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悲劇の中でこそ輝く英雄の勲!
Leon
Apr 16, 2006 8:56:38 PM
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評価 ( ★マーク )
★★★★★
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かつて大艦隊と竜によって得たメルニボネ帝国の広大な版図は、今や僅かに竜の島を残すのみ。 その衰退を暗示するものか、今<ルビーの玉座>を占めるのは生まれながらにして虚弱な白子(アルビノ)の皇帝エルリック。 新興の<新王国>諸国は、半ば伝説と化しているメルニボネ人を恐れつつも次第にその勢力を伸ばし、艦隊を組んでは竜の島の財宝を奪わんものと襲撃を繰り返していた。 現状に甘んじる平和主義者のエルリックの態度に我慢ならないのは、皇帝の従兄弟イイルクーン皇子。 野心家の彼は、メルニボネに過ぎ去りし日の繁栄を取り戻そうと画策しており、更には<ルビーの玉座>には自分こそが相応しいと考えている。 南方からの侵略者の艦隊を、自ら指揮して打ち破ったエルリックだったが、逃走に成功した船も幾つかあった。 当初は追撃を拒むエルリックだったが、従兄弟に腰抜けと揶揄されて艦隊を外洋へと率いることに。 それこそイイルクーンの策略だった。 脆弱な体力を補うために採っていた薬の効能は追撃の間に薄まり、立ち上がることすら侭ならなくなったエルリックの前で、イイルクーンがその叛心を明らかにしたのだ。 甲冑の重みによって水中深くに引きずり込まれるエルリックだったが・・・ 虚弱ではあるが、初代の魔術皇帝より綿々と受け継がれてきた魔法の力こそはエルリックを皇帝たらしめるもの。 古代に父祖が精霊などと交わした契約は今も生きており、エルリックは彼らの助力を得てイイルクーンを追い詰めていく。 しかし、混沌の神々の一柱であるアリオッホを召還したときから、彼の運命は大きく狂い始めてしまうのだ。 物語の舞台は神々の時代から人間の時代への過渡期にあたり、英雄が活躍するには打ってつけと言え、巻頭で献辞を贈っているポール・アンダーソンの「折れた魔剣」などと同様に叙事詩的な味わいがある。 メルニボネ人は厳密には「人」ではなく半神に近しいものだが、その品性は根本的に邪悪で、トールキンのエルフとは逆に新興の人類を蹂躙する血も涙も無い種族。 代表的なメルニボネ人であることを期待されるのは、皇帝にとっては当然なことではあろうが、白子であること以上に情け深いエルリックの心根こそはメルニボネ人としては奇形なのである。 <黒の剣>ストームブリンガーを始め、混沌の助力に頼らざるを得ないエルリックの葛藤が醸しだす悲劇性は物語に暗い影を落とし、暗く逃れられぬ運命を暗示するが、旅の折々で道連れとなる個性的な人々がエルリックの、そして読者の救いとなる。 栄枯盛衰、何れは滅び失われる世界が暗示されつつも、いや暗示されているからこそ、その中で必死の努力をする英雄の勲は一際輝くのだろう。 |
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