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川上弘美
はじめての文学
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内容説明
小説はこんなにおもしろい! 文学の入り口に立つ若い読者へ向けたアンソロジー。熊にさそわれて散歩に出たり、女友達と裸エプロンにチャレンジしたり。日常からちょっぴり不思議な世界への扉をひらく13編を収録。
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コメント・書評 |
あまり読んでいなかった初期の作品に驚き、でした。なんていうか、神話を読んでいるっていうか、深さを感じます
みーちゃん
Aug 29, 2007 7:21:24 PM
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評価 ( ★マーク )
★★★★★
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知り合いの画家さんが川上弘美ファンなんです。そんな関係で読み始めた作家ですが、正直、私にとっては掴み難い人ではあります。幻想的なというか、奇妙な味の小説群があります。どちらかというと、以前の作品にこの傾向が強く、最近は恋愛小説が多い、というのは一見、事実のようですが、そう簡単ではありません。
ま、そう考えたくなるのは、ヒット作ではあったものの私自身は気持ち悪くてしかたがなかった『センセイの鞄』が頭にあって、私の中でははっきりと『センセイの鞄』以前、以降というのがあるわけです。で、それは本当に正しいか、となれば川上の全作品を読むに若くはないわけですが、それは今の私にはできない。そんな時に、作家の全貌が窺えるかもしれないこういうシリーズは助かるわけです。
親方日の丸を連想させて、すっきりはしているものの、どこかきな臭い感じのブックデザインは、大久保明子。数少ない本文挿画は吉富貴子(平凡社刊『パレード』より再録)です。ちなみに、( )の出典ですが、底本的な扱いで、初出ではありません。つまり、ここに注目しても、彼女の作品の時代的な変遷を伺うことはできません、うーん、なんのこっちゃい!
以下、簡単に各話の紹介。
・運命の恋人 (『おめでとう』新潮文庫 2003年7月):恋人が桜の木のうろに住みついてしまった。毛深くなり手に水かきもできた彼は、それでも会社勤めをしながら・・・ ・神様 (『神様』中公文庫 2001年10月):くまにさそわれて散歩に出る。三つ隣の305号室に最近越してきた、昔かたぎらしいくまと川原に出かけた私は・・・ ・パレード (『パレード』平凡社 絵・吉富貴子 2002年5月):昔の話をしてください、とセンセイに言われたツキコが話し出したのは赤い二匹の天狗のこと・・・ ・ときどき、きらいで(『ざらざら』マガジンハウス 2006年7月):一度くらいは、はだかエプロンをやってみようかと、えりちゃんとわたしは思いついて・・・ ・春の絵 ((『ざらざら』マガジンハウス 2006年7月):女をすきになるなんて、思ってもみなかったおれ。相手は、おれんちから二つおいた家に住んでいる高校三年生・・・ ・椰子の実 (『ざらざら』マガジンハウス 2006年7月):一度だけ、兄の淳一と合唱して、音痴だと言われたわたし。優等生だった兄とわたしの立場がいつか逆転して・・・ ・ざらざら (『ざらざら』マガジンハウス 2006年7月):27歳のわたしと恒美とバンちゃんの三人は、過ぎてしまったお正月をすることにして・・・ ・椰子・椰子 (『椰子・椰子』新潮文庫 2001年5月):もぐらと一緒に写真をとる。わたしの奇妙な日常を、春夏秋冬の日記で示してみれば・・・ ・草の中で (『ニシノユキヒコの恋と冒険』新潮文庫 2006年8月):14歳のあたしが自分の好きな空き地で見かけたのは、女の人と二人でいる同級生の西野君だった・・・ ・花野 (『神様』中公文庫 2001年10月):五年前、交通事故で死んだ叔父が現れて、自分の家族の様子などを聞き始めた。娘の華子は35歳でまだ独身・・・ ・北斎 (『龍宮』文春文庫 2005年9月):浜で私に声をかけてきた五十見当の男は、「おもってくれよ。金ないんだ、おれ」と言って気の乗らない私を連れて・・・ ・うごろもち(『龍宮』文春文庫 2005年9月):私たちの祖先が、何代もかけてじっくり掘った深さ百メートル以上の穴。そこに死んだ人間を落とす私たちの血縁は、今では私と妻の両親、そして二人ずついる弟妹たちだけ・・・ ・おめでとう (『おめでとう』新潮文庫 2003年7月):トウキョウタワーが見える島で、人とめったに会わずに暮らす私が、いまはいないあなたにつげる おめでとう・・・ ・あとがき
未読が凡そ半分。ちなみに、読んだはずなのが「パレード」「ときどき、きらいで」「春の絵」「椰子の実」「ざらざら」「草の中」で、『ざらざら』収録作品はよく覚えています。なかでも、ユーモラスなのは「ときどき、きらいで」ですが、「椰子の実」は今読んでも好きです。
そういう意味で「草の中で」も好きです。いまでもあの独特なカバーデザインが目に浮かぶほどですが、話自体は忘れていました。まさにデザインの勝利でしょうか。ブックデザインでは「パレード」も忘れがたいのですが、どうも私はセンセイが嫌いなので、これが『鞄』に繋がるかと思うと楽しめないんです。
そういう意味では、未読作品には共通点があります。先ほどあげた日常を飛び越えた幻想性です。「運命の恋人」のスケールには驚きましたが、「神様」もいいです。なんだか北野勇作の不条理小説を思い出します。それは「花野」にもいえます。ただ、その微妙な楽しさは「北斎」「うごろもち」「おめでとう」で影をひそめ、暗さが前面にでてくる、そういう印象です。
ともかく、活字がゆったりと配された本ですので、あっというまに読み終わります。ただ、川上も小川も繰り返し読むことができる、再読で違うところが見えてくる、そういう意味で「はじめての文学」に相応しい筆者だったなあと思います。ちなみに、このシリーズ、選者はどなただったのでしょうか、気になります。
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