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政局から政策へ  日本の〈現代〉
日本政治の成熟と転換

政局から政策へ(NTT出版) 飯尾 潤著
猪木 武徳編集
北岡 伸一編集
坂村 健編集
松山 巖編集
税込価格: ¥2,415 (本体 : ¥2,300)
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出版 : NTT出版
サイズ : 20cm / 290p
ISBN : 978-4-7571-4094-3
発行年月 : 2008.3
利用対象 : 一般

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内容説明

中曽根・竹下内閣から小泉構造改革まで、日本政治の大きな流れを20年のタイムスパンで振り返り、政治の「現代」を検討。現在に至る変化の軌跡をたどり、有権者が「いま」立っている地点を確認する。

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コメント・書評

転換期に差し掛かった日本の政治と行政を活写した名著登場!
塩津計
May 16, 2008 9:03:20 PM
評価 ( マーク )
★★★★★

日本の現代政治を語らせたら最高の語り部である飯尾潤教授の最新刊。名著『日本の統治構造 官僚内閣制から議院内閣制へ』が現代日本の政治構造が議院内閣制の本筋を逸脱した「官僚内閣制(行政情報を独占する官僚組織が国会と内閣を手玉に取りつつ、政策の企画立案から執行までを独占する制度。政策の失敗は時の内閣に押し付けて自分達は頬かむりするという極めて官僚にとって都合のよい制度で、その欠点が90年代に表面化し、日本の政治は金融不良債権処理が出来ず機能不全に陥った)と「省庁代表制(各官庁が官庁ごとに組織した業界団体を通じて国民の意見を吸い上げ国政に反映させる制度。国民の声は、あくまで生産者が組織する「業界」を通じてしか国政に反映されないので、消費者の声は基本的に日本では無視もしくは黙殺される。また業界に不利な情報は「国益に反する」として隠蔽されがちで、しばしば後になって大問題に発展しがちな制度でもある)ことを喝破した飯尾教授が、これを主に中曽根内閣以降の日本政治史に投射しつつ、最近の日本の政治の歩みを分かり易く解説した本。前著が概念の解説中心の「理論編」とすれば、こちらは政局分析中心の「実践編」とでも言えようか。

それにしてもやはり飯尾教授の著作だけあって、随所にキラリと光る分析がある。

例えば「官僚内閣制」では、本来、政治家の指示を受けて行政を執行するはずの官僚が「政治化」し、しばしば政治家を見下して「我こそが日本国を指導する指揮官なり」と場違いな思い上りをして国民生活に過度な介入をする矛盾(城山三郎のようなバカ作家が、こうした思いあがった官僚を英雄化し、司馬遼太郎が批判するところの日本に根強い「秀才信仰」をむしろ煽るような本を乱造するものだから始末が悪い)。

本来、政治とは国民の声を受けて行うものであり、選挙は国民の声を国政に反映させる重要な機会なのだが、戦後ながらく最大野党の日本社会党が社会主義革命を妄想する腐れ集団で、これを見放した日本国民がひたすら自民党を政権の座につけ続けた結果、政治が大幅にゆがみ、何時しか国民は政策を議論することを忘れさせられ、政治といえば自民党内の人間関係を「天下取り」を目指す戦国絵巻に模した「政局ドラマ」のみという体たらくだったという指摘(政策論争は、あいかわらず資本主義かマルクス主義かの不毛な神学論争のみで、大きな政府か小さな政府か、高福祉高負担か自由主義に基づく上げ潮政策か、高福祉政策を追求するなら消費税はどこまで上げるか、国土の均衡ある発展という美名の下に行われる過剰なバラマキ政策は日本のためになっているのかという具体的政策論争は国民の間で議論されなくなってしまっていた)。

戦後の高度経済成長はもちろん日本人の努力もあるにはあったが、それ以上に、東西の冷戦構造の中で、世界の支配者アメリカ様が、日本を共産主義の防波堤と位置づけて下さり、その結果、アメリカと言う巨大市場を日本の工業のためにかなり鷹揚に開放してくださり、アメリカの先端技術を金さえ払えば幾らでも売ってくださり、その過程で日本がかなりえげつないことをして欧州が立腹しても「東西冷戦の大義」のため欧州を黙らせ、日本の国際社会への復帰を全面支援して下さったことが日本の高度成長実現に非常に大きく貢献したこともきちんと書いてある。

上記の「恵まれた国際環境」が、冷戦の崩壊と中国のグローバル化の中で消滅したという指摘も考えさせられる。それまでは、日本はアジアの唯一の先進国として、いわば文字通り「アジアのゲートウエイ」であって、日本は東西を結ぶ結節点に位置するという大変有利な立場に位置していたわけだが、これが冷戦の崩壊で消滅し、欧米諸国は日本の頭越しに大規模にアジア、特に中国と直接結びつくようになったというわけである。これはバスコダガマの喜望峰ルートの発見が地中海貿易を独占していたヴェネツィア帝国の存立基盤を根底から揺さぶったことに似て、日本の将来に大きな影を落とすことになりうる事態である。

現代の日本が「行政依存人」と「経済自立人」の2派に分かれているという視点も鋭い。行政依存人とは税金で徒食する人々、公共事業に依存する土建屋、スーダラ生徒を集めた駅弁大学(地方の非帝大系国公立大学)の教師、肥大した公益法人の従業員、政府からの補助金で暮らす人々を指す。一方、経済自立人とは「普通に働いて、その対価として給与を得ている人々」で、要するにサラリーマンのことである。そして最近の政治現象、小泉純一郎首相、田中康夫長野県知事、橋下徹大阪府知事の誕生は、要するに「政治に特定のコネのある人ばかりが得をするエコひいき政治にノー」という経済自立人の不満が背景にあるという指摘には大きく首肯できる。

山岸俊男北海道大学教授を引用しつつ現代の日本が、それまでのムラ社会的「安心社会」から透明なルールによる統治を重視する「信頼社会」へと移行しつつあるという視点もよい。下手に「全員一致社会から法律主義による多数決社会へ」などというと「法令遵守が日本を壊す」などというあらぬ反撃を受けかねない。言葉の選択も非常に重要と言う意味で「信頼社会」は良い言葉である。

自民党政治のドラマも面白い。小沢一郎より従順な小渕恵三をかわいがる竹下登への小沢の反発が自民党の分裂を招いたという解説。竹下の支援を受けて首相になったものの、圧倒的多数を背景とした数の政治しか知らない小渕は参議院での少数与党転落という未曾有の事態を前に孤軍奮闘し自滅してしまうという解説。その後、幾多の星霜を経て、自民党の救世主として彗星のごとく政権の座についた我らがヒーローにして今世紀最大の天才政治家小泉純一郎の最大の強みが「勝ってよし、負けてよし」という彼の言葉に象徴される「必ずしも勝てるとは限らなくても、とにかく攻めてみるというところにある」という解説。どれをとっても秀逸である。
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