コメント・書評 |
坂木と鳥井の関係の危うさを打破してくれるのは、彼ら2人の心の強さと、今の彼らが大好きだと思ってくれている暖かい人たちの存在なのかもしれません。
どーなつ
Mar 13, 2006 12:00:28 AM
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評価 ( ★マーク )
★★★
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外資系の保険会社に勤務している「僕」こと坂木司と、ひきこもりのプログラマー鳥井真一が織り成す、少し心が暖かくなる連作短編集。 著者が北村薫氏の「六の宮の姫君」が好きだ、ということで、この作品も若干北村薫色が出ているように思う。 いわゆる日常の謎系のシリーズ。 「円紫さんと私」シリーズでいうところの、「私」が、坂木。そして、謎をもちかけられてそれに答えてくれる「円紫さん」の役目を果たすのが、鳥井真一。 北村さんの作品で登場する円紫さんは、年配ということもあるけれど、この人なら必ず答えに導いてくれる、素晴らしい助言をしてくれる、そういう安心感があるのですが、この作品の鳥井に至っては、とりあえずその謎に興味を示して、手を貸してくれるのかというお伺いをたてるところから始めなければならない。 学生時代のイジメ、家庭内での問題などで、ひきこもりになってしまった鳥井。 唯一坂木にだけは、心を開いてくれるのだけれど、なんだかつかみ所がないのも事実。 乱暴ものだと思いきや、泣き上戸であったり、人に関心を示さないのだけれど、坂木には弱い。 坂木は、なんとか鳥井を外へ連れ出そうと努力をしています。 毎回、坂木が外で何かの騒動に巻き込まれたり、謎を拾ってきたりして、鳥井に助けを求める。 鳥井も渋々ながら、坂木と共に安楽イス探偵をきどるのだけれど、おもしろいことにそんな事を重ねるうちに、鳥井の世界は少しづつ広がっていってるんですよね。 事件を通して顔見知りになった人達、同級生の警官、その後輩。 彼の周りに少しづつ人の輪ができはじめます。 と、同時に坂木は少し心の中に重いものも感じます。 嫉妬、に近いのでしょうか。 自分と1番仲の良かった友人が、別の誰かと楽しそうに喋っていたり、自分のいないところで何かおもしろいイベントの計画が進んでいたりする、そんな疎外感に近いもの。 誰しも、そういうものを感じたことがあるはず。 なんだ、結局自分じゃなくてもいいんじゃない。——と、少し拗ねてみたりして。 鳥井の世界が広がるのはいいのだけれど、彼が自分から離れてしまうことに不安を感じている。 保護者気取りでいる自分の方が、鳥井に依存していたことに気付きます。 読んでいて思ったのは、この2人の関係。少し危ういんですよね。 仲良くくっついている時は最高のパートナーとなりうるでしょうが、何かの拍子にボタンの掛け違いがあったとき、とんでもない方向へ歯車が転がっていってしまいそうな感じ。 坂木が悲しむと、鳥井も泣いてしまう。 2人はまるで目に見えない心の奥深くで繋がっているかのようです。 けれど、最終的にその危うさを打破してくれるのは、彼ら2人の心の強さと、今の彼らが大好きだと思ってくれている暖かい人たちの存在なのかもしれません。 今の状態で何か2人の間を裂くような決定的な「何か」が起これば、かなり怖いですが、これから少しづつ世界を広げていくうちに、その衝撃を和らげる為のスポンジを周りに寄せ集めていけば、きっと大丈夫です。 この作品。どうやらシリーズ化しているようなので、今後の2人の動向に注目したいと思います。 |
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