コメント・書評 |
超長編『陰陽師』の奥深さを知る
ドン・キホーテ
Feb 28, 2010 9:34:28 PM
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評価 ( ★マーク )
★★★★
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お馴染み陰陽師の安倍清明のお話である。いつもは7、8編の短編集であるが、今回は珍しく長編である。短編は短編の良さがあるのだが、長編もやや冗長な部分はあったにせよ、長編らしい構成になっている。何しろ文庫本2冊であるから、長編の中でも長編であろう。 さすがに、長くするには話の下敷きが必要になるわけである。今回は歴史上名を残す平将門の乱がベースに利用されている。したがって、それに付随する平貞盛、藤原秀郷、源経基などの在郷の武士。さらに当時中央の貴族として権勢を奮っていた藤原忠平、藤原師輔などの政治の中心人物まで揃って登場する。 このストーリーを読んでいると、これらの歴史上の人物が歴史の教科書に登場する味もそっけもない記述に対し、ごくごく身近に感じられるのである。やはり歴史の教科書には史実を踏まえた小説の方が数倍理解が早い。そうすれば歴史好きがますます増えるであろう。 冒頭から百鬼夜行の登場である。ばりばりと人間を食べてしまう鬼である。闇が闇である時代というのが、この小説の昔のキャッチフレーズのようなものであったが、将に灯火のみが夜間の明かりであったはずであるが、平安時代のことだから、その灯火も明々と輝くものとは程遠かったと思われる。現代社会の夜では、漆黒の闇を見出す方が難しいかも知れない。 ここまでは良かったが、これ以降がややSF的な展開であった。著者のお得意な発想や描写がこういうところにあることは、当然知ってはいるのだが、それは別の物語で生かして欲しいものであった。陰陽師に出てくる妖術などの面白さの延長には、超人的な肉体を持つロボットのようなモンスターが登場して活躍するシーンがあっても不思議ではないが、それはまた別のストーリーにして欲しかったということである。 陰陽師は千年近く昔の闇の世界だけで十分である。映画やテレビのように映像化しやすい物語にするために必要だったかもしれないが、歴史の色付けとして楽しんでいる読者である私にとっては、やり過ぎの感が強かった。 将門はさまざまな伝説に彩られている歴史上の人物であるが、何でもありというわけにはいくまい。今まで読んできた海音寺潮五郎や高橋直樹などの作家が描いてきた平将門伝とはあまりにも違い過ぎて驚いてしまった。しかし、本編が歴史の教科書に書かれていることと異なる別のストーリーになっているわけでもない。教科書に書かれていないことをエンターテイメントとして仕上げた著者の創造性だとすれば、これもまた小説の奥深さだ認めざるを得ないし、将門伝の一つとして楽しめたことも確かなのである。
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