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赤ちゃんが来た  朝日文庫

赤ちゃんが来た(朝日新聞社) 石坂 啓著
税込価格: ¥462 (本体 : ¥440)
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出版 : 朝日新聞社
サイズ : 15cm / 245p
ISBN : 4-02-261163-4
発行年月 : 1996.10
利用対象 : 一般

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コメント・書評

人間を変えてしまう出来事のひとつ
考える人
Feb 7, 2007 11:16:49 PM
評価 ( マーク )
★★★★★

 タイトルや表紙イラストからして女性が興味をもちそうな感じですが、どちらかというと男性にお勧めしたい作品です。

 想像されるとおり妊娠・出産・育児を扱った内容で、朝日新聞やいくつかの雑誌に掲載されたエッセイをよせあつめて一冊にまとめたもの。なので内容的に重複している部分も若干ありました。
 この手の作品は一時期やたら流行し、それが過ぎても常に一定の需要がある分野ですから、ひとつのジャンルとして定着することに成功しましたよね。類似の作品を読んだことのある人も多いと思います。

 しかし本書は、ほかにはない特徴があります。
 出産にまつわる体験をルポして感じたことを書くだけにとどまらず、母親となった作者が妊娠前と比べてどれだけ変化したのかをかなり客観的に自己分析し、冷静に述べているのです。生活面に変化があるのはもちろんですが、自分の物の考え方や視点の変化が中心です。一人称なのに三人称かと思うくらい、自分のことを引いて見てるのがスゴイ。

 たとえば作者は出産後に旅行をします。そこで赤ん坊の姿がやけに目についたのに気づく。でもべつに赤ん坊の比率が高いわけではありません。

「日本にいるときも妊娠中は妊婦の姿が、産んでからは赤ん坊の姿が、よく目に入った。それまで見ていた光景からは、全然みつけ出すことのなかった人々である。見えてなかったと言ってもいい。そうなると今自分が見ている光景だってあやしいものだ。身近に感じることが少ないから、たとえばお年寄りとか車イスの人とかの姿を、私はちゃんと視界に入れてるかどうか。」

 人間は変わるものです。
 あなたも恋人がいつまでも若く美しいままだとは思っていないでしょう。外見よりも中身が好き、ですか? こんな性格だから、こんな考え方だから好き、という部分がきっとあるんじゃないでしょうか。
 でも、ふたりの幸福を象徴するような出来事である妊娠・出産・育児を経験したのがきっかけで、彼女は変わってしまうかもしれません。あなたの好きだった部分がこの世から消えてなくなる可能性だってあるんです。

 もちろん女性に限らず男性も多かれ少なかれ同じです。お互い様なんです。ただ本書は母親側の変化がメインですから、男性が読むと得るものが大きいと思います。
 そこはもう通過しちゃったって人は、あのとき自分が外で働いているとき、育児をする妻の中でなにが起こっていたのかを、いまさらながら知ることができるかもしれません。
 あと子供をもたない人生を選んだ人。子供ができたとたん友人が親バカというかバカ親になって、迷惑な勘違い行動をとるようになったと批判的に感じることもあるでしょう。本書の作者も妊娠前はそんなことを考えるタイプでした。だからこそ子供ができたことによって初めてわかったことを、子供のいない人にも理解できるように書くことができるのです。

 出産・育児に縁が薄い人にとっては、確実に世界を広げられる作品だと思います。
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