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てのひら怪談
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ビーケーワン怪談大賞傑作選
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コメント・書評 |
800字書評【コレクター】
仙人掌きのこ
Dec 17, 2007 9:50:37 PM
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評価 ( ★マーク )
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「私、コレクターなんですよ」 良く通る低い声で話しかけられたのは、古書展の帰りにふらりと立ち寄った小さな酒舗でだった。永年探していた獅子元蜂蝋の『世界綺想生物大全』を抽選の末に勝ち取り、独りでその祝杯をあげようかというタイミングだったので、さてはこれが目当てかと思わず鞄を引寄せた。が、逆に男はふところから一冊の本を取り出し、差し出してきたのだ。 黒い表紙のすこし縦長の本。男にうながされて表紙を捲ると、そこには五百円玉の倍ほどの穴があいていた。何だこれはと覗こうとすると、ヒョッコリ赤い玉が現れアッと思う間もなく引っ込んだ。直後、穴の中から大勢の子供の笑い声が聞こえたような気がした。 いまのは酔いの見せた幻か。おそるおそる頁をめくると、今度は鶏卵大の石が穴に嵌めこまれていた。……鉱物図鑑?いや、違う。磨き上げられた石の中には水がたたえられ、一瞬、魚影が翻ったのだ。その後も頁を捲るたびに、奇妙なものが現れた。 羽根をふるわせる絶滅した鳥のイラスト、艶めかしい女の太もも、美味しそうな匂いまで漂ってくる焼き貝。いきなり何の動物かわからない唸り声とともに本が揺れた事もあった。あまりの事の連続に、私は不思議だと思う間もなく頁を捲り続けた。 「如何ですか。これらは皆、泡沫のように消えてしまう定めのもの達だったのです。私はそんなカケラを集めているのです」 驚きのあまり、それはタイヘンですね……と間の抜けた相槌をうつと、男は眼鏡の奥でにんまりと笑った。 「いいえ、自ら集まってきてくれるのですよ。とても良い方法をみつけたので。どうです、貴方も……」 その先の記憶はない。気がつくと独りで夜道を歩いていた。苦労して手に入れた本はひどく色褪せて見え、男から聞いたあのコレクションに加わる方法を頭の中で反芻していた。
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当初はここまでで終るつもりだったが、「てのひら怪談」を知らない方にとっては何の事だかわからない、書評の体をなしていないように映るだろうと思い直した。以下、蛇足と承知のうえ記す。
「てのひら怪談」はオンライン書店ビーケーワン主催の「ビーケーワン怪談大賞」応募作100編を収録した怪談集である。400字詰め原稿用紙2枚、800字以内という制約のなかで怖い話、不思議な話、奇妙な話が語られる。それらは狭義の怪談の枠を超え、作家の数だけ個性的な小宇宙が生まれている。その多彩さは、ぜひ手にとって確かめていただきたい。 評価なしは前回に引き続き拙作を収録していただいたからで、内容は自信をもって5ツ星をつけてお薦めしたい。なお、ビーケーワン怪談大賞は毎年夏に開催されるオンライン公募企画である。800字以内であれば、誰でも参加できる。来年はあなたも、是非。 |
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