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グリュフォンの卵  ハヤカワ文庫 SF

グリュフォンの卵(早川書房) マイクル・スワンウィック著
小川 隆訳
金子 浩訳
幹 遙子訳
税込価格: ¥945 (本体 : ¥900)
出版 : 早川書房
サイズ : 16cm / 511p
ISBN : 4-15-011558-3
発行年月 : 2006.4
利用対象 : 一般

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コメント・書評

太陽系ラプソディータマシイのカタチ
SlowBird
Aug 27, 2006 1:13:39 PM
評価 ( マーク )
★★★★

「グリフォンの卵」とはお月様を指す言葉だそう。月を見て、ああきれいだなと思うより一歩進んで、不思議な力があるのではないかと夢想する心が託されている。その力は人を幸せにも不幸にもするのかもしれない。さらに進んで、そこまで辿り着きたいと思った人も現われ、そして辿り着いた。そしてまた一歩進む人がいて、さらに一歩進む。夢は科学や技術に名前を変え、神秘家は科学者、技術者となって、前進する。グリフォンの卵は、目標地点でもあるし、前進基地にもなる。
そうしてスペースコロニー、木星の衛星イオ、土星の衛星タイタン、そしてワームホールを利用した物質転送(ワープ)による旅へと飛び立つ。もはや単なる夢ではなく、組織と予算と権力と自己実現と生命、倫理、イデオロギーが渾然となった塊に取って替わる。そしてそこにいる技術者、冒険者達の心情の描き方に、職人芸的上手さがある。そう書くと小手先の技巧みたいだが、先例がありそうでいて、1980年代以降ではそうたくさんあるわけでないし、むしろ同時期のサイバーパンク・ムーブメントでセンセーショナルに取り上げられたITや通信技術の発達を、ベトナム戦争以後に単純な進歩信仰から抜け出した若者達の等身大の現代的感覚に融合して、また飛躍して行く道筋を丁寧に描いていくのは、サイバーパンクに並行して独自の道を切り開いたように見える。自ら描いた夢に殉ずる道、課せられた人類に対する責任、素朴な生の欲求の間での葛藤が、この作品集の中でクローズアップされている。人類の根源的な欲求を深く理解している上で、その言語化の技術が磨かれているのだと思う。
もう一つ「時の軍勢」が異色ながら面白い。求職中のおばさんがありついた奇妙な仕事から、持ち前の頭のよさ、意志の強さ、それとプライドによって、なぜか人類の救世主的地位になってしまう成り行き。そういえば最近、パートタイマーから社長になった女性のニュースがあった。2004年ヒューゴー賞受賞作だそうで、現代人の感性を的確にくすぐったのだろう。
物質転送機に利用されるブラックホールの名前が「ギヌンガガップ」というのだけど、この名前の響きが非常によろしい。この作者の内面にある異質性がもたらす新しさが、ある種の心地よさをもたらすようだ。
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