コメント・書評 |
コンピュータの一人称で書かれた、倒叙手法のSFミステリの傑作。
Y.Kanzaki
Apr 26, 2001 12:48:00 AM
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評価 ( ★マーク )
★★★★
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この作品は、犯人の視点から物語を描くという、ミステリではお馴染みの倒叙と呼ばれる手法で書かれた作品です。が、SF作品らしく、「人間ではない存在」が「人間達の行動や推理」を冷ややかに観察してゆくという、実にスリリングな、SFミステリの傑作として仕上がっています。
コンピュータ《イアソン》は、一万人の乗組員を乗せた、移民宇宙船《アルゴ》の全機能を管理している電子頭脳。だが、ある日、ある理由から、一人の女性科学者をコンピュータ・システムを利用して殺害する。自殺に見せかけたその方法に、乗組員の誰もが騙されるが、ただ一人、彼女の前夫であるアーロン・ロスマンだけが疑いを抱く。「彼女には自殺する理由なんてなかった筈だ……」
独自に真相究明を始めたアーロンを、コンピュータ《イアソン》は、様々な方法で攪乱する。船の全てを管理している《イアソン》は、コンピュータ・システムのデータを改竄することは勿論、乗組員全員の健康管理システムを通して、人間達の心の動き、生理的な反応までモニターできるのだ。そのような、神の如き能力を持つコンピュータに立ち向かえる手段はあるのだろうか? そして、《イアソン》が乗組員を殺害した動機とは?
何となく懐かしい感じがあって、明るいユーモアに溢れた作風が魅力のソウヤー作品ですが、本作もその魅力が存分に発揮されています。コンピュータ《イアソン》の一人称で書くという手法がうまく効果をあげており、SF作品ならではの、《イアソン》のアーロンに対する、あっと驚く対抗策も読みどころの一つ。 倒叙ミステリではありますが、犯行の動機だけは最後まで隠されているので、それを知りたいという欲求から、読者は物語の中へ、ぐいぐいと引き込まれてしまいます。
活字SFというと、何となく小難しそうだと敬遠ぎみの方にも、安心してお薦めできる一作です。《イアソン》の飄々とした魅力に乗せられているうちに、結末の謎解きまで気持ちよく誘導されてゆく快感を、ぜひ味わって頂きたいと思います。 |
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