間を過ごす、というのも恋愛感情が表にでないため、地方性を感じさせて好ましいとさえ言っていい。
ま、そのまえに八歳の杏子がトシオと一緒にいるところもありますが、はたしてこれがこの話に不可欠なエピソードだったか、私はなくてもよかったと思います。シュレディンガー『生命とは何か』に感銘をうけ、進路を決めた、とありますが、そこもきちっと描かれているとは思えません。言葉だけが出てきますが、描写はない。
大学院で素粒子理論を専攻した主人公の就職先が証券会社、というのも果たして有効な設定だったか?クオンツとして研究、理論を提示し、システムを構築する仕事をしている、というのも失敗でしょう。8歳、15歳、27歳、31歳、36歳から99歳まで様々な年齢で話の中に登場し、久保杏子、柚希、瑞季と血を繋げていくのも、純愛ものとしてはマイナス。おまけに、世界がその時間を経過し気がしません。
山口昌弘の装画・装幀もありきたりですが、それは内容の反映といっていい。ともかく、あらゆるものが中途半端。安直なコラボレーションはいけません。直木賞?絶対に取れないでしょうね、他の賞も無理。良くも悪くも瀬名という作家の限界を見せてしまった作品、と言ってもいいでしょう。期待してたのに・・・ |
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