 |
エヴリブレス
|
コメント・書評 |
テクノロジーの先にもロマンスがある。そう教えてくれる著者は、相当のロマンチストと見た。
つきこ
May 24, 2008 11:48:21 PM
|
評価 ( ★マーク )
★★★★
|
理系うんちく満載かと思ったら肩すかし。セカンドライフの提灯もち小説かと思いきや、さにあらず。当初寂寥としていた仮想空間「BREATH」で立ち竦んでいた主人公の分身・アバターは、後に喋り、歌いだす。その姿はむしろニコニコ動画の初音ミクか。伝わらないと知りながらも、懸命に相対性理論のすごさを伝えようとした教師の言葉に影響された主人公京子は物理を学び、金融工学の専門家としてキャリアを踏み出した。そんな京子の一生と共に、変化し続ける仮想空間を描きます。
生命とは何か、未来を定義するとはどういうことか。
淡々とした筆致で描かれるのは、時間や生命の定義にまで踏み込んだ壮大なロマンス。理系的要素は著者の大変魅力的な部分なのですが、そういったことはちょっと脇に置いといて。(わかる人は楽しんでください。わかる人にはきっと楽しいだろうと思います)「ずっとどこまでも歩いていこう」なんて口走っちゃった男の子と、その言葉を信じた女の子の想いは仮想空間に引き継がれる。ところが京子はある時を境にアバターと決別し、アバターとの決別と時を同じくするように、金融工学から生命科学への道を歩みだす。未来を規定することは、生命を規定すること。ここでもやっぱり著者の言わんとすることは、わかったようでわからない。けれどそこは永遠に手の届かない、憧れの人のアバターも生きる場所。本体を差し置いてよろしくやっちゃったりしてない?そう思い始めた時、アバターは単なる分身であり続けるのだろうか。
話したこと全てが記録に残るような、twitter標準装備とはこんなものかと思える未来まで描き、科学オンチにもわかることはただひとつ。進化を促したのは、そうあれかしと願った人の想いだということ。理系要素はあれど、”想い”は伝わるのかを描き、限りなく一般小説に近い味わい。
思いではなく”想い”。そこは永遠の場所。世界のはてを求めてともに手を取った時、永遠に終わらない恋が始まるのかもしれない。想いによって定義は変わる。恋の定義は?ラストは想像力を喚起して、とってもロマンチック。
そしてもうひとりの主人公といえるのが「BREATH」。「BREATH」とは何か、定義は。定義によって世界は塗り換わる。技術の進歩は常に暗黒面を伴ってきた。例えば携帯電話。今や必需品だけれど、誰でも簡単お手軽脅迫ツールとしても、遺憾なく威力を発揮している。暗黒面でなく、光を。明るい未来を指向する人には思いもよらない極悪非道なやりくちを描く代わりに、著者はロマンスを描いた。仮想世界が終わらない恋を永遠にする、光に溢れた明るい場所であれかしと。
|
|
|
| 現在の投票
はい:3人(100%)
いいえ:0人(0%) |
|
|
|
|



|