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ZOO
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コメント・書評 |
出版当時、読み逃したせいで、この本が有名な賞を取ったときも癪なので読まずにきた。もったいないことをしたなあ、と今では言える。乙一、こんなに面白い作家だったとは
みーちゃん
Jan 2, 2005 6:22:00 PM
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評価 ( ★マーク )
★★★★★
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初めて乙一の小説『暗黒童話』を読んだ時の印象は、不器用な作家。今となっては、失礼な話だ。その時は奥付で乙が20歳になったばかりなのを知って、驚いた。話の作り方からは、もっと年上の印象があったし、濃密な文体もあるし、残酷さに老成した所があって、でも感動というか、こころを動かされる所は少なくて、どちらかというと、この先どうなるのかなあ、と思っていた。だから、新作も読んでいなかった。で、この本、折原一と勘違いして手にした。一という字しか見えなかった。勿論、乙がZに見えたというのは、装丁の松田行正の手に引っかかったせいだろう。
双子の姉妹は、何故か片方だけが母親に可愛がられて「カザリとヨーコ」。事故で、痛覚を失ってしまった老人が、家族たちが見守る中で大怪我をして「血液を探せ!」。ほとんどの人間が死に絶えたという世界で目覚めた僕は「陽だまりの詩」。僕が繋ぎとめていた父と母。バラバラになった家族の中心で「SO-far ソ・ファー」。離れの馬小屋で虐めなれながら育てられた僕が、そこを出て暮らし始めたとき「冷たい森の白い家」。
夫が消えた。心配した兄嫁が義弟の部屋に来てみると「Closet」。少年が気付いたのは、自分の言葉は必ず実現するということ、そして取り消しが効かないということだった「神の言葉」。彼女が、そこに行こうと言った事が始まりだった。失踪した彼女の行方を求める男は「ZOO」。姉と弟が閉じ込められた無機質の部屋。たった一つある排水溝だけが外界とのチャンネルだった「SEVEN ROOMS」。女が乗る飛行機がハイジャックされ、次々と乗客が犯人に殺されていく。そんな女に隣席の男が「落ちる飛行機の中で」。
あれ、この人、こんなに上手だった? 文章に癖がなくなって、どちらかというと筒井康隆してるジャン。凄くはないけれど、こんなスッキリした文が書けるんだ、と感心した。いくつか読んでいるうちに、やっと彼の文体に出会った気がした。それが、これぞモダン・ホラーの傑作と言いたい「冷たい森の白い家」。グロテスクが、そうならないで不思議な叙情性を醸し出す。死が、腐臭が、透明なものとなってしまったような不思議さ。次が本格推理小説として楽しめる「Closet」。この人、こんなガチガチの本格が書けるんだ。そして、SFといってもおかしくない「神の言葉」、不条理が圧倒的な「SEVEN ROOMS」。
『暗黒童話』から三年、1978年生れの作家は、見事にその実力を見せ始めた。これならば、本格推理大賞受賞というのも納得できる。鎌倉赤とでも言いたくなるような赤地に白抜きのZOOの文字と、老人が目を細めたくなるような小さなカタカナ、左隅に身を隠すかのような出版社名、そしてZとかけた乙の字、本の後ろ中央を見た時の、なにかズーズーを思わせる字の配列、小技が詰まった本だ、小枝ではない、こわざ。こわさが伝わる粋な一冊。 |
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