コメント・書評 |
太く生きる。
kumataro
Feb 6, 2010 1:30:47 PM
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評価 ( ★マーク )
★★★★★
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邂逅(かいこう)の森 熊谷達也 文春文庫
邂逅とは巡り合いです。記述内容が、日本国内の出来事とは思えません。「森」が「国」になっています。時代は明治時代、場所は東北の秋田県、主人公は松橋富治25歳、彼の職業はマタギ(かもしかや熊を捕る猟師)です。彼は森に生まれ、森で育ち、女性と出会い、こどもをもうけ死んでいきます。そこに熊を仕留(しと)める猟(りょう)がからんできます。 作者の経験による自伝とか、作者の祖先とか、東北地方のある人物とかが、創作のネタになっているのでしょう。前半、作者は書きたいように書き連(つら)ね続けます。読者のことは考えていないでしょう。それがいい。 主人公が愛した最初の女性が「文枝ふみえさん18歳」です。彼女との関係はこじれて、主人公の富治は銀山の労働者として働くことになります。わたしはこの本を読んでいた頃、ちょうど東北への旅行を計画していました。買ってきたガイドブックの地図に秋田県尾花沢市「銀山温泉」がありました。舞台はおそらくそこでしょう。地図には、書中に登場する「肘折(ひじおり)温泉」の地名もあります。「銀山温泉」は、NHKドラマ「おしん」の舞台になったという記事もみつけました。 長さや重さが昔の単位なので、実感が湧きません。間(けん)とか匁(もんめ)とかです。明治時代の山で暮らす人々は、山に神がいると信じ、自然を恐れていた。 主人公にとって二人目の女性「イクさん」の存在は大きい。老いてからの富治夫婦の姿にはしみじみとしました。「愛情」が存在していなければ、小説は成立しません。 人生に幾度か登場するのが「約束」です。206ページにある慎之介と富治が交わした約束の結果は悲しい。約束はしないほうがいい。守れなかったときには、「死」が迎えに来ることもある。 473ページにある再会シーンには胸を打たれました。富治の純粋さが作品を支えています。ラストシーンは読み手によって解釈とか判断が分かれるでしょう。わたしは、彼があの世へ導かれたと判断しました。別の人は、富治は無事に妻の待つ村へ帰郷したと判断するでしょう。
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