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修羅の終わり
講談社文庫
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コメント・書評 |
誰もが心に抱える修羅が浮き彫りに…
くろねこ
Jun 30, 2002 8:16:00 AM
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評価 ( ★マーク )
★★★★
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人の心って、恐ろしい修羅を抱えていたりするのですね。 それが、警察権力を持った人間だと、よけいに恐ろしい。
鷲尾のように、ある意味分かりやすい修羅を持った男より、 久我のように、一見まともに見えてという男の方が、 実は恐ろしい気がします。 彼は、公安警察の花形とも言うべき「桜」の訓練を受けます。 まっすぐで、自分の信じるところを疑わない久我。 正義感に燃える男。 けれども、その正義感が、自分の信じる正義しか見なくなる時、 それは、恐ろしい凶器<狂気>となってしまうのです。 同室の男へ向ける敵愾心。 久我の様に一途すぎる男は、<桜>には向いていないのです。 世の中に矛盾があることも、「正義」だけが全てでないことも 清濁併せ呑むことのできる度量、それが必要。 というか、それがないと、久我の様に、どんどん、どんどん、 壊れて行ってしまうのです。 彼は、<桜>になるには、一途で真面目すぎました。 職務であるスパイ確保が、それをさらに加速させてしまいます。 相手をモノとみなすことができなければ、 そんな職務を果たすなんて無理なのです。 だから、彼は、どんどん…
一方、もっとも分かりやすい形で警察官の暗部を 体現しているのが鷲尾という男。 自分が<黒>と信じた被疑者には、どんな卑劣な扱いをも辞さない。 それが、たとえ、女性であっても。 証拠や、証言よりも、自分の直感を恃むところの大きい男。 彼は、それが順調に働いている間は、さぞかし優秀な成績を あげていたのでしょう。 でも、自らの判断に誤りがある可能性を考慮に入れない刑事なんて、 これほど恐ろしい存在もないと言えるのではないでしょうか。 やがて、それは、鷲尾自身をとんでもない場所に追い込んで…
そして、もう1人。 記憶を失った若い男。 自分が誰かも、なぜ、そうしているのかも分からない。 空白という闇を抱えてしまった青年。 自分が何者で、どこに行けばいいのかも分からないなんて、 どれほどあやうく頼りない気持ちがするのでしょう。 彼を救ってくれたのは、智恵子という若い女性。 彼女は、なぜか、どこか、<母>のイメージを持っています。 あるいは、<海> 穏やかに、静かに相手を受け止めるような。 だから、隣の部屋の留美子さんも、親しくしているのでしょう。 彼の<自分探し>。 少しずつ、見えて来る過去。 でも、なんてあやふやな…。
この3人の道が、どこで、どう交差してくるのか。 どんなふうに3つの道が収斂されてくるのか。 アクロバティックな、やられた!と呻くようなラストを 期待していたのですが、ある意味、終わりは平凡かも… ただ、そこに至るまでの道が、空気の重たさが 圧倒的に心に残りました。 |
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