コメント・書評 |
奈良時代の位置付けが見えてくる好著
ドン・キホーテ
Feb 7, 2010 11:11:34 PM
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評価 ( ★マーク )
★★★★
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今年は平城京遷都1300年だという。bk1の書評フェアでも、つい最近「大和は国のまほろば」という特集が企画された。今年は奈良で多種多様なイベントが賑やかに催されることであろう。本書もその流れに乗って発刊されたものと思われる。
平城京、つまり奈良時代に発生した政変や世を騒がせた乱について、これらの史上の意義などを確認しようという試みである。政変などは立場によって全く逆の文脈にのって解釈されることもあるから、遠山氏の考えは如何にと紐解いてみた。
奈良時代の初頭は藤原一族の勢力が絶大なもので、皇室と親族関係を結び、天皇を支配するまでになる。ところが、天然痘がはびこり、あっという間に藤原不比等の息子たちはあの世に行ってしまった。ここからは急速に政治に安定を欠いた時代を迎える。その後、橘奈良麻呂、藤原広嗣、恵美押勝などの面々が続々と乱を起こし、政変が続く。
聖武天皇の存在も異彩を放つ。異彩といえば異彩なのだが、今までの私の印象では、ちょっと風変わりな彷徨える天皇、あるいは政を放擲して、大仏造りに精を出した帝のような印象を持たれても仕方のない存在であった。遠山はそうは言わない。聖武天皇には皇統に関するそれなりの理念と目的があったという。それは如何に。
遠山は見落としがちな政変や乱も漏れなく拾っている。たとえば、井上内親王廃后事件、氷上川継謀反事件、和気王謀反事件、氷上志計志麻呂謀反事件など、あまり歴史上、大きな影響を与えたというわけでもないのだが、謀反事件がかなり頻発しているようだ。これらは断章というタイトルのもとに謀反事件を収集している。
しかし、奈良時代で最もセンセーショナルな事件は、弓削の道鏡が法王となり、称徳天皇の意志で後継の天皇になる寸前までいったということではないだろうか? これには有名な宇佐八幡神託事件があった。
本書では、これらの政変や乱の大小を分類し、分かりやすく整理している。大きな事件には「事件のあらまし」、事件を客観的に記述した「ドキュメント」、事件の原因や背後関係を記述した「真相に迫る」など、項に分けて、解説している。
一見地味な時代のように見えるが、平安な時代を迎える前に、揺れ動く地殻変動としての政変や乱を分かりやすく解説し、整理したものが本書である。遷都1300年を迎えるにあたって、一読すれば、古代におけるこの時代の位置付けがはっきりと見えてくるのではないか。
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