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走ル
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コメント・書評 |
読み進めていくにつれて読者と主人公の歩調があってくるから不思議なのです
どーなつ
Apr 11, 2008 12:22:42 AM
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評価 ( ★マーク )
★★★★★
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「21世紀日本版『オン・ザ・ロード』」(読売新聞)と評された、文藝賞作家の青春小説! 授業をさぼった僕を乗せて自転車(ビアンキ)は、ひたすら北へと走る。
著者は03年、17歳の若さで文藝賞を受賞した経歴を持ってらっしゃいます。この受賞作の「黒冷水」、私はもちろん読みました。兄弟間のドロドロとした黒い負の感情が本を通して伝わってくるようで、寒気すら感じるかなり病んだ気持ちになる作品でした。これを17歳で書き上げたか、と当時はかなりビックリした記憶があります。 その著者の新作がこの「走ル」であります。どうやら「黒冷水」の後に「不思議の国のペニス」という作品を書き上げておられるようで(これは恋愛もの?)、本作「走ル」は3作目にあたる作品になります。 あの黒冷水を書いた人、どんな暗い作品を作り上げたのだろう、と思いきや、これが意外や意外、なんのてらいもない普通の青春小説だったので、ちょっと驚きでした。 あの黒冷水を書いた人がこのロードノベルをよくかけたなぁ、とまたまた感心。どういう心境の変化があったのか、黒冷水の暗い気持ちを汗で全て振り落としてしまえるほど、爽やかで無心なお話だったのです(受賞作があまりに強烈だったため、どうしても比較してしまいました)
お話はいたって単純なものです。目的地もなく全てが「なんとなく」で進んでいってしまうのです。 陸上部の朝練の最中、自転車(通称ビアンキ)でジュースの買出しに向かった主人公ですが、なぜかそのまま彼は旅に出ることになってしまいます。 主人公の言葉を借りるなら、 <なんとなくビアンキを掘り起こし、なんとなく学校まで行ってみて、なんとなく時間つぶしで北に走っていったらこんなところまで来てしまった> ということになります。 そう、計画性もなく、もちろん目的地もなく、全てがその場の流れで動いてしまっているのですが<なんとなく>を多様しているわりに、主人公が進んでいる距離は<なんとなく>ではかたずけられない長距離です。国道4号線を北上し、野宿を続けて青森までたどりついてしまうのですから。
ロードムービーというジャンルの映画がありますが、私はほどんど見たことがありません。けれどイメージとして旅の最中に人との出会いがあり、別れがあり、いいことだけじゃなかったけれど、目的地に辿りつくまでに、主人公はとても大きなものを手に入れ成長していた、というものを想像します。出会いこそが旅の醍醐味ではないかと思うのですが、驚くことにこの作品にはそれが一切ありません。 途中で交番で道を聞いたりなど、人との接触はありますが、それ以外は全く独り旅です。彼が唯一東京と繋がっている瞬間は、携帯メールでした。それで彼女や友人たちとほんの一言二言メールを送りあうだけです。 全くなんなんだこれは、という感じなのですが、読み進めていくにつれて読者と主人公の歩調があってくるから不思議なのです。誰かと同調するのではなく、これはあくまで彼の旅であり、むしろ誰かと並んでまったりしてしまうと、途端にこの作品の魅力が失せてしまう気がするのです。 朝日新聞に載った著者様のインタヴューを読んで、さらにこの作品の深さを実感しました。 【今の日本、誰ともしゃべらなくても生きてゆける。出会いのある旅の方が現実味がない。でも旅を語る相手は欲しいし、浅いつながりの人ほど本当のことを話せるのでは(朝日新聞より抜粋)】 看板を見て、――<●●まで3キロ>――そこへたどり着いて、そうするとそこにはまた新しい看板があって、また自転車を漕いで、次へ次へその先へ・・・・。目的地を決めずひたすら漕ぐ。 初めて読んだロードノベルでしたが、私にはピッタリでした。次の作品も楽しみな作家さんです。 |
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