 |
ZOO
|
コメント・書評 |
天才乙一の奇想の標本箱
yu-I
Oct 24, 2005 5:45:32 PM
|
評価 ( ★マーク )
★★★★★
|
さまざまなタイプの作品が収められた、乙一の才能の標本箱のような作品集である。それぞれに秀逸であるが、とりわけ印象に残った三篇について少し書こうと思う。 「陽だまりの詩」 角川スニーカーは著者に「せつなさの達人」という言葉を冠したが、その流れにつらなる胸に染みる作品。冒頭では人造人間というモチーフから、グロテスクなホラーにいくのか? とも思ったが、二人がやさしく寄り添いながらもそれぞれの孤独に向かい合う、あたたかくも寂しい物語であった。なるほど、せつない、とはこういうことを言うのか。 それにしても素晴らしい着想である。 「冷たい森の白い家」 こちらは本当にグロテスクなホラー。ショッキングな児童虐待のシーンから始まるのだが、同じく児童虐待をあつかった「カザリとヨーコ」が痛ましいながらも希望の光を感じさせたのに対し、全く救いのない暗い話である。 中盤で“白い家”というのがどういう意味かわかるのだが、はっきり言って度肝を抜かれた。これを淡々と物語ってしまう著者独特の語り口がおそろしい。ラストまで意表をつかれっぱなしの強烈な作品。 「SEVEN ROOMS」 ホラー映画もしくはホラーゲームの影響が感じられる。読んでいて映像が目に浮かぶ。 サスペンスフルでちりちりと焦げつくような怖さが新鮮。この演出力には驚嘆した。 しかしゲームのような設定を小説という形式を使って書いた、というような作品ではない。ラストのあのせつなくも驚愕の展開は、文章だからこそ魅力的にえがくことができたに違いない。 個人的に好きな作品を選んで書いたが、繰り返しになるが全ての作品がそれぞれに強烈なインパクトを持っている。 まったくどこからこのような着想をえるのかと驚かされる。他の誰にも似ていない、見事に著者オリジナルの作品ばかりである。 短編小説を書かせたらやはり天才的。構成にも文章にもまるで無駄というものが存在しない。 この著者の作品をリアルタイムで読めることを心から喜びたいと思う。 |
|
|
| 現在の投票
はい:3人(100%)
いいえ:0人(0%) |
|
|
|
|



|