コメント・書評 |
思考実験書としては文句なしに面白い
べあとりーちぇ
Jun 29, 2003 9:59:00 PM
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評価 ( ★マーク )
★★★
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比室アリス。あまりにも危険なそのサヴァン能力のために、地下深く作られた秘密のシェルターに幽閉されて眠り続ける美少女。彼女がその眠りから目覚めて歌い始める時、7年前、60人あまりが犠牲になった「瞭命館パニック」の悲劇がふたたび繰り返される…。
野暮を承知でアナログを想像すると、さしずめ「一般的CPUの処理能力をはるかに超えた質・量のデータを、一種の圧縮コードを使ってムリヤリ食わせたらハングってしまった」というところだろうか。 人間の脳はそう簡単にはリセットできないのだから、これは怖い。物語前半で畳み掛けるように描写される意識の崩壊シーンのイメージは圧倒的である。虚無から湧き上がる白い蝶の大群と虹の乱舞も、美しいだけにぞっとする恐ろしさに満ちている。中井拓志氏独特の文体に違和感のない人ならば、この部分だけで一級のパニックホラーである。
ただ後半に関しては印象が分かれるだろう。 登場人物の口を借りて「言葉により世界が崩壊する」という現象の論理的解説がなされるのだが、その論拠となっているものは言うなれば「擬似脳科学」「擬似認知科学」なのではないだろうか。 その辺を踏まえつつあえて挑戦を受け入れられる人にとっては、ここはまたとない思考実験のチャンスとなる。しかしこの前提に引っかかりを感じる人は、何かしら肩透かしを食ったような未消化なものを感じてしまうかも知れない。
恐らく中井氏としては確信犯的にこういった手法を採っている。だからあえて乗せられてみるのが本書の正しい楽しみ方であると言えよう。だが、ホラーとしての完成度を追求するとすれば、論理的解決はつけずに「なぜアリスの歌が致命的威力を持っているのかは一切不明」でも良かったように思う。 |
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