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最後のウィネベーゴ  奇想コレクション

最後のウィネベーゴ(河出書房新社) コニー・ウィリス著
大森 望編訳
税込価格: ¥1,995 (本体 : ¥1,900)
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出版 : 河出書房新社
サイズ : 20cm / 380p
ISBN : 4-309-62197-X
発行年月 : 2006.12
利用対象 : 一般

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内容説明

【ヒューゴー賞】【ネビュラ賞】【アシモフ誌読者賞】【SFクロニクル読者賞】【SFマガジン読者賞】犬が絶滅してしまった近未来のアメリカで、孤独な男が出逢ったささやかな奇蹟とは? 滅びゆくものへの哀悼、そして赦し…。読後に深い余韻を残す表題作から抱腹絶倒コメディまで、アメリカSF界の女王の傑作4篇を収録。

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コメント・書評

犬も勘定に入ります。
ぼこにゃん
Feb 5, 2007 3:06:08 PM
評価 ( マーク )
★★★★★

 テレビ番組が健康情報を捏造した、という記事が新聞の一面に載っていた。その数日前には納豆の売り上げが急激に伸びて生産が追いつかなくなった、と社会面が語っていた。番組がデタラメだったことを知り納豆を買い占めた人々は大変ご立腹らしいのだが、ずいぶんさもしい話である。楽してヤセたいと思うのも図々しいが、欲望丸出しのはしたなさに対する恥じらいもなく、ムコの被害者気取りで一方的に相手が悪いと糾弾する人の姿は実に見苦しい。いい大人が何をやっておるのか。
 表題作の主人公は、かつて地上最後の犬(舞台は近未来)と共に暮らしていた男性。その大切な友を、車の事故で失ってしまう。犬をはねた運転手は当時十六歳、免許取りたての少女。
 こんな時、自分だったらどうするだろう。表情豊かな耳と愛情深い瞳の毛むくじゃらの宝物を奪われてしまったら。あるいは奪ってしまったら。
 失意と罪悪感、生きていればどうしようもなく、そのどちらも味わうことになる。こんな不幸な事故の当事者なら尚のこと、被害者と加害者のいずれもその両方の気持ちに苛まれるはずなのだ。それでいてその両者が分かり合うのはとても難しい。
 普通は自分の心を軽くするため、互いに相手の過失を責め合うものだ。
 けれども加害者である少女は、言い訳もせず逃げもせず、途方に暮れつつ凛々しくも主人公の怒りをまともに受け止め、ただ静かに堪える。スゴイなあ。この物語の最も素晴らしい点は、人間に必要な強さは他人に牙をむくことではなく、どんな時でも内なる真実の声に従って振舞うことなのだと、被害者と加害者の双方が知っているというところだ。
 クライマックスはこの主人公が、長い年月を経たのちに、彼女の窮地を知り救いに走る場面。彼のがむしゃらに突っ走る様子が、傷の痛みを忘れることはできなくても、誰かを許すことはできるのだと教えてくれる。同時に、許す側にも許される側にも、誠実さと品性がなくてはならないのだということも。
 哀しいことにこの物語で犬は絶滅してしまったわけだが、人を許し人生を続けて行く心の深さは、あの毛むくじゃらで無邪気でヌクヌクした生き物の大きな遺産となるに違いない。
 実はこれがこの本の中で一番リアリティのある小説なのだけれど、こんな人間同士の厳しくも麗しい関わり合いというのがファンタジーに見えてしまうのは皮肉なことだ。
 現代人に必要なのは納豆よりも、心の栄養なのではあるまいか。
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