コメント・書評 |
国から国へ、本から本へ
祐樹一依
Jan 27, 2007 1:34:32 PM
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評価 ( ★マーク )
★★★★
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10作目に達したシリーズ作。国から国へと放浪する旅人、キノの話。そして、また別の世界、別の舞台で放浪する人々の話。ほんの数ページの短編や、口絵を用いて語られる掌編(併せて9話)も、如何にもなお約束を孕んだ国や、読者が想定するお約束を見事に裏切ってくれる時雨沢氏の手腕が見事な話しも幾つかあって楽しいのですが、やはり久しぶりの長編サイズの物語、「歌姫のいる国」がいい出来。これ単体だけで一冊の本にしても成立しそうなくらいに、意外なサスペンスとトリッキィなイロニーが収められていて、「キノの旅」らしいのにらしくない、という性質すらも楽しい。 世界の中で、数多く存在する国々は、その多くが世界の中で独立して、孤立して存在する。これが現代社会における我々、人間の所有する小宇宙に無理矢理例えられなくもないのだけれど、そんな格好のいいことは、本書には似合わない。本書の主人公、キノは勿論、多くの旅人は、己が住まう国を離れ、未知の世界へと、未知の国へと自分の行き場を変えて動き、離れていく。そんな中で彼らが出会うのは、ただ「そこにあるだけ」の多くの国なのだ。多くの旅人が恐らく驚嘆し、驚愕し、または無反応を見せる国々の特色は、それらがそうであることが当たり前であるものでしかない。旅人たちが多くの性質に関わることをしないのは、自分たちには「それが当たり前である」ことに干渉することの無意味さを知っているからで、もしも旅人たちが「旅人」である以上の動きを見せようとするときは、最早平生の状態から移ろうというとき。何らかの形で国の性質が変わる…、変わらなければならないというときなのだ。 一冊の本を読んで、読者が感想を抱く。 とある国を訪れた旅人が、感想を抱く。 似たようなものかもしれない。 (初出:CANARYCAGE) |
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