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火星転移  上  ハヤカワ文庫 SF

火星転移(早川書房) グレッグ・ベア著
小野田 和子訳
税込価格: ¥798 (本体 : ¥760)
出版 : 早川書房
サイズ : 16cm / 427p
ISBN : 4-15-011187-1
発行年月 : 1997.4
利用対象 : 一般

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コメント・書評

驚嘆すべき作品
オリオン
Feb 13, 2001 11:18:00 PM
評価 ( マーク )
★★★★


 意識と物質との関係を考える上で、チャールズ・フランクリンが完成させた「ベル連続体理論」は極めて示唆に富んでいる。といっても、これは小説の上での話。グレッグ・ベアの『火星転移』第三部でのチャールズのレクチャーによれば、素粒子は231ビットの情報量をもつ記述子をもっており、そこには「物質、電荷、スピン、量子状態、運動エネルギーおよび位置エネルギーの成分、ほかの素粒子との関係で見た空間的位置、時間的位置といったものを含む情報」が記されている。

 そしてすべての素粒子は、関連のある性質のすべての記述子が含まれた情報マトリックスのなかに存在していて、ベル連続体を通じて自分の性質と状態に関する情報をほかの素粒子に伝える。つまりベル連続体とはこの情報マトリックスのことであり、「宇宙のある特質のバランスをとる簿記システムのようなもの」だというのである。(第四部では、「神々の使者が行き交う道」と表現されている。)

 チャールズはこのベル連続体にアクセスする方法を発見した。《われわれは共同作業の結果、物質とエネルギーを扱う包括的な理論を打ち立てました。データフロー理論です。素粒子の記述核内部に手をいれてそれを変える方法がわかったのです。》──その結果なにが起こったか、なにが可能となったかは、まさにこの作品のタイトルに示されている。

 昔、素人向けの素粒子物理学の本でブーツ・ストラップ理論について読んだことがある。ベル連続体理論とどことなく似たところのあるものだったように記憶しているのだが、それはさておき、ここでちょっと脱線して、チャールズのレクチャーでもっとも感銘を受けた部分のさわりを記録しておく。

《この宇宙は遥か昔に、存在する可能性のあるあらゆる法則の混沌のなかから生まれた……。可能性だけがひしめく、おおもとの基礎というか素地というか、そういうところから生まれたんだ。混沌のなかで何組もの法則が消えていった。なぜなら矛盾があったからだ──矛盾があるものはより厳密な、より意義のある組合せに抗して生き残ることはできなかった。(中略)ぼくらが見ている宇宙は、あるひとつの進化した、自己矛盾のない法則の組合せを使っているわけだ。そして数学の法則は大なり小なりそれに合致するようにつくることができる。》

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