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エンダーのゲーム
ハヤカワ文庫 SF
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コメント・書評 |
アメリカ社会とSFのテーマの成熟
まさぴゃん
Mar 19, 2005 11:49:00 PM
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評価 ( ★マーク )
★★★★★
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いまから20年以上も前の作品になるんですね。続編『死者の代弁者』もヒューゴ・ネビュラ両賞受賞。二年連続受賞は史上初でした。賞を取る作品が素晴らしいとは限りませんが、そのエンターテイメント性でエンダーシリーズは、本当に優れた作品群です。傑作中の傑作といえるのは『エンダーのゲーム』と『死者の代弁者』の2作品のみだとは思うけれども。
バガーという知的生命体の地球への侵略に対抗するため、米国が中心となりインターフリート(国際艦隊)が結成され統合された宇宙軍が組織されている。しかし劣勢な艦隊でバガーを倒しきれず地球は滅びに瀕していた。その起死回生の手段として、少数の艦隊でバガーの母星に殴りこむ戦略が決定された。だが、限られた宇宙船で、数では比較にならないバガー本体を打ち倒すには、なによりも天才的な戦略・戦術性備えた司令官が必要であった。また各国の政治的利害に関係しない司令官を養成するために、天才たちを集めた教育機関が、小惑星ベルト地帯に密かに作られた。それが「アレクサンダーやナポレオンに匹敵する天才司令官の養成」という極秘プロジェクトのはじまりであった、というのがあらすじです。
この作品を人に紹介して、つまらないといわれたことはありません。ぜひ映画化してほしい。ハリー・ポッター役のダニエル・ラドクリフ君(賢者の石の頃の彼)に演じて欲しかった。マンガでは『ネギま。』のネギ君を思い出させる。それにしてもエンダー(ENDERというのは終わらせるものという意味)君は、かわいそうで泣けちゃいました。まだ子供なのに。僕はショタコンの気があるのか(笑)、頭がよくって健気な少年や少女が努力して成長する様を描く作品が大好き。カテゴリー的に、成長を軸とするビルドゥングスロマンにはやられやすい。その王道的王道たるストーリーは分厚いけど一気に読ませる作品です。訓練のためにヴァレンタイン(お姉さん)に引き離されるところとか、3番目の子供がもてない人口制限の時代に第三子として生まれてサードと呼ばれている部分や自分の生きていることに悩みすぎる体質の主人公は、初めて読んだのは10年近く前ですが、まさにアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』の碇シンジを思い起こされました。その印象は今も変わりませんね。
しかし、このテーマの奥深さはすばらしい。ネタバレになるので、あまり言えません(最後を読んだとき絶対大どんでん返しで感動します!)が、このテーマの本質は先住民を虐殺して新国家を建設してアメリカ人らしい苦悩を感じます。カートさんは信仰心厚いキリスト教の宗派モルモン教徒で、深くものを考えている姿勢は感動します。この物語の中で将来的に地球圏の英雄となる天才的艦隊総司令官のエンダー・ヴィッキン君は、この後『死者の代弁者』と続くシリーズの長きにわたって、自分の行った罪を倫理的に苦しみ続けます。『宇宙の戦士』『星を継ぐもの』など古典SFのロバート・A・ハインラインやジェイムス・P・ホーガンの今から考えるとお気楽な勧善懲悪や悪を倒すというシンプルな思考、科学至上主義の世界観からすると、アメリカ社会もSFのテーマも進化したなぁと感動します。
しかしながら、そのテーマ性の深さもさることながらこの作品は、何よりも一人の天才少年が、バトルスクールという小惑星地帯の訓練校での過酷な訓練を通して成長して、地球を侵略する敵バガーを倒すという痛快な物語としても読めるでしょう。その成長する姿は、感動的です。この訓練を通して、組織のリーダーとして目覚めていく課程は、とても「酷薄で冷酷な判断を下さねばならない指揮官としての自分」と「優しい引っ込み思案な少年の人格」が、引き裂かれていくのは、ものすごく残酷でした。カートさんは、子供の心理描写をさせたら一級品ですが、これはその代表格でしたね。
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