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理性の限界  講談社現代新書
不可能性・不確定性・不完全性

理性の限界(講談社) 高橋 昌一郎著
税込価格: ¥777 (本体 : ¥740)
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出版 : 講談社
サイズ : 18cm / 274p
ISBN : 978-4-06-287948-4
発行年月 : 2008.6
利用対象 : 一般

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内容説明

アロウ、ハイゼンベルク、ゲーデルらの思索を平易に解説しつつ、人類が到達した「選択」「科学」「知識」の限界論の核心へ。囚人のジレンマから神の非存在論まで、知的刺激にみちた「理性の限界」をめぐる論理学ディベート。

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コメント・書評

数理解析に裏打ちされた厳密な理論が示すのは限界だった…
T.コージ
Jul 8, 2010 8:07:24 PM
評価 ( マーク )
★★★★★

この本を読むとモテるという都市伝説まで生まれつつある必読の一冊!

●民主主義は成立しない!

 完全な民主主義が成立しないことを数学的に証明した「アロウの不可能性定理」を紹介するところから本書ははじまる。そして、ライプニッツが、想定できるあらゆる可能性を紙に書き出しながら理性的に計算した帰結として当然のことながら結婚を取りやめた、というエピソードなどを絡め、シリアスな問題を時に爆笑とともに紹介してくれる。間違いなく本書は知的エンターテイメントの最高峰だろう。事実ギークな読書家小飼弾氏が大絶賛し、流行のtwitterでは「現代の『構造と力』だ!」というコメントが流れ、本書の読書会ができるなど発売後2年にして評価はさらに高まり読書は盛況な様相を見せ始めている。現在6刷であり、これは新しいロングセラーの誕生だ。
 自分も本書を入手するのに6軒の書店を巡り最後の店舗に残っていた最後の一冊をようやく買ったのだった。twitterのコメントを見ても売れているのは事実だろう。

 ところでアロウの定理は極論するとジャンケンの3つの相(グー・チョキ・パー)の強さの順位付けが不可能で、どこを始点にするかで強弱の相対的な関係が決まることなどを数理化し、投票の順番や好き嫌いで結果が左右されることを証明しているようだ。
 アロウの定理が示すのは集団における社会的選択(代表的なものが選挙)の限界だがライプニッツの結婚しないという選択が一つの解であるように、おそらくは選択しないという解も現実には行使されているハズだ。たとえば投票拒否である。
 この行為としての解は本書には直接関係ないがラカンや斎藤環氏が援用していた「三囚人のエピソード」のような解、急き立てられて行動してしまう…という論理破りが現実には機能していると思われる。古く?はニューアカの「パラドキシカルジャンプ」などの概念も同じ。マルクスなどでいわれる革命とはこの行動のことだろう。

 集団における選択方法は論理的な限界がある訳だが、俯瞰してみると誰もが限界に突き当たるわけではない。その選択方法を意図し主張した者は多くの場合予め最大利得を目論んでいるのであって損をしない(選択をしている)だろうからだ。つまり論理に限界はあるがそれを知ったうえで「戦略的操作」をし、そもそもその方法を意図し選択することで、そこに最大利益を見出し期待することもできるからだ。政党が自らに有利な選挙や方法を求め画策するのは当然だろうし見飽きてきた光景だ。しかしまた解決していない問題でもある。本書はそういう現実の問題にも切り込んでいる。


●「囚人のジレンマ」で生き残る3行のプログラム

 個人の選択における限界を示すものとして「囚人のジレンマ」がある。なかなか決着しない囚人のジレンマ論争を見てコンピュータで競わせることになり、最も高い利得を得られるプログラムを選ぶコンテストが行われた。政治学・経済学・心理学・社会学などの分野から14名の専門家が応募し、総当たり戦の結果優勝したのは、驚くことにFORTRANで書かれたわずか3行のプログラムだったという。最初は協力を選択し2回目以降は相手の前回の行動と同じ行動をとる…というシンプルなもので「しっぺ返し」戦略と呼ばれる。結果は精緻な論理も微細にわたる戦略も全く関係なかったのだ。そして今度は「しっぺ返し」を負かすことを目標にして行われた2回目のコンテストでも優勝したのは再びたった3行のプログラムだった…。
 個人的には生態学関係(宇野理論系出自の)の本で、隣接する2種類の生物の生き残り戦略として実際に「しっぺ返し」が行われているというのは読んだことがあり、それからすると自然状態で行われている行為や論理に、人間はこれほど考えなければ到達し得ないという事実が、より本質的な限界を示しているのではと思わせるほどだった。本書はそういった事実を丹念に集めて検討されている。常識では答えが出ているようなことでさえ個別の専門分野毎ではデッドロックに突き当たるまで察知できないのも、ある種滑稽でさえあるだろう。本書の最後に引用される経済学者センの「合理的な愚か者」という言葉が象徴的だ。

 世間ではノーベル金融工学賞受賞者2名が代表を務めるグローバルマネーの代表であるヘッジファンドが倒産しても経済学(者)や最先端理論に疑問を突きつけることはなかったが、本書は何にでも疑問を突きつけている元気な本でもある。とてつもなくラジカルな問題をとてもつもなく可笑しく伝えてくれる本書はとてつもない本なのだ。学者であれ仕事であれ趣味であれ読書であれ、自らのジャンルに自負を持つ人こそ読むべき必読の一冊であることは間違いない。常識と知見のコペルニクス的転回が味わえるかもしれない。場合によっては猛省を求められる恐ろしい本のようだ。
 それに、なんといってもこれだけの専門分野ごとの限界を一般人にわかるように書かれていることが素晴らしい。またどの章あるいはどのパートから読んでもわかるようになっていて気が向いたところから読めるのも親切。繰り返し読んでも面白い。しかも、この本を読んでるとモテるという都市伝説まで生じつつあるらしいのだ。お試しあれ!(当然だが理論的な保障はないです!w)
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