コメント・書評 |
強いて欠点を挙げるとすれば…
拾得
Feb 11, 2004 11:43:00 PM
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評価 ( ★マーク )
★★★★★
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筋を通そうとした一人の苦難の人生の記録を読んで、「面白かった」という感想も失礼な気がするが、とにかく間違いなく面白かった。実在の人物と日航という企業をモデルにとりつつも、一個人一企業を超えた「時代」を切り取ってみせてくれる。組合活動に熱心に関わったがために、海外に十年余も流される前半部に、サラリーマン人生の悲哀と組織の不条理さを感じた読者も少なくないだろう。しかし、この組合活動からは、もはやリアリティが薄れかけている戦後日本の組合活動の出発点の一つ、職員と工員との提携というテーマも浮かび上がってくる。 史上最大の航空機事故「御巣鷹山事故」の詳細な叙述(3巻)からは、この大事故に関わった人間たち(遺族、遺体調査、企業…)の向き合った現実を改めて知らしめてくれた。大方の人間にとって「記録」となりかねない今、改めて知っておくべき現実ではなかろうか。、そして「会長室編」と題された4、5巻は、80年代の日本企業の現実を、政界やマスコミ、第二組合、海外企業とのやりとり・裏交渉をからめながら、スリルある〈企業小説〉が描かれる。
屈せずに筋を通そうとした一個の人間を主人公に据えつつも、単純な勧善懲悪ものでも、ただの悲劇の物語になっているわけでもない。登場人物それぞれに凡庸ではあっても人間臭い物語を演じさせているのも本書の魅力なのである。それゆえに、どうしようもない現実の慣れ合いに憤慨しつつも、読者の関心を高めて一気に読ませてくれるのだ。 そんな第一級の小説に私が論評で加えるべきものは何もないのだけれど、強いて欠点を挙げるとすれば「家族の物語」に若干、物足りなさ残るくらいである。自らの節を通すために海外駐在を続ける父に対し、中学生の娘は「身勝手なお父さんへ」と結んだ手紙を送った(第2巻)。ここからどういう家族の葛藤の物語が展開するのか、と予感させたものの、その後の展開には物足りなさが残った。強いて欠点を挙げるとすればそれくらいだ。 |
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