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バイブルDX
ダ・ヴィンチブックス
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コメント・書評 |
現在を切り取り、聖書だった雑誌へのオマージュ
かつき
Apr 8, 2010 5:06:30 PM
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評価 ( ★マーク )
★★★★
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2008年、ダ・ヴィンチ文学賞、日本ホラー小説大賞、 ポプラ社小説大賞特別賞、電撃小説大賞銀賞と 信じられない受賞経歴を並べた真藤順丈の 受賞後、初の単行本です。
彼の小説に共通する、常人には理解しがたい、 思い込みによる自分の仕事への情熱や それに対する切迫感を、今回も感じます。
本書では、キリストのごとく「奇蹟」を起こす人々を集めた いわゆる「聖書」にも匹敵する雑誌を立ち上げるべく、 選りすぐりの編集者、フリーライター、カメラマンが集められます。
その中心に君臨するのは、アカデミックからサブカルまで網羅する 博識の思想家、翻訳家、文化評論家の顔を持つ「先生」(ボス)。
ボスが冒頭、言います。 「すべての雑誌は誰かの聖書(バイブル)」
確かに80年代まで、雑誌はバイブルでした。 文学も批評も広告もファッションも文化も 音楽も映画もサブカルも海外情報も すべて雑誌がいちばん早く、美しく見せてくれる媒体で 何かに興味を持てば、人は雑誌を手にしていました。
それが今やネットに変わり、雑誌の求心力はありません。
しかし、本書では雑誌に賭ける編集者やライターの姿を 泥臭く、しかしカッコよく描いていきます。 雑誌へのオマージュを感じます。 著者は77年生まれで、 ギリギリ雑誌のよさを体験しているのでしょうか。
語り手は、大手出版社の編集者「わたし」。 大きなミスをやり、クビを覚悟したところを ボスが拾ってくれます。
「聖書プロジェクト」と名付けられたキリスト(奇蹟)探しでは センジュという奇蹟フェチともいえる特異体質を持つ 先輩とともに、日本中を駆け巡ります。
まずは団地に住む3歳児のタクちゃん。 人ばかりか動物、植物までも惹きつける魅力的な幼児。
次に、脅威の営業成績を残すサラリーマン・ゴダイ。
さらに、大阪の中州で一人暮らしをしている8歳の浮浪児ボン。 汚染された環境の中で、恐ろしい適応能力を身につけています。
さらに彼らは世界へと飛び出していきます。 その奇蹟とともに、登場する雑誌は実際にあるもの。 いつの間にか雑誌は、セレブや芸能人よりも 普通に暮らす、すごい人が主役となっていますね。 もしかしたら、このように雑誌に登場することは その人の人生をキリストのように祀るようなことかもしれません。
しかし、物語は一転、プロジェクトは空中分解を余儀なくされます。 それでも「わたし」は「奇蹟の雑誌」に取りつかれています。 ポカをする編集者から、プロの編集者へ。 雑誌が「現在」を鋭く切り取る力を持っているように 彼女が切り取った「現在」は、力をはらみつつあります。
現実の雑誌がそれほど力を持たないからこそ このバイブルはファンタジーとなり、生き続けるのかもしれません。
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