コメント・書評 |
だれが本書を正しく読み解き、評価できるのだろうか。万人向けではない。チャレンジ精神旺盛な方向けの本である
JOEL
Jun 12, 2008 9:22:42 PM
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評価 ( ★マーク )
★★
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本書は、『太陽の帝国』の映画化によって広く知られるようになったJ・G・バラードの代表作のひとつである。今や、イギリスの現代文学史を理解するのに避けて通れない作家であるバラード。しかし、通俗的な見方で近寄る読者なら、軽く跳ね飛ばしてしまうおそろしい力量を持つ。
バラードは60年代のSFシーンに、ニューウェーブというジャンルをひっさげて現れた。それまでのSFが外的宇宙に関心を向けていたのに対して、内的宇宙へのまなざしを強調し、SFに新たな次元を切り開いた。『結晶世界』をはじめとする特異な世界観は、熱狂的なファンを生みだした。
バラードは、そこにとどまらず、実験的な作品を書き上げた後、70年代に、テクノロジー3部作といわれる作品群をものにした。本書は、このテクノロジー3部作の中心に位置する。 人間は自然界から遠い存在となったが、身の回りに生み出された人工的空間にすっかり適応したとする。その解釈を文学的に表現して見せたのが、この3部作である。
この3作品は、各々個性が強く、実はひとくくりにするのがむずかしい。ただ、現代社会を舞台に、人間とテクノロジーの関係性を描いて見せた1点のみにおいて、まとめて理解される。
本書は、自動車という現代を象徴する存在と人間の抜き差しならない関係をテーマにしている。自動車が衝突する瞬間にエクスタシーを感じるという倒錯した世界が展開される。それも、これ以上ないという濃密な描写で。ほとんどの人は、ついていけないだろう。著名な作品だからといって、必死に食い下がろうとしても、振り落とされてしまう。そのくらいアヴァンギャルドな作品である。
3部作を構成するほかの作品『コンクリートアイランド』などは、本書とくらべれば、よほど読みやすい。そのために習作扱いされることもあると聞くが、本書にはじき飛ばされた人には、むしろ向いている。
バラードの作風は年代ごとに異なる。そのことを理解するのに、本書を読破するのは必須なのだろうが、途方もないエネルギーと忍耐力と倒錯的世界を受け止めるキャパシティを要求される。 おそるべき作品なのだろうが、決して万人向けではない。正直なところ、バラードには白旗を揚げざるをえない。 |
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