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青い虚空  文春文庫

青い虚空(文芸春秋) ジェフリー・ディーヴァー著
土屋 晃訳
税込価格: ¥930 (本体 : ¥886)
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出版 : 文芸春秋
サイズ : 16cm / 649p
ISBN : 4-16-766110-1
発行年月 : 2002.11
利用対象 : 一般

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コメント・書評

「ソーシャル・エンジニアリング」の達人による極上のエンターテインメント
オリオン
Dec 29, 2002 4:20:00 PM
評価 ( マーク )
★★★★

 まず書いておかなければならないこと。これは第一級のエンターテインメント小説である。極上かどうかは人によって評価が異なるだろうが、後半、期待を裏切らない大業がいくつも用意されていて息つくヒマも与えない(それはたとえば人とマシンの取り違え、大人と子供の取り違えといった趣向なのだが、これ以上書くとネタばらしになってしまう)。

 あまつさえこの作品には骨太のテーマがある。コンピュータで人を殺せるか。ソフト・アクセスによる殺人は可能か。もちろんそれは可能で、その答えは二通り用意されている。これもお楽しみのネタだ。でもそれがテーマなのではない。コンピュータで人を愛せるか。コンピュータで人をつくれるか。これこそが本当のテーマで、もちろんそれは不可能に決まっている。

 コンピュータ・ネットワークがひらくマシン・ワールド(サイバースペース)、それをハッカーたちはブルー・ノーウェアと呼ぶ。ユートピアの英訳はノーウェア(どこにもない場所)だから、青いユートピアと呼んでもいいだろう。胎児の視覚に最初に映じる色は青だという。だとするとブルー・ノーウェアとは母胎(マトリックス)の比喩でもある。

 だが、そこから産まれるのは生命ではない。ソーシャル・エンジニアリング(「自分じゃない誰かのふりをして他人を騙すこと」)が生み出す様々な人格である。それは匿名性の消滅の果てに生産されつづける、フィクショナルでかつリアルな非生命的人格でしかないのである。

 ──物語の終盤、探偵役と犯人役の二人の「熟達者」の対話から。

「考えてみろ。生命はどうやってはじまった? 炭素、水素、窒素、酸素、硫黄でできた原始のスープに雷が落ちたのが始まりだ。すべての生物はこれらの成分からできている。すべての生物は電気インパルスで動いている。で、こうした成分はどれも、なんらかの形でマシンのなかに見つけることができる。マシンも電気インパルスのおかげで動いている」。
「チャットルームのガキ向けのえせ哲学は願い下げだ、ジョン。マシンは素晴らしい玩具だ。つねに世界を変えてきた。でもマシンは生きているわけじゃない。考えたりしないんだ」。
「いつから考えることが生命の必要条件になったんだ?」…
「いったいどうした? そんなちがいもわからないほどマシン・ワールドに呑みこまれちまったのか?」…
「マシン・ワールドに呑みこまれた? おれに他の世界はない!」
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